社会福祉士 受験支援セミナー 日替講座
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2009/02/28(土) 「社会福祉士受験支援講座」09年度版への移行のお知らせ
<ブログ「社会福祉士受験支援講座」09年度版への移行のお知らせ>

 皆様には、お手数、ご面倒をお掛けしますが、新しいブログに移行しました。利点として、記事の文字数が無制限になること、記事の分類、用語検索が可能となり、閲覧される方々も便利になるという点等が挙げられます。
 何卒、ご理解をお願いします。

 以降、下記のURLのブログ形式のサイトに移行します。

 また、内容も、これまでの社会福祉士・精神保健福祉士試験の受験に向けた練習問題や、要点の解説に加え、関連する情報のクリップ・ブックマークを加えて、継続しています。

 今後も、引き続きの閲覧と、ご活用を、よろしくお願いいたします。

 当サイト筆者・編集者

 移行後のブログです。

 「社会福祉士受験支援講座」09年度版
  http://miseki.exblog.jp/

2009/02/26(木) ソーシャルワーク論・web講座7「ソーシャルワークの国際的定義」
1 ソーシャルワーカーとは テキストP38 参照
 ソーシャルワーカーとは、様々な生活問題を抱える人々の訴えを傾聴し、問題の原因などを分析し、利用者と共に問題を解決へと導く社会福祉専門職である。
■ソーシャルワーカー
 社会福祉施設・機関,あるいは医療機関や学校などにおいて,専門的知識と技術,価値観をもって,社会福祉サービス利用者の相談・援助や社会資源の活用,地域への援助を行う社会福祉専門職をさす。利用者の主体性を重視しながら,人と環境の相互作用に着目し,両者の適合を図っていくことを役割としている。

1-2 ソーシャルワーカーの専門援助活動P39
・相談援助
・問題解決を目指し、利用者との協議と提案
・問題の分析、検討
・社会資源の利用支援、情報提供
・求職活動・就労支援
・家族など人間関係の調整
・地域生活支援 など

1−3 社会福祉援助活動の国際定義 P41から
■ソーシャルワークの定義(国際ソーシャルワーカー連盟)
 ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会のシステムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。
<解説>
 様ざまな形態をもって行われるソーシャルワークは、人びととその環境の間の多様で複雑な相互作用に働きかける。その使命は、すべての人びとが、彼らのもつ可能性を十分に発展させ、その生活を豊かなものにし、かつ、機能不全を防ぐことができるようにすることである。
専門職としてのソーシャルワークが、焦点を置くのは、問題解決と変革である。従ってこの意味で、ソーシャルワーカーは、社会においての、かつ、ソーシャルワーカーが支援する個人、家族、コニュニティの人びとの生活にとっての、変革をもたらす仲介者である。
ソーシャルワークとは、価値、理論、および実践が相互に関連しあうシステムなのである。
*国際ソーシャルワーカー連盟 P41下段参照

◆ 国際定義と社会福祉援助活動 P42から 
<ポイント>
 国際ソーシャルワーカー連盟の定義では、ソーシャルワーカーは、人間関係における問題解決を図り、人々のエンパワメントと解放を促すとされている。
つまり、利用者個人の問題の解決を、それを生み出す社会構造との関わりで考える視点をもたらし、解決するには積極的に、その原因となっている社会構造を変革し社会的不正義に挑戦することと示している。
<解説 テキストP42から 参照>

◆ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指す
 ウェルビーイングとは人間として良好・快適な状態(身体・精神・社会・行動)が続いていることを指し、人権の尊重と自己実現、最大限の可能性の追求が主題となる。
*ウェルビーイング(well-being)とは、生活の質(QOL)の豊かさを示す概念である。国際連合などの国際機関や欧米諸国では,救貧的・慈恵的な思想を背景とする「ウェルフェア」に代えて,「より積極的に人権を尊重し,自己実現を保障する」概念として定着してきている。この概念が注目されてきた背景として,福祉問題が普遍化するなかで,これまでの保護的福祉観からの転換が必要となり,福祉サービスの利用によるスティグマの解消が指向されていることがある。近年,社会福祉全般の基本理念となりつつある。

