妄想絵日記
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2006/07/28(金) ベスト フレンド
(…これで何箇所目だ…。4…いや、5か)
グランドラインのとある島。二度と来ないかも知れないから、もう名前も覚える気もない。船は、入り江に碇を下ろしている。
仲間が寝静まった深夜、サンジは岸に降り、砂浜に腰を下ろして、真っ黒な海を1人で眺めていた。

寒い海域にいる魚と、温かい海にしか生息しない魚。
その両方が捕れる海があると聞いて、この島にやって来た。
ログホースを手に入れる時も、ここまでやって来た航海の途中も、本当に困難続きだった。
だが。実際にたどり着いて見ると、ただ回遊する魚が
通過していくに過ぎない島で、稀に住み着く個体があっても、
気候の変化に耐え切れずに、生き延びる事殆どないと言う。
つまり、この島は「全ての海の魚が棲む」海ではなかった。

こんな経験は、初めてではない。
(…4…いや、5か)とサンジは指を折って数えてみる。
今度こそ…今度こそ。その度にそう思ってきたけれど、
その回数が増えるごとに、落胆の重さは増していく。
(そんな海は…世界中探してもある訳ないよ)と漁師達に
何度笑われたかわからない。
そして、こうして落ち込むたびに、その嘲笑がサンジの脳裏に
蘇える。
本当にオールブルーは存在するのか。
こんな時には、ふと、そんな迷いが心を過ぎる。
けれど、自分が信じなれば、その海へと続く航路は絶対に開かない。くじけそうになってはまた自分を奮い立たせ、そして先へと
進む力を蓄える。今までそうやって進んできたのだから、
これから先もそうやって進めばいい。
そう思うのに。(…さすがに、五回目ともなるとちょっと
いい加減凹むな…)
自分一人の夢にこだわって、仲間に落ち込む姿を見られたくない。だから、サンジは誰もが寝静まった夜中心の中に
詰まった重たい失望を捨てに、この海岸で1人きり、海を眺めていた。

「サ〜ンジ!」
朝陽が出るにはまだ早い、深い深い夜、サンジは明るい
ルフィの声に振り返った。
「…どうしたんだ?腹でも減ったか?」
何食わぬ顔をして、サンジはそうルフィに尋ねる。
「んにゃ。目が覚めただけだ」ルフィはいつもと変らず、
笑っている。
「…ここも違ったな」ルフィはそう言って、サンジのすぐ側に
立った。「そうだな。散々苦労掛けたのに、…悪イな」
さして悪びれる事もなく、…いや、悪びれない態度を装って、
サンジは相槌を打ち、再び前を向いた。
「進路を決めたのは俺だ。お前が謝る事じゃねえ」
「…それに、」
ルフィはかぶっていた帽子を取り、サンジが見つめている方向へと目を走らせる。二人の視線が水平線の向こうへと重なった。
「…正直、俺も今、どうしていいのか、わかんねんだ」
「…?何が」
ルフィの言葉の意味をサンジは成り行きに任せて聞き返す。
「…ここがオールブルーじゃない事を喜んでいいのか、
悔しがっていいのか…」ルフィは独り言の様にそう言った。
珍しく、自分の気持ちのコントラストが鈍くて、ルフィは
戸惑っている。意外に思って、サンジは思わずルフィの顔を
見上げた。
「…お前の船のコック、俺が引き受ける。お前がそう言ってくれた時、俺、凄エ嬉しかったんだ」
「でも、こうやってオールブルーかも知れねえ海に来る度に、
サンジは夢を叶えたら、俺の船を降りちまう、そう思ったら
正直、…俺、困っちまうんだ」
「サンジはずっと俺のコックでいて欲しい。でも、船を降りる事になっても、夢も叶えて欲しい。俺達が一緒にいるのは、俺達二人の夢を一緒に追いかける為なんだから、なんか言ってる事メチャクチャで、チグハグでデタラメな感じがするけど、俺は…そう思うんだ」
「オールブルーはある。見つかるまで、俺はお前を乗せて
どこまででも行くからな」
(…なんだよ、慰めに来たのか?)
サンジは何故か急に心が晴れやかになっていくのを感じた。
たどたどしい、拙い言葉だけれど、ルフィの真心の篭った言葉に
思わず、笑みが漏れる。
今まで、一度もこんな事を言った事はないのに、何故、
今日に限ってそんな事を言いにきたのだろう。
気まぐれなのか、それとも、サンジの気持ちを敏感に悟っての
事なのか。
問い詰めても、きっと本人にも分からないに決まっている。
「…なんか、美味い夜食でも作ってやろうか?」
「え、マジで!やったあ!」
サンジの言葉にルフィは無邪気に歓声を上げる。
サンジは立ち上がり、そして、またルフィと一緒に歩き出す。

