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2006/07/04(火)
石臼
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二人で、古びた町並みを歩く。 ここがなんと言う島か、ゾロもサンジも知らない。 ただ、うらびれてはいるけれど、どこか懐かしい古さを感じさせる町だった。すれ違う子供は皆身なりは薄汚れていて貧相だけれど、皆表情が生き生きとして元気そのものだ。 そんな町を歩きながら、ゾロはふと、「甘味処」とかかれた、小さな看板が風にぶらぶら揺れているのが目に入った。 暖簾越しに中を覗くと、(…面白エ趣向だな)とゾロは興味をそ そられた。 「…あれ、食っていこうぜ」そう言って、ゾロがその看板を あごで指し示すと、サンジは「…あれ?あれって…あれか?」と 意外そうな顔をする。そして、 「…男二人で甘味処に入るのか」とサンジは少し困惑した様な 顔をした。 「ま、いいからちょっと付き合えよ。…俺のおごりだ」 とゾロは半ば強引にサンジの背中を押して、その店の中に 入った。 「なんだ、あれ?」サンジはゾロを振り返って、 そう尋ねた。「石臼だ」ゾロは半笑いを浮かべてそう 答える。サンジが知らない事を自分が知っているのが 嬉しいのか、サンジが知らないものを見て目を丸くしている 顔を見ているのが嬉しいのか、分からない。とにかく、 顔が勝手に柔かく微笑んでしまう。「イシウス?」 その店は、自分で食べる分の甘味にまぶす豆の粉を 自分で石臼で挽いて作る趣向らしい。 ゾロは、席に着いて、さっそく「わらびもち」を注文し、 石臼の穴に大豆を数粒摘まんで落とし、ゴリゴリと 挽いてみた。「…へえ…こうやって使うのか。こりゃ、力仕事だな」とサンジは面白そうにゾロを見ている。 (…そうか) 別に「わらびもち」が食べたくてこの店に入ったのではない。 ただ、サンジが無邪気に、興味津々な顔をして、目を輝かせて楽しそうにしている様が見たくて、この店に入りたかったのか、と ゾロはその時気がついた。
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