◆ソーシャルワーク専門職は社会変革を進める
 利用者個人の問題を社会構造との関わりで考える視点が必要である。また、個々の問題を解決するため、原因となっている社会構造・問題の変革や、社会的不正義(差別・不平等など)に立ち向かう姿勢が必要である。

◆ソーシャルワーク専門職は、人間関係における問題解決を図る、人びとのエンパワメントと解放を促していく
 人間関係上の問題解決(家族と社会)と、そのためのエンパワメントの視点の必要性。

◆ソーシャルワーク専門職は、人間の行動と社会のシステムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する
 問題を抱える人々と彼らを取り巻く環境の相互関係、特に人と環境の接点への介入の必要性。人間の行動や環境のシステムなどの理論を理解する必要がある。

◆人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である
 ソーシャルワーカーの専門職としての基盤は、人権と社会正義の原理である。人間の尊厳生命の価値を守り、正義と公正、人々の最大限の幸福を追求する活動なのである。

■用語解説:マイノリティ minority
 社会において支配的な文化,価値,規範などを所有し,それらを行使することで当該社会のノーマルな成員として生きている人々をマジョリティとよぶとき,マジョリティからみて異質な存在,排除すべき存在はマイノリティとなる。マジョリティ/マイノリティということばは,たんに人々を多数派/少数派として分類する概念ではない。そこには「普通である」支配的集団から「普通でない」人々への権力行使,差別,排除の行使という含意がある。具体的には,民族的な少数者,同性愛者,障害者,女性などが現代社会のさまざまな生活文脈においてマイノリティといえる。マイノリティへの差別,排除を詳細に捉え解読し,批判し解体する営みは,市民としての権利をマイノリティに取り戻すことにとどまらない。それは「普通であること」に含まれているさまざまな差別的実践や意味を批判的に解読する作業でもあり,マジョリティが「差別すること」から解放される契機ももつ。

<参考リンク>
*「国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)のソーシャルワークの定義」
http://www.jacsw.or.jp/contents/data/03_IFSW_teigi.htm

*練習問題等の編集は、関屋光泰が行なっています。

2009/02/25(水) ソーシャルワーク論 web講座6「ソーシャルワークの価値・知識・技能・能力」
「四つの総体」とは、援助者が体得していることを期待されているものをまとめて、表現している。「価値の総体」、「知識の総体」、「技能の総体」、「能力の総体」と、まとめることができる。
<解説>
1 四つの総体 テキストP25中段から 参照
◆「価値の総体」 テキストP25中段から 参照
◎価値とは,一定の社会・文化・グループ・個人によって望ましいとみなされる行為や思考の特性である。社会福祉専門職の価値とは,専門職としての人間観・社会観のことであり実践の基礎となる哲学である。明文化されたものとしては,日本ソーシャルワーカー協会の倫理綱領の原則に,要約すれば「人は平等であり,尊厳ある存在として尊重されなければならない」,「人は自己実現の権利を有し,社会はそれを助けなければならない」,「ソーシャルワーカーは上記の実現のためにもてる能力を駆使する責務がある」と述べられているが,これらは中心的な価値である。

@人間であること自体の固有の価値
援助者は、人間であること自体に固有の価値をおくこと、人間の本質に根源的価値をおくことが重要である。人間の尊厳は不可侵である。

A個人に対する価値と、自己決定に対する価値
 人間としての個人、その個別性を最大限に尊重することが重要である。
 また、利用者の自己決定の尊重と、権利(人権)擁護のバランスが求められる。
◎自己決定とは、利用者の人格を尊重し,自分の問題・課題、生活や人生について自分で判断し,決定する自由があるという理念に基づいた援助関係の原則である。

B民主主義・人道主義に対する価値
民主主義は個人の最大限の可能性を引き出すシステムとしては、現在考えられている最善のシステムであろうといわれている。人道主義を貫くことが求められる。
◎人道主義とは、博愛の精神に基づき,人類全体の福祉の実現をめざす立場である。人間愛を根本とし,残虐行為など非人間的な行いを排斥する。

