龍や騒動記
ボスが語る「びすとろ龍や」の出来事
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2008/09/28(日) 最後のラーメン
金曜の夜、10時過ぎに一組だけになった頃、数年前に一度訪れたという東京の人が御夫婦でやってきた。「すいません、食事してきたんであまり食べれません。一杯飲ませてください」。全然かまいませんよ、ありがとうございます、と言うと、「幸楽軒ってラーメン屋さんご存知ですか? 中洲のキャナル寄りにある…」 「幸楽軒ですか? 利花園の隣の隣の6人ぐらいしか座れない…」 「そうです、そうです! 前回博多に来た時、知人から紹介されて行ったんですよ、そしたら美味しくて美味しくて、今日はカミさん連れて行ったらスープ全部飲んじゃって(笑)」 「美味しいですもんね〜、アソコのラーメン!」  実は僕も幸楽軒のラーメン好きで、めったに行かない中洲に行ったら寄ってた隠れた名店。つい先日もお客さんに教えて、ママが「ワタシ行ったことない! 連れてって!」と怒られたばっかり。そしたらその人が「それがですね、明日でお店辞めるとおっしゃって…」 「えっ!?…お店をたたむってことですか?」 「はい…39年やってこられて、40年迎えて辞めようと思って頑張ったけど、やはり身体がキツいじゃないですか、もう限界っておっしゃってました…」 「そうですか…」 ラーメン屋という商売がどんなに重労働で歳とったらとてもじゃないができないことは重々わかってるつもりなので、「なんで辞めると!?」とは思わないが、あの大将と奥さんが奏でる美味しくて世界一温かみのあるラーメンがもう食べれなくなると思うと言いようのない寂しさがこみあげてきて。その東京の御夫婦が帰られて一組だけになったとき、どちらからともなくママと「ラーメン食べに行こうか」「うん、行こう!」  エミリに「ラーメン食ってくるから。留守頼む。お客さん来たら電話して」「はい、行ってらっしゃい!」。 車飛ばしていざ幸楽軒。先客に詰めてもらってカウンターに座り、「大盛ラーメン二杯ください!」。60過ぎたぐらいであろう、長年の体勢で背中の曲がった大将が「大盛ラーメン二杯ですね、はい」と麺を入れる。仕上げにネギとチャーシューを載せた奥さんからラーメンを受け取り食す。う、ウマイ! ママも「美味しい!」。食べ終えた他のお客さんが「ごちそうさま!」と席を立つたびに大将が「長いことお世話になりました。ありがとうございました」と声をかけ、「お元気で!」とお客さんが返し、ああ、ホントに明日までなんや…と実感する。黙々と箸を進め、お客が僕らだけになった時大将に「明日で店閉められると聞いて飛んできました」と言うと、「そうですか、それはわざわざありがとうございます。あと一年、40年まで頑張ろう思うとったですけど、やっぱもうキツいけんですね(笑)」と大将。「そうですか…このラーメンが食えなくなるのは寂しいけど、今日来れてよかったです」。ママも「よかったあ、食べれて(笑)」。どうしても明日も食べたくなって、一応明日の営業時間をきくと、「7時半ぐらいから…0時半〜1時ぐらいまでだと思います」とのこと。「やっぱ来れそうにないな…どうもごちそうさまでした。大将も奥さんもお元気で。もしかしたら明日も来るかもしれません(笑)」。そう言って店を出た。39年、それだけの永い年月店を守り、身体にムチ打ってひたすらラーメンを作り続けてきた歴史、汗、尊さ、何万人にのぼる来客の軌跡、いろんなものを感じて、商いの原点というものを見せられた気がした。「ツイてるよね、オレたち…。知らん間に幸楽軒がなくなっとう、ってショック受けるとこやったとに。あの東京の人が、わざわざ教えに来てくれたみたいなもんやん」 「ホントねえ〜、ワタシも食べれてよかったあ」、食べ終わる頃エミリから新規のお客さんがいらしたと電話があったのもあり、感慨深げにそんな会話をしながら龍やへ急いだ。そしたら戻ると同時にお客さんがポンポンと入って、なんちゅうタイミングの良さ! やっぱオレたちツイとうバイ。で土曜日、はなから幸楽軒はあきらめてたのだが、11時半にお客さんが途切れたので「行こうか(笑)」。急いで行くと先客が二人。間に合った! 「また来ました(笑)」、そう言うと大将が、「ああよかったあ! 麺があと3玉しか残っとらんとこでした。母さん、シャッター半分おろして! もうこれまでやけん」。お〜、またまた何というタイミングの良さ! オレたちツイとうバイ、マジて! しかも39年の幕を降ろす最後の客やないか、オレたち。いいの? オレたちで。大将は「最後のお客さんがあなた達でよかった…」、そう言ってくれてるように微笑みながら最後のラーメンを作ってくれる。その一挙一頭足から目を話さず、厳粛な気持でラーメンを待った。出来上がった、最後のラーメン。噛みしめて食べた。今まで食べた、どんなラーメンより旨かった。いろんな想いが、39年の歴史が詰まった…これから先もこんなに旨いラーメンを食べることはないと思う。「ありがとうございました、永い間お世話になりました」、そう言ってくれる大将と奥さんに「ごちそうさまでした! 永い間お疲れさまでした。お元気で」。そう言って頭を下げ、幸楽軒をあとにした。「よかったあ、二回も食べに来れた」、ママが心から嬉しそうにつぶやく。偉大なる先輩、世界一のラーメンごちそうさまでした! 劇的な瞬間に立ち合えるという、粋な計らいを神様ありがとう。光栄でした。


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