2006/07/25(火) 紅茶
二人きりで宿に泊まる。
ここ数日、天候が悪くてとても出航出来そうにない。
(ログが溜まるまであと三日ほどある筈だ)

賞金首を追い掛け回すのも、海軍から追い掛け回されるのも、今日だけは一休み。
ゾロとサンジはまどろみから覚めた。
けれど、昨夜の甘く熱い行為の余韻が肌にまだ淡い火照りとなって消え残り、寒くなどないのに、体を寄せ合う。

「…なんだ、それ?」
胸にもたれているサンジの手の中に湯気の立つカップが
包まれていて、なんとも芳しい香りが立っている。
「…紅茶だ。酒は全部、昨夜飲んじまったからな」
柔かな声音で問い掛けたゾロに、サンジも寛ぎきった声で
答える。
「俺にもくれ」「…ダメだ」
クス、…と笑って、サンジは紅茶を一口啜った。
そして、煙草を咥えて火をつけ、
「これは、てめえにだけは煎れてやらねえ」
「お前が俺に煎れてくれたら、俺も煎れてやるよ」
と、背中越しに上目遣いでそう言う。
謎かけをされた様な気がして、ゾロはゆっくりと体を起こして
ベッドから降りた。

部屋の片隅にある紅茶のパックを手に取る。
そして、字を読んだ。
(…何?ラ…ラブ・ミー・テンダー?)
「…口で言えない分、紅茶の名前で告白する…って事だ」
「この紅茶、ナミさんもロビンちゃんもお気に入りなんだぜ」
そう言って、サンジはニヤニヤ笑っている。
「…俺がこの紅茶をお前に飲ませたら、ラブ・ミー・テンダーってお前に言ってるって事になるってか」とゾロは思わず苦笑いする。
「そう言う事だ」「…へっ」
ゾロは鼻で笑い、それでも傍らにあったポットを手に取り、
ドバドバとカップに注いで、「ラブ・ミー・テンダー」とか
言う名前の紅茶の袋をポイ、とその中へ放り込んだ。
「…いいぜ、飲ませてやるよ。その代わり、それを飲むって
事は、…その言葉を飲み込むって事、つまり、受け入れるって
事だろ?」
「いっとくが、俺はお前が思ってるより嫉妬深いぜ。
これ、飲んだら絶対もう余所見なんかさせねえぞ。それでも
飲むか?」そう言って、ゾロは紅茶のバックを入れたままの
カップを冗談めかして、少し持ち上げて見せた。
「怖エ紅茶だな、オイ。そんなの怖くて飲めねえよ」
そう言いながら、サンジは自分の分の紅茶をゾロに差し出す。
お互いのカップを交換しあって、二人は一口、同時にその
紅茶を啜った。

2006/07/19(水) フレンジャーその2
一人で時間をつぶす事など、ロビンは全く苦にならない。
その島に着いた時は、ウソップが作ったサイコロを皆で振って、
一番目が小さかった者が船番に残る事になり、「2」を出したロビンが夕暮れ時まで一人で船番をすることになった。

