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2018/05/30(水)
おけさの松
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福一さんは仕事前に事務所にふらっとやって来た。僕らはこれから渋沢行だというとそれはそれはとねぎらってくれた。 彼は思い出すように目を細めて話した。、まだ若い時に渋沢に荷運びに出た帰り、みんな元気だったから馬鹿な遊びをしたものだ。水平道の5号のサイレンのある所に川に向かって切りたった尾根がある。そこに一本の松が絶壁の端に佇立している。「誰かあの松に上って佐渡おけさを唄ってみたら酒一升だ!」というと満直さんという仲間が「じゃっおれがひとつ」と切りたった尾根を渡りその松に取り付いて上り始めた。当時はみな若く荷運びの帰りで空身だったせいもあって力が余っていたのだろう。滿直さんも元気いっぱいで威勢がよかったのだ。松の天辺までたどり着いて大きな声で「佐渡おけさ」を唄った。そう話して福一さんはこう言った。「ところがさその佐渡おけさが震えていたな〜」とあの時代は何でも一升瓶で人は危ないことも楽しんでしていたようだ。今でこそやれ危ない、責任だ、安心、安全だという時代になってしまったけれど、その分人間が小さくなって面白くなくなってしまったようだ。 バンドリ沢に春ゼミが落ちていた。手に取ってふっと息を掛けて放るとドタドタと飛び去った。ともに写真が悪いが、ごめん!
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