C自己実現と生活の質に対する価値。
 利用者の自己実現を可能にするために、個々の利用者の潜在的可能性、発達可能性を確信すること。
◎自己実現とは,人間が自らの能力や可能性をあますところなく発揮し,その結果としての創造的活動,自己の成長を望む欲求をさす。

*NASW(全米ソーシャルワーカー協会)「方針宣言:価値観」(1981年) テキストP27下段 
・キーワード:個別化の重視、 守秘、 社会変化への参画、 自助、 利用者の感情やニーズの尊重、 知識や技能の伝承、 利用者の為の努力の継続、 差異の尊重、 社会正義、 専門職の誓約

◆知識の総体 テキストP28上段 参照
 NASW「方針宣言:知識」によると、人間とその行動(心理学など関連分野)、コミュニケーション、歴史、社会福祉援助技術、社会福祉制度、現代社会(経済と政策等)等々に関する知識が必要とされている。
*ソーシャルワーカーはその専門職の活動の基本となる人間と社会環境の交互作用を理解する基礎的な知識を有していなければならない。
多くの場合,ソーシャルワーカーは面接というコミュニケーション手段を用いて,クライエントの援助にあたるので,クライエントとの人間関係形成に必要な知識やスキルを習得しておくことも不可欠である

B技能の総体 テキストP28下段 参照
 傾聴と理解、問題の構造化、専門的援助関係、信頼関係、専門職としての役割と機能等々の技能が必要とされている。

C能力の総体 テキストP29中段 参照
 専門職として、聴く、話す、解釈と理解、教える、感情の安定、責任と役割、全体的視野での把握、問題解決等々の能力が必要とされている。

■用語解説:全米ソーシャルワーカー協会 NASW  National Association of Social Workers
設立は1955年。2001年現在約15万人の会員からなり,アメリカほか諸国に55支部をおく,世界最大のソーシャルワーク専門職の組織である。協会は,「会員の専門性の発展」,「ソーシャルワーク専門職の基準の創造と維持」,「堅実な社会的政策の提言」を目標に掲げ活動している。

■用語解説:パターナリズム paternalism
・人間関係を権利と義務の関係としてではなく,恩顧と保護の関係で捉える考え方。包括的な場合であったり個別的な場合であったり,あるいは弱者と強者の関係であったり,または相手方の同意がなくてもよいとされる場合や相手方の意思に反しても干渉してよいとされる場合などがある。親子関係あるいは父子関係になぞらえて,国家や医者は,子どもや病人などに対して,相手方の最善の利益のために干渉することができると説くもの。

■用語解説:コンピテンス(コンピタンス)
環境と個人が相互にやりとりをする過程で,自分自身が周囲に与える影響を肯定的な感情で捉えることができれば,その個人は自己肯定感に基づいた一定の感覚を心のなかに確立することができる。そして,その内的な感覚をよりどころとして,必要な支援を自ら探したり受け入れたりする力量・能力が開花していく。


<参考リンク>
*「民主主義」:百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E4%B8%BB%E4%B8%BB%E7%BE%A9


<こちらも学習にご活用下さい。>
■公的扶助論(生活保護制度)web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1225585731/
■社会福祉の歴史 web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1226020506/

2009/02/24(火) ソーシャルワーク論 web講座5「ライフモデル」
1章3節 社会福祉援助活動の基本的枠組み
3−1 社会福祉援助活動の概念
<ポイント>
今日の社会福祉援助活動は、エコシステム接近方法(生態学的視座とシステム思考の統合)を取り入れたライフモデルの枠組みによって得られる。
<解説>
1 エコシステム接近方法
・エコシステム接近方法とは、何らかの問題を抱える個人を、様々な環境(自然環境、社会環境、人間環境)と別々のものとして捉えるのではなく、一体的なシステムとして捉える方法である。また、そうした捉え方に基づく支援のありかたを具体化したのがライフモデル(生活モデル)である。