「サンドイッチを作っておいたからね」と言われていたから、
昼食はそれを食べた。甲板にデッキチェアを出し、そこで気に入りの本を読む。
三冊読み終わった頃、「…ロビンちゃ〜ん」と、聞き慣れた甘え声が聞こえてきた。ロビンは本を閉じ、凭れていた背中を起して、声のする方へと顔を向ける。
どこか、鈍くなっていた様な感覚が、急に鮮やかに呼び起こされた気がした。「…お帰りなさい。随分、早いのね」
「うん。用事が済んだからね」サンジはいつも元気でにこやかだ。ロビンやナミに向かって、不機嫌な顔を見せた事がない。
「…ちょうどオヤツ時だね。ちょっと美味そうなモノがあったから買ってきたよ」そう言って、サンジはロビンに小さな袋を手渡した。「あら、珍しい。コックさんが買い食いなんて」
「たまには、新しい味も食べなきゃね。皆には内緒。ロビンちゃんと俺の分だけだよ」楽しそうにそう言って、サンジはニ、と笑う。「…食べるだけで作り方がわかるの?」
「大よそだけどね。飲み物は何をお持ちしましょうか?」
「…お任せするわ」気安い仲間から、急にかしこまって、執事か
何かのように振舞うサンジが可笑しくて、ロビンは自然に微笑む。
袋を覗き込むと、ふわりと甘く、ミルクとチョコレートの匂いがした。
いつもの様に、自分で作るのではなく、気軽におやつを買って来るなんて、サンジにしては本当に珍しい。
でも、きっと逸れは気まぐれではなくサンジなりの理由があるのだろう。そういえば、どこか、ロビンの心は自然に解れていて、
寛ぎ始めていた。
本を読んでいる間は、寂しいなどと全く思わなかったけれど、
静まり返った時間は確かに物足りなかった。
けれど、サンジ一人が帰ってきて、今、自分の為に何か飲み物を用意してくれている、と言うだけでどこかホっとしている。

(私が、一人でいると寂しがっていると思ったのかしら?)
そう思いながら、ロビンはまだミルクパンとチョコパイを
袋から出さずに、サンジを待つ。

きっと、サンジは一人きりでいるのが寂しいのだろう。
だから、ロビンも寂しいと思っていると思って、
オヤツと言う口実を作って、帰って来た。
寂しがりやなのはロビンではなく、サンジの方だろう。
寂しがりやだから、人が寂しい思いをしているのではと
余計な気を揉む。人の寂しさが分かるのは、その人が寂しがりやだからだ。
(…面白い人だわ、ホントに)
自分の仮説に、ロビンはクスリ、と笑った。

2006/07/14(金) さやえんどう
「…気が済むまでお前は俺の下僕だからな!」

サンジにそう言われて、ウソップは震え上がった。
「じょ、冗談だろ?!」と言ってはみたものの、絶対に冗談なんかではなさそうだ。

「髪が伸びた。切ってくれねえか」と頼まれたから、言われたとおりに切っただけなのに、その髪型が気に入らなかったのか
サンジがいきなり怒り出したのだ。
そして、言い放ったのが、冒頭の言葉だった。

反論したら、罵倒されるだけではすまなくなる。
アバラ骨くらいは平気で折られてしまうだろう。
ウソップは仕方なく、サンジの下僕に成り下がった。
数日そうして過ごしたけれど、下僕と言うから一体何をさせられるのかと思ったら、普段やっている事とあまり大差ない。
そろそろ飽きてくるか?と思った頃、小さな島に着いた。
それぞれの用を足しに船から降りたのだが、ウソップはサンジに
「おいまて、下僕」と呼び止められる。
「な、なんでございましょう、ご主人様」
「俺ア、まだ髪型が気に食わなくて、ムシャクシャしてんだ」
「その鬱憤晴らしに行くぞ」「へ…?鬱憤晴らし?」

