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2006/07/25(火)
紅茶
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二人きりで宿に泊まる。 ここ数日、天候が悪くてとても出航出来そうにない。 (ログが溜まるまであと三日ほどある筈だ)
賞金首を追い掛け回すのも、海軍から追い掛け回されるのも、今日だけは一休み。 ゾロとサンジはまどろみから覚めた。 けれど、昨夜の甘く熱い行為の余韻が肌にまだ淡い火照りとなって消え残り、寒くなどないのに、体を寄せ合う。
「…なんだ、それ?」 胸にもたれているサンジの手の中に湯気の立つカップが 包まれていて、なんとも芳しい香りが立っている。 「…紅茶だ。酒は全部、昨夜飲んじまったからな」 柔かな声音で問い掛けたゾロに、サンジも寛ぎきった声で 答える。 「俺にもくれ」「…ダメだ」 クス、…と笑って、サンジは紅茶を一口啜った。 そして、煙草を咥えて火をつけ、 「これは、てめえにだけは煎れてやらねえ」 「お前が俺に煎れてくれたら、俺も煎れてやるよ」 と、背中越しに上目遣いでそう言う。 謎かけをされた様な気がして、ゾロはゆっくりと体を起こして ベッドから降りた。
部屋の片隅にある紅茶のパックを手に取る。 そして、字を読んだ。 (…何?ラ…ラブ・ミー・テンダー?) 「…口で言えない分、紅茶の名前で告白する…って事だ」 「この紅茶、ナミさんもロビンちゃんもお気に入りなんだぜ」 そう言って、サンジはニヤニヤ笑っている。 「…俺がこの紅茶をお前に飲ませたら、ラブ・ミー・テンダーってお前に言ってるって事になるってか」とゾロは思わず苦笑いする。 「そう言う事だ」「…へっ」 ゾロは鼻で笑い、それでも傍らにあったポットを手に取り、 ドバドバとカップに注いで、「ラブ・ミー・テンダー」とか 言う名前の紅茶の袋をポイ、とその中へ放り込んだ。 「…いいぜ、飲ませてやるよ。その代わり、それを飲むって 事は、…その言葉を飲み込むって事、つまり、受け入れるって 事だろ?」 「いっとくが、俺はお前が思ってるより嫉妬深いぜ。 これ、飲んだら絶対もう余所見なんかさせねえぞ。それでも 飲むか?」そう言って、ゾロは紅茶のバックを入れたままの カップを冗談めかして、少し持ち上げて見せた。 「怖エ紅茶だな、オイ。そんなの怖くて飲めねえよ」 そう言いながら、サンジは自分の分の紅茶をゾロに差し出す。 お互いのカップを交換しあって、二人は一口、同時にその 紅茶を啜った。
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