妄想絵日記
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2006年9月
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2006/09/20(水) wj妄想劇場その2
バウン、バウン、と言う不思議な反動を体に感じる度にサンジに掴まれたまま、ルフィは空中に跳ね上がる。
「…!」バウン、と海面すれすれで跳ねたサンジの顔が突然、苦痛に歪んだ。瞬間、二人の体のバランスが崩れる。
「…くっ!」
背中から何か大きな衝撃を食らったかのように、サンジの体が前へとつんのめる。だが、歯を食いしばってサンジは再び、高く仲間の待つ橋の上へと空を蹴った。

フランキーの部下達は、援護してくれたガレーラカンパニーの
船大工達は、一体、どうなっただろう。
本当に皆死んでしまったのか。

だが、それを確かめる術はもうない。
もしも、彼らに報いる事が出来るとすれば、この窮地を切り抜け、生き抜く事だけだ。

進路を邪魔する無数の敵をなぎ倒しながら、護送船は
世紀の大犯罪者となった麦わらの一味を乗せて突っ走る。

最後まで追いすがって来た船を、今はもう仮面を外したウソップの撃った大砲が沈めた。

「…悪イ、誰か、代わってくれ」

何もかもが終わった…と言う安堵の空気が甲板の上に
どこからか染み出し始めたとき、サンジがそう言って
仲間を見回した。けれど、誰も、手の空いている者などいない。

そんな事、サンジも十分、分かっているはずだ。

「どうかしたのか、眉毛のにいちゃん」

そう言って、フランキーがサンジの方へと近付く。
ロープを握っていた血だらけのサンジの手がずるりと滑った。

「…腕に力が入らねえ…。全然、手に感触がない…」

それだけ言うと、サンジは精も根も尽き果てた様に
甲板の上にへたり込む。
「…疲れてボロボロなのは皆同じだろうが、ええ?」
「やめろ、フランキー!」

不満げな顔をして無理にサンジを立たせようとするフランキーを
ルフィは怒鳴った。
そして、慌ててサンジに駆け寄る。
「…お前、その背中…!」ルフィの目が勝手にサンジの体から流れ出る赤い雫を辿る。

床板までポトリ、ポトリ…と音が聞こえそうなほど大量に滴り落ちる血にルフィは息を飲む。

(さっきの…変な反動…あの時、背中をモロにあいつに…ハトのヤツにぶった切られたんだ)

切り裂かれたジャケットとシャツは真っ赤に染まっている。
その隙間からざっくりと斬れた皮膚と肉が覗いていて、血がじわじわと流れ出ていた。

「…なんで言わなかった!」
「何が…?」
ルフィの言葉に、サンジは蒼ざめた顔を上げ、怪訝な顔をする。
無我夢中で動き回っていて、自分の体がどんな大怪我を負っているか多分まだサンジは分からないでいる。

ただ、手の感触がなく、頭がふらつく。
このまま大事な役割を担う場所にいたら、船足が落ちる。
そう思って交代を申し出ただけだ。

(…この血の量はヤべえ)そう思ってサンジの顔を見ると紙のように真っ白で、唇も蒼ざめている。
「すぐにチョッパーに診て貰え」
「…だから、なんで…?」そう言うと、サンジの瞼がゆっくりと
眠る様に閉じられていく。

力が抜けていく体を、ルフィは胸と両腕で抱きとめた。

2006/09/12(火) wj妄想劇場(ネタバレ含みます、ご注意!)
多勢に無勢、敵は倒しても倒してもキリがない。
奪ったとは言え、護送船は既に何十隻と言う戦闘態勢万全の軍艦に囲まれている。

(…早く…皆のところへ…行かなきゃ…!)

遠くなる意識の中、ウソップが自分の名を呼んでいる声をルフィは聞いた。

(…あれは…ウソップの声だ…戻ってきたのか、あいつ…)

どんなに気持ちを奮い立たせても、無理を強い続けてきた体はもうルフィの思い通りにはならない。起き上がるどころか、指一本動かせない。けれど、ウソップの声を聞いた途端、
その動かない体が勝手に動いた。

ホントにウソップなのか?

それを確かめたくて、ルフィは顔を上げる。
が。

「…無様だな、麦わらのルフィ、」荒い呼吸を吐き、それでもせせら笑って、僅かに上がったルフィの頭を獣臭い足が踏みつける。

「お前らは、ニコ・ロビン以外、全員ここで死ぬんだ」
「いい加減、見苦しい悪足掻きはやめろ」

(…くそ…っ!)

