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2006/07/06(木)
なれない痴話げんか
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「そう。いつも約束を破るのは、コックさんの方なの」 その夜は、仲間皆が寝てからなんとなくロビン相手に酒を飲んでいた。口は軽い方では決してないのに、サンジについてつい、愚痴ったのは、きっとロビンが聞き上手だった所為だろう。 「俺ア、あいつとの約束は破った事一度もない。でも、あいつはちょっと見目のいい若い女を見たら、俺との約束なんか簡単に破りやがる。その癖、悪びれもしねえし、誤りもしねえ。ホントに厚かましい野郎だ」「それは、その度に剣士さんが許してしまうから、図に乗っちゃってるのよ」 ロビンはそう言って、少し同情した様な笑みを浮かべた。 「…コックさんが、約束を破って平気なのは、コックさんだけが 悪いんじゃないわ。剣士さんも悪いのよ」「…俺が?何が悪イんだよ」ゾロがそう尋ねると、「だから、惚れた弱みってやつでしょう?自分は何をしても許されるって思ってるから、好き放題やるんじゃない?だったら、そんな傲慢な事思わせない様に、たまにはお灸をすえなきゃ」「…お灸って…?」
コックさんをほったらかして、浮気をしたって風を装って ごらんなさい。そうしたら、少しは懲りてくれるかも知れないわ。
ロビンにそう入れ知恵されて、うまく行くかもわからないのに、 ゾロはその通りにやってみたら、どうなるかを考えた。
サンジが待っている宿には行かずに、待ちぼうけを食らわし、 翌朝、街でばったりサンジと出会った風を装う。 それも、ロビンが用意した女ものの香水の匂いをプンプンさせてだ。 「俺だって、たまには女とやりたくなる時もあるんだよ」と 言ったら、サンジはどんな顔をするだろう。 きっと、驚いて、悔しそうな顔をして、それから押し黙ってしまうだろう。 それで、本当にサンジを懲らしめた事になるのだろうか。 (…なんだか、余計にこじれそうな気がする…) そう思いながら、ゾロはその時のサンジの顔を思い浮かべた。 そうすると、してもいない事を言って嘘を言って サンジを傷つけるやましさに胸が重くなる。 「…やっぱ、そう言う方法は性に合わねえな」 苦笑いしながらそう言うと、目の前のロビンがニッコリと 何もかも見透かした様に「…でしょうね」と笑った。 「…口では困ってるみたいな事言ってるけど、…剣士さんは そのままのコックさんでいいと思っているのよ」
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