|
2009/05/20(水)
僅差の谷間
|
|
|
理想的な恋愛は、一方的な恋愛です。 一度も出会うことのない恋愛です。 勝手に愛しみ勝手に焦れ、独りで完結する恋愛です。 滅多に会わない誰か、或いは国や土地や血族。 縁として支えにするけれども、勝手に尽くそうとするけれども、交わることはない。 それが理想の恋愛です。
そもそも恋愛観が歪んでいて、それを「環境だ」と言われたことがある。 けれどそうではないことを、確信しています。 確かに周囲からは通例を学べなかったかもしれない。 けれど、それが原因ではない。 一番の要因はやはり、自分自身だと思うから。
少し寂しいのは、人と話すことが出来ないこと。 恋愛という話題自体が分からない。 私はたぶん、分かろうとしていない。 それは分かろうとして分かるものではないはずだ。 しかも自分自身のそれに付いては、思考さえ独占するつもりでいる。
ヒトであるから、私は犬の気持ちも猫の考えも分からない。 鮭が交尾の時に何を考えているのか、鶴は何の為なら自分の子供を見捨てるのか。 同じように、私以外のヒトの気持ちも分からない。 分かろうと思わない。 分からなくても、そのままで好きならそれでいいから。
ただ、人と話すことが出来ないのは、ただ少し寂しい。 それだけ。
私にも胸の内が不意に熱く滲んで潤うことはある。 胸部に圧迫を感じ、息詰まる煩悶を得ることもある。 身を焦がすほどの憎悪の様な執着に苦しんだこともある。 愛おしいと思う気持ちは同じはずだ。 私も愛おしいと思っているはずだ。
それでも、誰かと話すことはきっと出来ない。 不快にさせること、或いは嫌われることが怖くて。
|
|
|