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2006/07/19(水)
フレンジャーその2
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一人で時間をつぶす事など、ロビンは全く苦にならない。 その島に着いた時は、ウソップが作ったサイコロを皆で振って、 一番目が小さかった者が船番に残る事になり、「2」を出したロビンが夕暮れ時まで一人で船番をすることになった。
「サンドイッチを作っておいたからね」と言われていたから、 昼食はそれを食べた。甲板にデッキチェアを出し、そこで気に入りの本を読む。 三冊読み終わった頃、「…ロビンちゃ〜ん」と、聞き慣れた甘え声が聞こえてきた。ロビンは本を閉じ、凭れていた背中を起して、声のする方へと顔を向ける。 どこか、鈍くなっていた様な感覚が、急に鮮やかに呼び起こされた気がした。「…お帰りなさい。随分、早いのね」 「うん。用事が済んだからね」サンジはいつも元気でにこやかだ。ロビンやナミに向かって、不機嫌な顔を見せた事がない。 「…ちょうどオヤツ時だね。ちょっと美味そうなモノがあったから買ってきたよ」そう言って、サンジはロビンに小さな袋を手渡した。「あら、珍しい。コックさんが買い食いなんて」 「たまには、新しい味も食べなきゃね。皆には内緒。ロビンちゃんと俺の分だけだよ」楽しそうにそう言って、サンジはニ、と笑う。「…食べるだけで作り方がわかるの?」 「大よそだけどね。飲み物は何をお持ちしましょうか?」 「…お任せするわ」気安い仲間から、急にかしこまって、執事か 何かのように振舞うサンジが可笑しくて、ロビンは自然に微笑む。 袋を覗き込むと、ふわりと甘く、ミルクとチョコレートの匂いがした。 いつもの様に、自分で作るのではなく、気軽におやつを買って来るなんて、サンジにしては本当に珍しい。 でも、きっと逸れは気まぐれではなくサンジなりの理由があるのだろう。そういえば、どこか、ロビンの心は自然に解れていて、 寛ぎ始めていた。 本を読んでいる間は、寂しいなどと全く思わなかったけれど、 静まり返った時間は確かに物足りなかった。 けれど、サンジ一人が帰ってきて、今、自分の為に何か飲み物を用意してくれている、と言うだけでどこかホっとしている。
(私が、一人でいると寂しがっていると思ったのかしら?) そう思いながら、ロビンはまだミルクパンとチョコパイを 袋から出さずに、サンジを待つ。
きっと、サンジは一人きりでいるのが寂しいのだろう。 だから、ロビンも寂しいと思っていると思って、 オヤツと言う口実を作って、帰って来た。 寂しがりやなのはロビンではなく、サンジの方だろう。 寂しがりやだから、人が寂しい思いをしているのではと 余計な気を揉む。人の寂しさが分かるのは、その人が寂しがりやだからだ。 (…面白い人だわ、ホントに) 自分の仮説に、ロビンはクスリ、と笑った。
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