仲間が待っているのが見えた。仲間が自分の名前を呼んでいる声が聞こえている。
仲間の姿が見えて、声が聞こえるこの場所で、倒さなければならない相手に頭を踏みつけられて這いつくばっている場合ではない。

(…こんなヤツに負けて堪るか…!)
ルフィは歯を食いしばった。そうして、力を振り絞ろうとした。
だが、もう全く体に力が入らない。

ふ…とまた意識が遠くなった。その時。

突然、頭への圧迫が消えた。その直前、「ヒュッ」と風を切る様な音が聞こえた気がする。
我に返ったのは、砲撃でも銃撃でもない、「ドゴッ」と言う、肉体が大きな衝撃を受けて、吹っ飛んでいく轟音がすぐ側で聞えたからだ。

「…しっかりしろ、船長!」

そう言って、誰かがルフィの襟首を掴んで、引き摺り起す。

ルフィは重たい瞼を開けた。

ぼやけた視界に、まず向日葵色が眩しい。

「…サ…サンジ?」
(…どうやって来たんだ?空を飛んできたのか?)
サンジの肩に腕を預けて、ルフィは呆然とサンジの顔を眺める。
ルフィの無言の問いに、サンジはニヤリとただ笑って何も答えない。

「貴様、どうやって…?」
ルフィが驚いたのだから、当然、ルッチも驚いたのだろう。
それに、折角ルフィにトドメを刺そうとしたところを邪魔されたのだ。
さぞ、忌々しく思っているだろう。
下半身が殆ど見えない程、モウモウと上がる粉塵の中、ルッチが凄い形相でサンジを睨みつけている。

「…さっき、てめえの仲間の嘘つき狼と戦って、覚えたところだ」
「…なんて名の体技なのかは知らねえが、…タネさえわかりゃ大した事じゃねえ」
「ぶっつけ本番でやれるかどうかわからなかったが、…どうやら俺も体得したみたいだぜ」
そう言って、サンジはルッチに向かって薄笑いを浮かべている。

「…貴様は、海列車に乗っていたヤツだな…」
「…助太刀にでも来たか?」
そうルッチに言われ、サンジは「まさか」、と嘲笑うように目を細める。
「…うちの船長がこんなにボロボロになるようなヤツ相手に俺が助太刀したところで、
なんの役にも立たねえよ」

サンジのその言葉を聞いて、ルフィはハっとする。
「俺は逃げねえぞ、サンジ…!こいつを倒さなきゃ…勝った事にはならねえ!」

ルフィのその言葉を聞いても、サンジはルッチから目を離さない。
なんとしても、ルッチの隙を突く。
その瞬間を虎視眈々と狙っているのだ。

「…勝ちてえんだろ、ルフィ」
「俺達は、なにをしにここへ来た?なんの為に戦ってる?」
「海軍の船を大量に沈めるためか?CP9とか言う奴等を倒して名を挙げるためか?」
そう問われて、ルフィは即答する。「違う。ロビンを助ける為だ」

「…ロビンちゃんを助けて、俺達も誰一人欠ける事なく生き延びる」
「それが俺達の勝利だ」

そう言ってから、サンジは目だけをルフィに向けた。
「…もう、ロビンちゃんはどこにも行かねえ。誰が追って来ようと、これから先はもう逃げたりしねえ」
「今、ここで決着が着かなくても、…誰とでも、何度でも戦えばいい」
「そしてその都度、仲間全員が生き延びれば、…それが勝ち続ける事になる」
「わかるな?」
「…敵に背を向けても…勝った事になるのか」

今度はルフィがサンジに聞き返した。
「俺達はもう大事なモノを奪い返した。それ以上の勝利があるか?」
サンジはそう言って、逆にルフィにそう問い掛ける。

「…見ただけで、月歩を会得するとは…」

ルッチがサンジを睨みつけ、苦々しげにそう呻く。
けれど、すぐに見下すような表情に変わった。
「だが、それで俺から逃げられると思うな」
「俺も同じ技が使えるのを…よもや忘れているのではないだろうな?」
そのルッチの言葉を聞き、
「お前が空中に飛び出したら、その途端、ウチの狙撃手の餌食だ」
「ハエを叩き落とすより簡単に海に撃ち落すだろうぜ」とサンジは鼻で笑った。


ルッチが歯軋りする。サンジの踵が高く振り上がる。
次の瞬間、床が轟音を立てた。

サンジが踵を床に打ち下ろしたのだ。轟音だけでなく、目くらましに十分な砂埃が巻き上がる。

引き摺られるようにして、ルフィは走った。
突然、足が宙に浮く。
下を見れば、白い波が泡立つ海がうねっている。
その上を確かに弾むように、バウン、バウン、と飛んでいる。