サンジとウソップは、いかにも海賊、と言う扮装をし、
二人だけで街のごろつきを見つけては手当たり次第に因縁をつけては喧嘩を売って、蹴り倒し、金を巻き上げては逃げた。
鬼をわざわざ大量に作って、逃げ回る鬼ごっこだ。
我侭放題の王子に付き従う、それこそ下僕の様にウソップは
サンジの起す騒ぎに引きずり回される。
けれど、今日一日でサンジの鬱憤が晴れて、下僕から
解放されるなら、我慢するしかない。
だが。本当に好き放題に暴れているサンジの
顔を見ると、新しい遊びを見つけた子供の様に本当に楽しそうに笑っている。。(…まだまだ飽きる様子はなさそうだぞ…)

その顔を見て、ウソップはちょっとだけゾッと寒気を感じた。。

2006/07/13(木) フレンジャー
内戦が終わり、もう二年近く経った。
王女ビビの毎日は、未来の女王としての勉強と政務に追い立てられて、あっという間に過ぎていく。

取り立てて、食欲が落ちた訳でもなく、体調も悪くない。
ただ、心がウキウキするような楽しい事が何もない。
愛想笑いや、優しく人に笑いかけるばかりで、自分が楽しくて、腹の底から笑う様な事が最近のビビにはない。

王女として、近隣の国から贈り物を貰っても、それがどんなに
高価で貴重なモノでも、心から嬉しいとは思えないのだ。
王女としてではなく、一人の人間として、友達として、接してくれる人間が側にいない。
寂しいとは思わない様にしているけれど、無邪気に笑って、皮を剥かずに果物を齧って、裸足で冷たい泉に足を浸して、
遠慮なく無駄口をたたいて…そんな風に、むき出しの素直な、ありのままの姿でいたい日もある。
けれど、そんな時間は全く取れない。
そんなある日。町からビビに荷物が届いた。
「港から届けられました」とにこやかにイガラムが届けてくれたのは、既に封が開けられ、中身が安全な事を確認された、
差出人の名前のない小さな箱だった。
「…誰からだったの?」と尋ねても、イガラムは
「マ〜マ…ご自分でご確認下さい」とニコニコ笑うばかりだ。
箱には、割れない様に丁寧に柔かな布で包まれた瓶がいくつかと、丁寧に折られた一枚の紙が入っていた。
【親愛なるビビちゃん】

「親愛なるビビちゃんへ。元気にしてるかい?
今、船番してたら、隣の船がアラバスタへ行くというから、
大急ぎで荷物を詰めた。本当は、皆それぞれビビちゃんに届けたいモノがあると思うんだけど、残念ながら、皆街に出かけてて、
船に残っているのは、俺だけだ。だから、俺の気持ちしか届けられないけど、俺が荷物を送った事は皆にも伝えておくよ。
船乗りが急かすから、あまり気の利いた事は書けなくてゴメン。
とりあえず、最近寄った南国の島の果物と野菜で作ったジャムを
送ります。きっと、アラバスタでは食べられないと思う。
色々と窮屈で大変だと思うけど、たまには甘いものでも食べて頑張って。ああ、それよりもこの荷物が、無事にビビちゃんの手元に届きます様に。それじゃあ、元気で。いつか皆で会いに行くよ。愛しいビビちゃんへ。
あなたの事が大好きな料理人より」

「…サンジさんたら」
ビビは嬉しくて、その走り書きの手紙をギュ、と胸に抱き締めた。
そして、イガラムににっこりと笑いかける。

「ねえ、イガラム。パパも一緒にお茶でも飲まない?」
「よろしゅうございますね。スコーンかなにかをご用意しましょう。そのジャムをつけて召し上がれるように」
「ありがとう」