◎エコシステムとは、あるエリアのすべての生物と,そこに存在するすべての物理的条件の間に発生する,物質の循環,エネルギーフロー,情報伝達といった相互作用を機能の観点から捉えたシステムである。マイヤー(Meyer, C. H.)は,ソーシャルワークに多大な影響を与えてきた生態学理論とシステム理論の統合を試みるなかで,このエコシステムの概念をソーシャルワーク実践の文脈に則してエコシステム視点として体系化した。 
 エコシステム視点では,クライエントのみならず,クライエントを取り巻く環境(家族,友人・知人,関係社会機関,地域など)からの影響、クライエントと環境との間にある相互関連性をも含めて包括的に理解することが求められる。

2 ライフモデル
 ライフモデル(生活モデル)は、人々の成長と発達を最大限にし、環境を改善すれば相互に良好な適合状態が確保されるという観点で、人間の持つ不健全性だけではなく、健全性にも関心をもつ。またライフモデルにおいて、援助者は利用者の生活を指導するのではなく支援するのであり、利用者は受動的存在ではなく、能動的・応答的存在として援助者のパートナーとしてみられる。

◎ライフ・モデルとは、1960年代以降アメリカで複雑で多様な生活問題への援助の要請が高まり,従来の個人のパーソナリティに治療の焦点をおいた伝統的なアプローチに対する批判が高まった。そのソーシャルワークの限界を打開するために,生態学や一般システム理論などの新たな理論的枠組を背景に登場したのがジャーメインらによって体系化されたライフ・モデル(生活モデル)である。このモデルでは,人,環境のどこに問題があるのかを問うのではなく,問題は生活空間における不適切な交互作用(transaction)にあると考え,人と環境の接触面(interface)に焦点をあてていく。ソーシャルワーカーの社会的目的は,人々の成長と発達を最大限にし,環境を改善する交互作用を生み出すように,人々の適応能力と環境の特性を結び合わせることとされる。そこでは,生活体の適応能力を高めると同時に環境を改善するという二つの実践の焦点があり,人も環境も等しく重要であって,この両者の互恵的適応関係のバランスがいかに獲得されるのかに最大の関心が払われる。したがって,ソーシャルワーカーが扱う対象は人と環境の「開かれた」連鎖的交互作用であり,「人と環境の適合性」である。


■用語解説:生態学(ecology)
 19世紀中葉にヘッケル(Haeckel, E. H.)が生物学の一分野として造語。ギリシャ語のoikos(家)に由来し,生物とその環境の相互作用を扱う科学=生態学を意味する。生物(人間を含む)は環境に影響を与え、環境は生物に影響を与える。 生態学研究の主要な関心は、生物個体の分布や数に、そしてこれらがいかに環境に影響されるかにある。ここでの「環境」とは、気候や地質など非生物的な環境と生物的環境を含んでいる。

■用語解説:システム論 general systems theory
・1968年,生物学者ベルタランフィ (Bertalanffy, L. v.) によって発表され,有機体の全体性を包括的に説明した理論として位置づけられている。具体的には,@有機体の各構成要素間の相互作用・相互制御に基づく全体性の存在,A開放システムによる外的諸条件との相互作用,B構成要素間あるいは外的条件との間で生じるフィードバック・メカニズムとシステム維持機能 (ホメオスタシス),といった三つの基本概念から有機体システムの特徴を説明している。生物学にとどまらず,物理学,心理学,あるいは社会科学で扱われるいかなるシステムにも適用できる一般的特性を示しており,多くの分野でシステム分析のために活用されている。社会福祉分野では,1980年代以降,「人と状況の全体性」を捉える理論的枠組として重要な役割を果たした。


<参考リンク>
「生態学」: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%85%8B%E5%AD%A6


<こちらも学習に活用して下さい。>
■公的扶助論(生活保護制度)web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1225585731/

■社会福祉の歴史 web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1226020506/

2009/02/23(月) ソーシャルワーク論・Web講座4「ニーズとソーシャルワーク」
ソーシャルワーク論(社会福祉援助技術論)講座レジュメより
                    <関屋光泰 編集>
2−2 社会福祉サービスと社会福祉援助活動
1 福祉ニーズの多様化と社会福祉サービス
*福祉ニーズの定義と分類  P20 上段参照
・ニーズとは、必要もしくは要援護性と訳される。文脈によっては,ニード(need)と単数形が用いられる。ニーズ(ニード)の定義についてさまざまな見解があるが,三浦文夫による定義では、「何らかの基準に基づいて把握された状態が,社会的に改善・解決を必要とすると社会的に認められた場合に,その状態をニード(要援護状態)とすることができる」とされる。