「うわわっ!」何かに縋らなければ落ちる。本能的にルフィの手足がばたついた。
一瞬、急降下しかけたが、どういうわけかまたバウン!と何かを蹴って跳ねた様な衝撃を感じて再び、体が浮き上がる。ホっとしたけれど、だが、
「おい、暴れるなよ!さっき、ちょい橋の上で練習しただけなんだからな!」とサンジに怒鳴られた。

(続く)

2006/09/04(月) ハネウマライダー
水深が浅くて、その上に海底に生えた海草が海面にもびっしりと浮かんでいる海に囲まれた島に辿り着いた。
そんな島でも、外から来る船をどうにか迎え入れなければ、島の経済が成り立たない。だから、沖に船を停泊させて、独特の船を使って、外から来る人々を迎え入れていた。

だが、その独特の船を操舵するにも、ある程度技術がいる。
それに、その船を借りるのにも当然、金が必要だった。
「ウェイバーがあるから、借りる必要はないわ。ログが溜まるまで、沖にいればいいし」と言うナミの言葉で、買出しに行く意外は、全員船に残る事になってしまった。
だが、ログが堪るまでおおよそ、5日は掛かる。
船長を始め、男達は当然、退屈する。
「…あんな簡単な作りの船なら、作れるんじゃねえか?」サンジのその一言で、すぐにウソップがその「独特の船」を作った。
それは、上空の風を掴まえて、それを推進力にして進む小さな小さな船。
「俺が乗る!」とルフィは早速はしゃいだが、サンジは首を横に振った。
「上手く乗れるかどうかわからねえ。落ちたら、即、海だし、この海草だらけの海は普通の人間でも厄介だからな。まずは、…そうだ、」誰が乗るか、の大騒ぎの中、サンジは仲間の顔をぐるりと見回し、「お前、」とゾロを人差し指で指差した。
「…俺か」面白そうな乗り物だと思っていたし、サンジと二人だけで遊ぶのだから、楽しそうだとは思っていた。
だからと言って、ルフィやウソップの様に大人気なく乗りたいと言うのも気恥ずかしくて、少し遠目に見ていたけれど、
名指しされて、正直、ゾロは驚いた。だが、正直、嬉しい。
自分を名指ししてくれた意図はわからないけれど、もしかしたら、サンジはゾロのそんな素直でない心持を悟ってくれたのかも知れない。そう思うと、ゾロは尚更嬉しくなる。
だが、そんな事は一切口にも態度にも出さない。

カヌーのように細長い船に乗って、サンジは白い大きな布と、それに結わえたロープを操って、上空の風を易々と掴まえた。
途端に、波を切るようにして、船は急に進み始める。
風の吹く方角、それを受ける凧をカヌーの上で上半身だけを動かしてサンジは船を制御する。
時折、馬の背に乗っているようにバシャンと船は大きく跳ねるけれど、サンジは楽しそうに空を見上げ、時折目を落として波の動きを見、そしてゾロをちらりと見る。

仲間の乗る船からその凧の船はどんどん遠くなる。
その代わり、島はどんどん近付いて来る。ゾロの頬に当たる潮風は夏の熱を孕んでいて、そして、時折、ゾロを驚かすように船は跳ね、その度にあがる水飛沫は涼しい。
空はどこまでも空色で、海はどこまでも煌いて、青ばかりで
塗りつぶされたような世界の中、サンジだけが向日葵の色に輝いて見え、眩しくて思わずゾロは目を細めた。
また、船が、サンジの制御を振り切ろうとするかのように乱暴に跳ねる。いや、それとも、サンジがわざとゾロをからかって、
そんな風に船を操っているのか。
「…何で、この船に俺を乗せた…?!」風の強さが、帆の代わりの凧を結わえているロープを伝ってビンビンと音を立て、波と風の音がゾロの声を遮るから、ゾロは大きな声でサンジにそう尋ねた。どんな答えが返ってくるのか、船が跳ねるのとを同じ様に、心が跳ねる様な言葉が返って来る事をゾロは少しだけ期待する。けれど、サンジは煙草を咥えたまま、
「…振り落とされても、死なない奴を選んだだけだ!」そう言って笑った。口では、そんな風に愛想のない事を言う。けれど、ゾロに向けた楽しげな、満足そうな満面の笑顔を見ていると、この笑顔を誰にも見せないのなら、何を言われても構わないとゾロは思った。


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