久し振りに、心がウキウキと弾むのを感じながら、ビビは
もう一度、サンジから届いた手紙を読み返した。

2006/07/10(月) My way
それは、まだ、「バラティエ」と言うレストランが東の海に誕生する前の話。

月に二度だけ、ゼフは店を休んだ。遮二無二働いて体調を崩してしまっては、却って料理の質が落ちる。
毎日、顔を突き合わせては、躾のなっていない暴れん坊の子犬の様なチビナスとも、今日はお互い別々の時間を過ごす。
その夏の日は、朝から抜けるように空は晴れて、ゼフが目を覚ました頃には、もう店の中にはチビナスの姿はどこにもいなかった。
休みの日くらい、ゆっくり朝食を食べ、のんびりと寝転んで
体を休めたい。そう思うのはゼフだけで、チビナスは休みの日も
元気だ。(…外に行ってくれるなら、静かでいいが…)何か物足りない。シン…と静まり返った家の中で、昼を少し過ぎまでゴロゴロしていたが、だんだんと退屈になってきた。
(…釣りにでも行くか)晩飯の足しくらいにはなる、とゼフは
支度をして、家を出る。
店から少し歩けば、船着場があり、そこの桟橋から竿を垂らせば、群れている小魚くらいは釣れる。
「…なんだ」桟橋の上に、ちょこんと胡坐をかいて、釣り糸を垂らしている小さな背中が見えて、ゼフは嬉しくなった。
休みの日くらいは、顔をあわせず、煩わしい口げんかもしなくて
済む、側にいないとせいせいする。そう思っていたのに、
チビナスの姿を見た途端、勝手に笑いが込み上げてきた。
煩わしいと思っていたのに、側にいないと物足りなくて、
小腹が空く程度に顔や声を聞きたいと思っていたところだ。
退屈を持て余しているのは、二人とも同じ。
余暇の使い方を知らない。どうせ、魚を釣りながら、
「…釣れた魚をどうやって料理しよう」と考えいるに違いない。

ゼフはチビナスと背中合わせになって、桟橋に胡坐を掻き、
そして釣り糸を垂らす。
そうなると、お互い口が勝手に動いて、憎まれ口ばかりを叩きあう。コックスーツを脱いで、包丁や鍋を持っていない今、
ゼフとチビナスは釣り友達で、競争相手だ。
「…ジジイより俺のほうが釣りは上手いんだぜ」とチビナスが言えば、「…そう言う大口は、俺に勝ってから言え」とつい、大人気なく言い返してしまう。
釣り上げた魚の数は、当然、朝から釣っていたチビナスの方が
多くなる。それでも、勝った!」と、汗まみれの顔をくしゃくしゃに歪めて、笑った。本当に嬉しそうに笑った。

そんな風に過ごす時間が、これからもきっと何度も繰り返される。いつまでもチビナスはこのままで、いつまでも自分もこのままで季節は移り行く事無い。
空の青さも海の蒼さも、潮の匂いもチビナスの汗の匂いも鮮やかなその風景の中にいて、ゼフは時は絶対に流れを止める事無く、流れ続ける事を事を忘れた。

そんな風に思える時間をたくさん重ねる事が、幸せを重ねていく事だと、後になってゼフは知った。
時が止まった様に、太陽の光に目が眩むほど眩しい季節の思い出の映像は、現実の時間が流れて、サンジが側にいなくなっても、いつまでも鮮やかにゼフの胸に焼きついて、
その季節が来て、海がその日と同じ様に煌く度に、
ゼフの心を、その時の光に満ちて眩しかったあの夏の海へと
誘う。

2006/07/09(日) 涙の法則・番外編
ナミを助け出して、無事に海軍の要塞から脱出してから、
あっという間に1週間が経つ。
疲労困憊していたナミの体力も回復し、いつもと変らない
賑やかな日常がやっと戻り、ちょうど船は穏やかそうな小島に
着いた。

世の中も、自分の体の中ですらも全部紅色に染めてしまいそうに息を飲む程鮮やかな夕焼けの中をサンジは一人、そっと仲間から離れて、波打ち際を歩く。

ナミが無事に帰って来た事はとても嬉しい。
けれど、旧友を亡くした様なこの空虚な想いは何故、胸の中から
消えてくれないのだろう。持て余すには悲しすぎて、忘れてしまうにはまだ時間が足りない。
ただ、数日同じ厨房で雑用として働いただけの繋がりなのに、
悲しみとはまた違う寂しさをずっと感じている。
分かっているのは、名前も知らない、あの無愛想で態度の大きな見習い料理人の男と、(…もっと、一緒にいたかった)と
思っている事だけだ。
何故か、思い出せば思い出す程、最初からあの男はあの時、ああやってサンジの前から消える事が決まっていた様な気がする。
何故、そう思うのだろう。
一緒にいたいと思えるほど、近しい絆など何もないのに。