*非貨幣的ニーズとは、貨幣で測定することが困難で,物品や人的サービス等の現物給付によって充足するのが適当とみなされるニーズである。多くの先進諸国と同様,わが国の社会福祉においても,経済成長と社会保障制度の確立の結果,貨幣的ニーズよりも非貨幣的ニーズへの対応に重点がおかれるようになっている。貨幣的ニーズとは、販売されていて代価を支払えば手に入るもの。三浦文夫が提唱した。

*ニーズに関する判断の主体や基準に着目して設定されたニーズの類型として,次のブラッドショー(Bradshaw, J.)による類型がよく知られている。
@規範的ニーズ(normative needs):専門家,行政官等が,「望ましい」基準との対比においてニーズがあると判断した場合。
A感得されたニーズ(felt needs):ニーズがあることを,本人が自覚している場合。
B表明されたニーズ(expressed needs):「感得されたニーズ」が,サービス利用の申請といった行動に転化した場合。
C比較ニーズ(comparative needs):サービスを利用している人と同じ特性をもちながらサービスを利用していない人がいる場合。個人レベルのほか,地域レベルで比較を行う場合がある。

*人々は所得の高低、疾病の有無、障害の有無、さらには老若男女を問わず、「人間のもつ基本的欲求は変わらない=Common Human Needs」ことを示したのはC.トール(C.Towle)である。

*全人的視点を基盤に、岡村重夫は人々が社会生活を営む上での基本的要求を、以下の七つに整理した。
@経済的安定の要求、
A職業的安定の要求、
B医療の機会に対する要求、
C家族的安定の要求、
D教育の機会への要求、
E社会的協同への要求、
F文化・娯楽の機会への要求

*マズローのヒューマン・ニーズの階層 
テキストP21下段から 参照
 マズローのニーズ(欲求)の階層とは、第1段階は生理的なニーズ、第2段階は安全と安定のニーズ、第3段階は所属と愛情のニーズ、第4段階は自尊のニーズ、第5段階は自己実現のニーズである。
◎マズローは、人間の欲求・動機を階層構造として捉え,生理的欲求,安全欲求,社会的欲求,尊敬欲求,そしてその頂点に自己実現があるとし,低次元の欲求が満たされてはじめてより高次元の欲求の満足が求められるという考え方を提示した。
前提条件は「言論の自由、自己防衛の自由、正義、公正」等とされる。

2 社会福祉供給システムと援助活動 テキストP22
◆福祉サービス供給システム
近年,福祉サービス供給や政策研究において,サービス供給の多元化である「福祉多元主義(多元化)」が進んでいる。福祉サービスを供給する主体の分類として次のようなものが挙げられる。
@公的福祉セクター(部門) 法定部門とよばれることもある
A民間福祉(民間非営利)セクター(部門)
Bインフォーマル(非公式)セクター(部門)
C民間営利(市場)セクター(部門)

◆ヒューマンニーズ・社会サービス・供給組織
*生活問題を福祉サービスなどの社会資源に結びつける役割を果たすのが二一ズである。
*先の供給主体の4部門が、それぞれが独自の機能と,各部門の共通の目標である福祉の増進を果たし,ニーズを満たす福祉サービスの供給に努めていくことを意味するのが福祉多元主義である。わが国でも1980年代なかばから福祉改革のなかで主張されるようになった。
*ニーズ・基本的欲求が、疾病や障害そのものによって、あるいは傷病や障害によって生じる社会的制約の中で、自己責任では担いきれない困難な生活課題を有する状況にある人たちがソーシャルワーク・社会福祉援助活動の対象となる。こうした人たちを対象として、ノーマライゼーションの理念を実現するために社会福祉援助活動を担う必要がある。

