|
2010/10/31(日)
ソーシャルワーク関連科目:事例問題の練習
|
|
|
<援助技術論・事例問題> 失業した Y 夫 (57 歳) は、野外で寝泊まりをしていた。ある晩寝ていたダンボールの「家」を何者かに燃やされ火傷を負って、救急車で入院した。火傷自体は軽いものだったが、精神的なショックとすい炎の治療が必要と診断され、2週間の入院予定となった。 所持金はなく、国民健康保険もないため、とりあえず、医療扶助の対象として緊急保護された。主治医より M 医療ソーシャルワーカーに面接するよう依頼があった。 Y夫は精神的ショックで極端に口数が少なく、表情もこわばっていた。病室にM ワーカーが入ってくると不安げなまなざしで、じっと見つめていた ( 問 18) 。 ポツポツ話し始めた Y 夫の話から分かったことは、以下のことであった。 l.1か月前まで新聞販売店に住み込みで、働いていた。しかし、解雇されて部屋も追い出された。 2. 以前から転職を繰り返してはいたが、仕事をすることで、自分の生計は立ててきた。ホームレスになるのは初めてである。 3. もう野外では寝ることはできない。また何か恐ろしいことが起こるのではないかと、不安で今、目をつぶるのさえ怖い。安心して寝ることのできる場所が欲しい。この病院を出されたら、自分の身の置きどころがない。どうしたらいいのか分からない。 そうした話を共感的に傾聴した上で、 M ワーカーは援助の方針を立てた。 まず強度のストレスによって不均衡状態に陥った Y 夫に対して、事件にまつわる感情の浄化ができるようにする。そして抱えている問題を細分化し焦点づけて、Y 夫とともに取り組む当面の問題は「生活保護の受給」と「屋根のある寝場所の確保」と考えた。そしてその解決援助を入院中に行うことにした (問19)。 こうした経過を経て、 Y 夫の間意を得、 M ワーカーは福祉事務所に電話をし、事情を説明した。福祉事務所の K ケースワーカーは、 Y 夫の火傷が軽いことから退院時に生活保護を見直すつもりであったとのことであった。そこで M ワーカーは説明を行い、 K ワーカーに至急来院するように、要請した ( 問題 20) 。
問題18 心的外傷を受けた直後の Y 夫に対して、M ワーカーが最初に行う対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。 1 「お金はありますか。中途半端に持っていると生活保護が受給できないので、財布を探させてもらいますよ」とまず、経済問題に対応することを説明する。 2 相談室に来てもらい「なぜホームレスになったんですか。勤め先でケンカでもしたんですか」と、 Y 夫がホームレスになった原因を率直に語れるようにプライバシーに配慮する。 3「福祉事務所のケースワーカーにいろいろ話したそうですね。ケースワーカーから聞きました」と、福祉事務所と連携をとって一緒に支えていく意欲があることを示す。 4 「あなたのような方をたくさん知ってます。大船に乗った気でいてください。」と、自分が信頼できる専門家であることを、 M ワーカーの方から積極的に説明する。 5「相談員の M といいます。大変怖い目にあいましたね。」と言って、ベッドサイドに座る。Y 夫が M ワーカーの人物吟味をやりやすいように目を合わせる。
問題19 援助過程では様々な理論的アプローチが考えられる。事例に用いられている理論的アプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを 一つ選びなさい。 1 危機介入モデル 2 エンパワーメント・アプローチ 3 エコ・システム・モデル 4 問題解決アプローチ 5 医学モデル
問題20 ワーカーの K ワーカーへの来院依頼の根拠に関する次の記述のうち、 適切なものに○ 、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。 A 今後も外来治療が必要であり、今後の治療方針を相談するために K ワーカーに来院してもらって、医療スタッフを含めたケース会議が必要と判断した。 B 安心した寝場所を得ることに、Y 夫が強い意欲を持っていることを K ワーカーに伝え、K ワーカーとMワーカーとが共通の援助目標を設定できるよう、来院して面接することが必要と判断した。 C 今後の媛助の中心は、 K ワーカーとなることが期待されるので、その来院を要請した。 D M ワーカーが、援助者として最大限の努力をしたことを Y 夫に示すために、生活保護の継続は無理で、ある旨を、 K ワーカーから直接宣告してもらう必要があると判断した。 ( 組み合わせ ) A B C D 1 ○ ○ ○ × 2 ○ × ○ × 3 ○ × × ○ 4 × ○ ○ ○ 5 × ○ × ○
===== <解答>
問題18 答え D Y夫に対し、生活保護をちらつかせ、財布を捜すと言うことはY夫の不安を強くするだけである。ホームレスとして過ごすようになった経緯を聴くことも重要であるが、現段階では、「ここは安全だ」とY夫さんが感じる時間・場所を設けることが優先される。「いろいろ話したそうですね」というくだりは、Y夫には圧力となる可能性もある
問題19 答え@ 突然の出来事により、情緒に混乱が生じている状態に対して、短期的に集中して介入することで危機的状況を脱することを目的としたアプローチである。
問題20 答え @ 福祉事務所のワー力ーに対して、医療機関のワー力ーがどのようなことを目的に来院の依頼をするのか、という点に関して問われている。 退院後の生活を考えると、福祉事務所のワーカーにもカンファレンスに参加してもらった方が良い。こうした問題は様々な事柄が複雑により合わさって、長期間に渡る傾向がある。したがって、「そのあと」「これから」を念頭に置く必要がある。
|
|
|