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2011/01/20(木)
援助技術論等、事例問題対策3<練習問題>
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事例問題:やまださとこ(仮名) 女性 78歳 主婦 神経症、糖尿病、老人性うつ病の診断で入院しているやまださんは、10 年前に糖尿病を指摘され、74歳のとき、その治療のため入院、以後毎年糖尿病及び神経症の合併で内科、神経科に入院を繰り返している。本年3 月左大腿骨頚部骨折手術のため整形外科に移り、20 日後再び神経科に戻る。ソーシャルワーカーは 7 月、主治医から「退院してもいい状態なのに帰りたがらない。頻尿と臥床状態で困る。何とか働きかけてほしい」との依頼があり、面接を開始した。 やまださんは、小学校卒業後家事手伝い、その後、女中奉公に出た。奉公先の若旦那との聞に二人の子どもができるが、とうとう結婚はできなかった。上の子は里子に出され、母親は行方を知らない。下の息子は都内在住。やまださん本人は、45歳のとき2人子どものいる現在の夫と再婚。厳しい亭主関白の夫に従って暮らしてきた。現在夫と二人暮らしだが、2 年前から、夫が脳梗塞でその看病が重荷になる。そのため糖尿病のコントロールが不良となった。 やまださんは、骨折がよくなっても、家に帰りたがらない。一つは夫にあれこれと言いつけられて家事をするのがもういやだ、命令的にいわれるのが嫌い、威張っていていつも怒られる、という不満がある。夫は、家に帰ってくるのが当然と思い、またそうしてほしいと願っている。しかし、これまで夫は妻が実子に会うことを拒否してきたということがあり、妻にしてみると、入院している限りは実子夫婦が見舞いにきてくれるし、孫も連れてくるということがあり、その機会を失いたくないという気持ちもあるように見える。実子の家に帰りたいということもある。 義理の息子も見舞いに来るが、義母は入院してから口数が減り、前と変わったという印象を持っている。(この息子は、後に母が外泊した時などよく世話をしている。) 現在の状況は、主治医や看護師が夫の話をすると怒りだし、頻繁にトイレに通い、終日臥床、目を閉じている。 ソーシャルワーカーは、取りあえず本人とベッドサイドで面接をすることにした。
問題1 やまださんの頻尿が、器質的な疾患によるものではないことが明らかであることから、ワーカーは頻尿、終日臥床、閉眼という状態を本人からのどのようなメッセージとして受け取るか。次の項目のうち、リストに含めることが適切なものの組み合わせを下枠の中から一つ選びなさい。
A 自殺願望:もう生きていくのが嫌になった。ベットから起き上がるのも目を開けるのも面倒くさい。いっそ死んでしまいたい。 B 詐病 (仮病) : 病気がまだ治らないふりをしよう。そしたら同情してもらえるでしょう。 C 退行 : だれか助けて。私の肩から「責任」を取りのけて。 D 現実逃避 : もう、あの家や夫や、家事の責任について考えるのはいや。 (組み合わせ) 1.AB 2.BC 3.AC 4.AD 5.CD
問題2 この場合のやまださんの気持ちの中には、夫への敵意と、しかし離れ切れない気持ちの葛藤がある。実子の所に帰りたいという非現実的な願望がふくらんでいるのもその表れである。このような場合、ワーカーは面接で、どのような目標を立て、どんな点に留意すべきか。次の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。
1 頻尿には器質的な根拠のないことをゆっくりと十分に理解させる。 2 本人が過去に示した忍耐を賞賛し、再び勇気を持って現実に立ち向かえるようにする。 3 身体症状として表現されている現在の気持ちを言語化できるよう、面接を重ねる。 4 本人が迷っている時、ワーカーは家へ帰ることと入院を続けることのそれぞれの利点と問題点を提示して決断を促す。 5 夫に積極的に働き掛けて妻への優しい気持ちを表現してくれるよう頼む。
問題3 病棟での面接から始めたワーカーは、その後、やまださんが少し目を開けて面接に応じるようになったところで、相談室での面接に切り替えた。同時に幾つかの具体的援助を実施した。次の記述のうち、プログラムに入れることが適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。 A 夫と義理の息子とに、来院を求め面接する。本人の気持ちも含め家族相互の理解とコミュニケーションを促進するため。 B ホームヘルパーを入れて家事と夫の介護の労力を減らす試みを提案、試験的に実施してみる。本人の重荷を実質的に軽減する工夫である。 C 主治医に依頼して、頻尿にも臥床継続にも身体的な根拠のないことを説明してもらう。本人の病気の科学的理解のため。 D 実子夫婦に面接して、同居したいなどという非現実的な願望を抱かせないよう、気を付けてもらう。 (組み合わせ) 1.AB 2.BC 3.AC 4.AD 5.CD
<解答>
問題1:答え5 クライエントの行動を通じて、どのようなニードを表現しようとしているのか洞察的に理解するための問題である。クライエントは常識で説得されると反論しにくいので、心を開かないように、コミュニケーションをもたないように防衛(現実逃避)している。また大人として理にかなった行動を決断できないのは、幼少期の依存経験のない(退行)ことから生じたものと考えられる。
問題2:答え3 ワーカーがクライエント面接で、どのような目標や留意点をもつべきかを問う問題である。ワーカーはクライエントの不満や葛藤を受容し、時間をかけて援助する必要がある。クライエントの内面や感情を言語化することは極めて重要であり、ワーカーの受容と傾聴により、それは可能となると考える。
問題3:答え1 クライエントにとって現在の夫と義理の息子は、キーパンソンである。彼らとの相互理解を深め、新しい見方や接し方ができるようにするための援助は極めて重要である。また現実的な解決策も必要で、ホームヘルパーという社会資源の利用を提案し、心理的、肉体的負担の軽減に役立つと思う。
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