■用語解説:自己実現 self-realization
元々は心理学用語でクルト・ゴールドシュタインが命名。心理学において,マズローの五段階欲求説の最終段階として有名である。自己実現は,ある個人が自分の能力や可能性をあますところなく発揮し,その結果としての創造的活動,自己の成長を望む欲求をさす。また自己実現は,思想の領域でも扱われる概念であり,その包含するものは領域によって広くさまざまである。
■用語解説:顕在的ニーズ
・ニーズの把握にあたって,そのニーズがどのような性質をもっているかという観点からニーズを分類したとき,ニーズをもつ本人あるいは彼らに関連ある人々が,その状態の解決の必要性を自覚している場合のニーズをいう。ニーズは,社会資源に対応するもので,福祉サービスの供給体制が未整備の場合には,ニーズは存在していても顕在的ニーズにはならない。
■用語解説:潜在的ニーズ
・ニーズをもつ本人あるいは彼らに関連ある人々が,あるニーズの存在をまだ自覚あるいは感得(会得)していない場合のニーズをいう。しかし,その状態は,一定の目標なり基準から乖離しており,その解決が必要であると社会的にも認められた状態であるため,当事者がニーズを顕在化できるようにするためのアプローチが処遇実践家等の専門家に求められる。

<参考リンク 統計からニーズを見る>
*平成20年版 高齢社会白書(概要版)
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2008/gaiyo/20indexg.html

2009/02/22(日) ソーシャルワーク関連科目・Web講座3「社会福祉事業」
ソーシャルワーク論(旧科目名:社会福祉援助技術論)講座レジュメより
1章2節 社会福祉サービスと社会福祉援助活動
2−1 社会福祉サービス テキストP17から
・人々のニーズ(生活上の必要)を充足するために個人もしくは世帯に対して提供されるサービスのうち,政府が供給に大きく関与しているものが「社会サービス」である。国際的には,社会サービスに含まれるのは,保健・医療,対人社会サービス(社会福祉サービス),教育,住宅供給とされているが,所得保障なども社会サービスに含める場合がある。 
 対人社会サービスは,ソーシャルワークと結びついた社会福祉サービスという意味では個人や家族に対面的・個別的に援助するというところに特色があり,在宅福祉サービスであれ施設福祉サービスであれ,利用者の個別ニーズに即して総合的に援助するものである。

*古川孝順による福祉サービスを取り込んだ社会福祉と社会保障の位置関係。
 → 類型T=社会福祉と社会保障が「並列型」
   類型U=社会福祉・サービス等が社会保障に内包される「社会保障上位型」
   類型V=福祉サービスは、雇用・教育・居住・司法更生保護・保健医療などとともに、社会サービスに内包される「社会サービス型」

◆福祉サービスの社会福祉法における位置づけ
*社会福祉法3条では,福祉サービスの基本理念を,個人の尊厳の保持を旨とすることとし,その内容は利用者の健全な育成,能力に応じ自立した日常生活の支援としている。

*福祉サービスの提供の原則:「社会福祉を目的とする事業を経営する者は、その提供する多様な福祉サービスについて、利用者の意向を十分に尊重し、かつ、保健医療サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図るよう創意工夫を行いつつ、これを総合的に提供することができるようにその事業の実施に努めなければならない。」(同法5条)

*サービス自体が良質で適切なものでなければならないとし,その確保のため,78条には事業者自身による福祉サービスの質の評価に対する努力義務規定を設けている。また,サービス評価が客観的公正で利用者のサービス選択に資する情報となるよう,国に対し,第三者評価の仕組を整備し事業者の自主的・積極的なサービスにおける質の向上の取組みを支援し,促進する責務を課している。

*福祉サービスの特性は個別課題への対応と,医療・保健を含んだ総合的な生活支援活動である。福祉水準の最低基準遵守保証は行政による監査・指導でなされるが,生活の質(QOL)の向上を支える福祉サービスの質は,事業者の自主的な取組みから確保しようとしている。

・福祉サービス提供体制の責務:「国及び地方公共団体は、社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して、社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう、福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策、福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない。」(同法6条)

◆社会資源としての福祉サービス P18
・ "この法律において「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう。" (社会福祉法第2条)。それぞれの具体的な事業を列挙している。

