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2015/11/18(水)
霧のなか
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病院に着いて、兄に遅れをなじられた。その後兄は「もういいだろう…」これが父の最期の言葉だったと。 霧が深い山を歩いているといろんなことを考える。父の最期を思い出していた。9月の割りには暑い日だったなと。 僕が最期をむかえるときはどんなことになるのだろう。医者が言う「3ヶ月でしょう」と その3ヶ月にぼくはどんな映画を見て、どんな音楽を聴きたがって、どんな本に向かうのだろうかと。 映画は「東京物語」「ライム・ライト」「デルス・ウザーラ」「浮雲」「カサブランカ」「駅馬車」「7人の侍」「秋刀魚の味」最後は「ローマの休日」きっと疲れるのだろう。日にちをかけて見終えると力も落ちて本は読みたいとは思えなくなる。萩原朔太郎、谷川俊太郎、若山牧水などの詩歌も読めなくなるときがくれば、ぼくはベッドの上で手を胸の上に組んで、そのときまでの来し方を巡るのだろう、「青葉繁れる桜井の〜」と口ずさみながら、父と同じような時を受け入れるのだ。そのときぼくは何と言えるのかと考えていた。 前を行く仲間が霧の中で見え隠れする姿が自分になったり、父や兄に見えたり平山周吉だったりカルヴェロやデルスのように感じられる霧がくれたの夢の時間だった。 夜の雨がはい然と降っている。
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