口調、包丁を持つ仕草、あのふてぶてしい態度…
あの海軍の調理人の制服を着ていた男を思い出している筈なのに、脳裏であの男とゼフが重なる。
気が着けば、あの男の事ではなく、ゼフの事を思い出している。
そして、無意識にサンジは呟いていた。

「…もっと、一緒にいたかったな…」
ゼフと、どことなしにゼフに似たあの男と。
もう、一緒にいられない、と分かっているのに、そう思わずには
いられない。願っても、願ってももう決して叶わないと分かっているのに、さようならと言えなかった後悔の替わりに、
サンジは太陽が真っ赤に燃えて沈んだ水平線を見つめながら、
同じ言葉をもう一度呟いていた。
「もっと、一緒にいたかったな…」

2006/07/06(木) なれない痴話げんか
「そう。いつも約束を破るのは、コックさんの方なの」
その夜は、仲間皆が寝てからなんとなくロビン相手に酒を飲んでいた。口は軽い方では決してないのに、サンジについてつい、愚痴ったのは、きっとロビンが聞き上手だった所為だろう。
「俺ア、あいつとの約束は破った事一度もない。でも、あいつはちょっと見目のいい若い女を見たら、俺との約束なんか簡単に破りやがる。その癖、悪びれもしねえし、誤りもしねえ。ホントに厚かましい野郎だ」「それは、その度に剣士さんが許してしまうから、図に乗っちゃってるのよ」
ロビンはそう言って、少し同情した様な笑みを浮かべた。
「…コックさんが、約束を破って平気なのは、コックさんだけが
悪いんじゃないわ。剣士さんも悪いのよ」「…俺が?何が悪イんだよ」ゾロがそう尋ねると、「だから、惚れた弱みってやつでしょう?自分は何をしても許されるって思ってるから、好き放題やるんじゃない?だったら、そんな傲慢な事思わせない様に、たまにはお灸をすえなきゃ」「…お灸って…?」

コックさんをほったらかして、浮気をしたって風を装って
ごらんなさい。そうしたら、少しは懲りてくれるかも知れないわ。

ロビンにそう入れ知恵されて、うまく行くかもわからないのに、
ゾロはその通りにやってみたら、どうなるかを考えた。

サンジが待っている宿には行かずに、待ちぼうけを食らわし、
翌朝、街でばったりサンジと出会った風を装う。
それも、ロビンが用意した女ものの香水の匂いをプンプンさせてだ。
「俺だって、たまには女とやりたくなる時もあるんだよ」と
言ったら、サンジはどんな顔をするだろう。
きっと、驚いて、悔しそうな顔をして、それから押し黙ってしまうだろう。
それで、本当にサンジを懲らしめた事になるのだろうか。
(…なんだか、余計にこじれそうな気がする…)
そう思いながら、ゾロはその時のサンジの顔を思い浮かべた。
そうすると、してもいない事を言って嘘を言って
サンジを傷つけるやましさに胸が重くなる。
「…やっぱ、そう言う方法は性に合わねえな」
苦笑いしながらそう言うと、目の前のロビンがニッコリと
何もかも見透かした様に「…でしょうね」と笑った。
「…口では困ってるみたいな事言ってるけど、…剣士さんは
そのままのコックさんでいいと思っているのよ」

