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2006/09/12(火)
wj妄想劇場(ネタバレ含みます、ご注意!)
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多勢に無勢、敵は倒しても倒してもキリがない。 奪ったとは言え、護送船は既に何十隻と言う戦闘態勢万全の軍艦に囲まれている。
(…早く…皆のところへ…行かなきゃ…!)
遠くなる意識の中、ウソップが自分の名を呼んでいる声をルフィは聞いた。
(…あれは…ウソップの声だ…戻ってきたのか、あいつ…)
どんなに気持ちを奮い立たせても、無理を強い続けてきた体はもうルフィの思い通りにはならない。起き上がるどころか、指一本動かせない。けれど、ウソップの声を聞いた途端、 その動かない体が勝手に動いた。
ホントにウソップなのか?
それを確かめたくて、ルフィは顔を上げる。 が。
「…無様だな、麦わらのルフィ、」荒い呼吸を吐き、それでもせせら笑って、僅かに上がったルフィの頭を獣臭い足が踏みつける。
「お前らは、ニコ・ロビン以外、全員ここで死ぬんだ」 「いい加減、見苦しい悪足掻きはやめろ」
(…くそ…っ!)
仲間が待っているのが見えた。仲間が自分の名前を呼んでいる声が聞こえている。 仲間の姿が見えて、声が聞こえるこの場所で、倒さなければならない相手に頭を踏みつけられて這いつくばっている場合ではない。
(…こんなヤツに負けて堪るか…!) ルフィは歯を食いしばった。そうして、力を振り絞ろうとした。 だが、もう全く体に力が入らない。
ふ…とまた意識が遠くなった。その時。
突然、頭への圧迫が消えた。その直前、「ヒュッ」と風を切る様な音が聞こえた気がする。 我に返ったのは、砲撃でも銃撃でもない、「ドゴッ」と言う、肉体が大きな衝撃を受けて、吹っ飛んでいく轟音がすぐ側で聞えたからだ。
「…しっかりしろ、船長!」
そう言って、誰かがルフィの襟首を掴んで、引き摺り起す。
ルフィは重たい瞼を開けた。
ぼやけた視界に、まず向日葵色が眩しい。
「…サ…サンジ?」 (…どうやって来たんだ?空を飛んできたのか?) サンジの肩に腕を預けて、ルフィは呆然とサンジの顔を眺める。 ルフィの無言の問いに、サンジはニヤリとただ笑って何も答えない。
「貴様、どうやって…?」 ルフィが驚いたのだから、当然、ルッチも驚いたのだろう。 それに、折角ルフィにトドメを刺そうとしたところを邪魔されたのだ。 さぞ、忌々しく思っているだろう。 下半身が殆ど見えない程、モウモウと上がる粉塵の中、ルッチが凄い形相でサンジを睨みつけている。
「…さっき、てめえの仲間の嘘つき狼と戦って、覚えたところだ」 「…なんて名の体技なのかは知らねえが、…タネさえわかりゃ大した事じゃねえ」 「ぶっつけ本番でやれるかどうかわからなかったが、…どうやら俺も体得したみたいだぜ」 そう言って、サンジはルッチに向かって薄笑いを浮かべている。
「…貴様は、海列車に乗っていたヤツだな…」 「…助太刀にでも来たか?」 そうルッチに言われ、サンジは「まさか」、と嘲笑うように目を細める。 「…うちの船長がこんなにボロボロになるようなヤツ相手に俺が助太刀したところで、 なんの役にも立たねえよ」
サンジのその言葉を聞いて、ルフィはハっとする。 「俺は逃げねえぞ、サンジ…!こいつを倒さなきゃ…勝った事にはならねえ!」
ルフィのその言葉を聞いても、サンジはルッチから目を離さない。 なんとしても、ルッチの隙を突く。 その瞬間を虎視眈々と狙っているのだ。
「…勝ちてえんだろ、ルフィ」 「俺達は、なにをしにここへ来た?なんの為に戦ってる?」 「海軍の船を大量に沈めるためか?CP9とか言う奴等を倒して名を挙げるためか?」 そう問われて、ルフィは即答する。「違う。ロビンを助ける為だ」
「…ロビンちゃんを助けて、俺達も誰一人欠ける事なく生き延びる」 「それが俺達の勝利だ」
そう言ってから、サンジは目だけをルフィに向けた。 「…もう、ロビンちゃんはどこにも行かねえ。誰が追って来ようと、これから先はもう逃げたりしねえ」 「今、ここで決着が着かなくても、…誰とでも、何度でも戦えばいい」 「そしてその都度、仲間全員が生き延びれば、…それが勝ち続ける事になる」 「わかるな?」 「…敵に背を向けても…勝った事になるのか」
今度はルフィがサンジに聞き返した。 「俺達はもう大事なモノを奪い返した。それ以上の勝利があるか?」 サンジはそう言って、逆にルフィにそう問い掛ける。
「…見ただけで、月歩を会得するとは…」
ルッチがサンジを睨みつけ、苦々しげにそう呻く。 けれど、すぐに見下すような表情に変わった。 「だが、それで俺から逃げられると思うな」 「俺も同じ技が使えるのを…よもや忘れているのではないだろうな?」 そのルッチの言葉を聞き、 「お前が空中に飛び出したら、その途端、ウチの狙撃手の餌食だ」 「ハエを叩き落とすより簡単に海に撃ち落すだろうぜ」とサンジは鼻で笑った。
ルッチが歯軋りする。サンジの踵が高く振り上がる。 次の瞬間、床が轟音を立てた。
サンジが踵を床に打ち下ろしたのだ。轟音だけでなく、目くらましに十分な砂埃が巻き上がる。
引き摺られるようにして、ルフィは走った。 突然、足が宙に浮く。 下を見れば、白い波が泡立つ海がうねっている。 その上を確かに弾むように、バウン、バウン、と飛んでいる。
「うわわっ!」何かに縋らなければ落ちる。本能的にルフィの手足がばたついた。 一瞬、急降下しかけたが、どういうわけかまたバウン!と何かを蹴って跳ねた様な衝撃を感じて再び、体が浮き上がる。ホっとしたけれど、だが、 「おい、暴れるなよ!さっき、ちょい橋の上で練習しただけなんだからな!」とサンジに怒鳴られた。
(続く)
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