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2009/01/24(土)
伝説の男
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それは俺が入社したての頃の話だ。
その頃は 武骨なガラス清掃という職業にも拘らず 女性の従業員が数名いた。
その中の1人、ユキさん(仮名)という 俺より6〜7歳上、そう伝説の男と同年代の女性がいた。
ユキさんはとても気立てが良く 誰にでも優しいとても素敵な人であった。
勿論伝説の男にでさえ例外はない。
数々の女子社員に気持ち悪いと烙印を押され ほとんど人として扱われていなかった伝説の男。
唯一ユキさんだけは人間扱いをしてくれていた。
当然の如く惚れてしまう伝説の男。
100%叶う筈のない恋だど誰もが思ったが 伝説の男を止める者はいなかった。
だって恋をするのは自由じゃないか!
伝説の男にも恋する幸せを! なんて思っていた。
その後一ヵ月程過ぎたある日。
伝説の男はとんでもない事を言い出した。
何と
「俺はユキと付き合ってる。」
と言い出したのだ。
いくら優しいユキさんといえど これには辟易した様で
伝説の男を見る目が変わった。
「あの人一体何なの?気持ち悪い…。」
ついにあの仏の様なユキさんにまで気持ち悪い烙印を押されてしまったのだ。
ユキさんも気付くのが遅い! そう、伝説の男は気持ち悪いのだ!
だがもう時既に遅く 伝説の男の妄想は止まらない。
だが伝説の男にとってみれば それは妄想でもなんでもなく 事実なのである!
優しくされたから 2人はもう付き合っている! と本気で思っているのだ。
毎日がストレスのユキさん。
顔も見たくないと会社を辞めてしまった。
そして実家の山梨へと帰郷してた。
それですべてが終わると思っていた。
いや、普通なら終わる筈だ。 が 相手は伝説の男。
どうやって住所を知ったのか 何と山梨まで追いかけていった!
たいした根性である。
週末になれば山梨へ行き ストーカー紛いの行動をしていた。
というかストーカーをしていた。
しばらくして風の噂で
ユキさんの知人の男に殴られたと聞いた。
どういう事か本人に事実を確認したところ
「殴られてない!俺に遠距離恋愛は向かないから別れた。」
何と!伝説の男から別れを選んだと言うのである!
きっとそれも嘘で ほんとに殴られて諦めたのだろう。
そもそも付き合ってもいないし…。
この頃20代前半だった俺。 世の中には恐ろしいバカがいるものだな…と世界の広さを痛感したのであった。
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