2006/07/04(火) 石臼
二人で、古びた町並みを歩く。
ここがなんと言う島か、ゾロもサンジも知らない。
ただ、うらびれてはいるけれど、どこか懐かしい古さを感じさせる町だった。すれ違う子供は皆身なりは薄汚れていて貧相だけれど、皆表情が生き生きとして元気そのものだ。
そんな町を歩きながら、ゾロはふと、「甘味処」とかかれた、小さな看板が風にぶらぶら揺れているのが目に入った。
暖簾越しに中を覗くと、(…面白エ趣向だな)とゾロは興味をそ
そられた。
「…あれ、食っていこうぜ」そう言って、ゾロがその看板を
あごで指し示すと、サンジは「…あれ?あれって…あれか?」と
意外そうな顔をする。そして、
「…男二人で甘味処に入るのか」とサンジは少し困惑した様な
顔をした。
「ま、いいからちょっと付き合えよ。…俺のおごりだ」
とゾロは半ば強引にサンジの背中を押して、その店の中に
入った。
「なんだ、あれ?」サンジはゾロを振り返って、
そう尋ねた。「石臼だ」ゾロは半笑いを浮かべてそう
答える。サンジが知らない事を自分が知っているのが
嬉しいのか、サンジが知らないものを見て目を丸くしている
顔を見ているのが嬉しいのか、分からない。とにかく、
顔が勝手に柔かく微笑んでしまう。「イシウス?」
その店は、自分で食べる分の甘味にまぶす豆の粉を
自分で石臼で挽いて作る趣向らしい。
ゾロは、席に着いて、さっそく「わらびもち」を注文し、
石臼の穴に大豆を数粒摘まんで落とし、ゴリゴリと
挽いてみた。「…へえ…こうやって使うのか。こりゃ、力仕事だな」とサンジは面白そうにゾロを見ている。
(…そうか)
別に「わらびもち」が食べたくてこの店に入ったのではない。
ただ、サンジが無邪気に、興味津々な顔をして、目を輝かせて楽しそうにしている様が見たくて、この店に入りたかったのか、と
ゾロはその時気がついた。

2006/07/03(月) 石臼
二人で、古びた町並みを歩く。
ここがなんと言う島か、ゾロもサンジも知らない。
ただ、うらびれてはいるけれど、どこか懐かしい古さを感じさせる町だった。すれ違う子供は皆身なりは薄汚れていて貧相だけれど、皆表情が生き生きとして元気そのものだ。
そんな町を歩きながら、ゾロはふと、「甘味処」とかかれた、小さな看板が風にぶらぶら揺れているのが目に入った。
暖簾越しに中を覗くと、(…面白エ趣向だな)とゾロは興味をそ
そられた。
「…あれ、食っていこうぜ」そう言って、ゾロがその看板を
あごで指し示すと、サンジは「…あれ?あれって…あれか?」と
意外そうな顔をする。そして、
「…男二人で甘味処に入るのか」とサンジは少し困惑した様な
顔をした。
「ま、いいからちょっと付き合えよ。…俺のおごりだ」
とゾロは半ば強引にサンジの背中を押して、その店の中に
入った。
「なんだ、あれ?」サンジはゾロを振り返って、
そう尋ねた。「石臼だ」ゾロは半笑いを浮かべてそう
答える。サンジが知らない事を自分が知っているのが
嬉しいのか、サンジが知らないものを見て目を丸くしている
顔を見ているのが嬉しいのか、分からない。とにかく、
顔が勝手に柔かく微笑んでしまう。「イシウス?」
その店は、自分で食べる分の甘味にまぶす豆の粉を
自分で石臼で挽いて作る趣向らしい。
ゾロは、席に着いて、さっそく「わらびもち」を注文し、
石臼の穴に大豆を数粒摘まんで落とし、ゴリゴリと
挽いてみた。「…へえ…こうやって使うのか。こりゃ、力仕事だな」とサンジは面白そうにゾロを見ている。
(…そうか)
別に「わらびもち」が食べたくてこの店に入ったのではない。
ただ、サンジが無邪気に、興味津々な顔をして、目を輝かせて楽しそうにしている様が見たくて、この店に入りたかったのか、と
ゾロはその時気がついた。


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