*第一種社会福祉事業 テキストP19表1−2参照
 第一種社会福祉事業は、公共性の高い事業であって、人格の尊厳に重大な関係を持つ事業、また生活保護事業で、不当な搾取が行われるおそれがある事業ともされている。第一種社会福祉事業の経営主体は、国と地方公共団体(独立行政法人)、社会福祉法人に制限されている。

*第二種社会福祉事業 テキストP19表1−3参照
第二種社会福祉事業は、第一種事業以外の、社会福祉の増進に寄与する事業とされており、第一種に比べて利用者に及ぼす影響がそれほど大きくないために、事業の経営主体は社会福祉法では特に制限されていない。しかし、他の福祉関係法規で規制されている場合もある。第二種社会福祉事業は具体的には、生活困難者に対する居宅援助、生活相談事業、宿泊所の提供、居宅生活支援事業、在宅福祉サービス、ホームヘルプサービスなどである。

■用語解説:社会福祉法
 福祉サービスの利用者の利益の保護、地域における社会福祉の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明適切な実施の確保、社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もって社会福祉の増進に資することを目的とした法律である。社会福祉事業法(1951年制定)を改正、名称を変更して平成12年(2000)に公布。

■用語解説:サービス供給の多元化
 わが国の福祉サービスの供給には,公私のさまざまな機関が関わっており,それぞれの機関が独自の役割を担ってきたことで,現在の社会福祉システムが形成されてきた。戦前では民間社会事業が大きな役割を果たしてきたが,戦後,日本国憲法において国の責任が位置づけられ,行政による社会福祉事業の実施が法律によって規定されることになった。以後,わが国の福祉サービス供給は,国,都道府県,市町村,社会福祉法人などの公的機関,準公的機関によって担われるようになった。
 1980年代前後からベビーホテルや老人ホームなど特定分野で民間企業によるサービスが提供され,また,福祉公社などの第三セクター方式の新たな組織もサービスを提供している。近年では,当事者組織やボランティア団体の活動も活発化している。また在宅福祉サービスの展開において,新たなかたちでの供給主体の参加,つまり,住民参加型福祉サービスや,生活協同組合,農業協同組合などの福祉サービス事業,福祉公社の設立やNPOとよばれる民間非営利部門の展開,インフォーマル部門への積極的評価は,福祉多元主義の流れにそったものといえる。

<参考リンク>
*社会福祉法
http://www.houko.com/00/01/S26/045.HTM

2009/02/21(土) ソーシャルワーク関連科目・Web講座2「福祉制度とソーシャルワーク」
ソーシャルワーク論(社会福祉援助技術論)講座レジュメより 2

◆社会福祉の実体・ハード福祉とソフト福祉
 「実体としての社会福祉」とは、「目的としての社会福祉」に照らして把握される社会福祉問題の実体と、それに対する「社会福祉制度」(ハード面)と「ソーシャルワーク(社会福祉援助活動)」(ソフト面)の二つの実体からなる。この両面は車の両輪である。

*ソーシャルワークとは、目的としての社会福祉を実現する方法であり、社会福祉制度の活用と人々との生きた相互の関係を結びながら社会福祉問題の解決を目指して、変化を生みだしていく支援活動であるといえる。
*社会福祉制度のみが存在しても、社会福祉の目的を達成することは不可能である。
*社会福祉の目的を実現するためのソーシャルワークとその方法・技術を学ぶことが、この社会福祉援助技術論の使命である。

1−2 社会福祉援助活動
<ポイント>
 障害者などの地域生活支援、各種施設ケア、高齢者の在宅介護、児童自立支援、各種の相談援助などの対人福祉サービスに際して、必要な社会福祉専門技術を総称して「社会福祉援助技術」という。具体的には、社会福祉援助技術とは社会福祉学を基に、関連する学問も活用しつつ、ケースワーク(個別援助技術)、グループワーク(集団援助技術)、コミュニティワーク(地域援助技術)等の、ソーシャルワーク(社会福祉援助技術)を用いて、社会的に支援を必要とする人とその環境に働きかけることを指す。

<解説>
◆社会福祉援助活動とは
*社会福祉援助活動(ソーシャルワーク)の定義
*社会福祉援助活動(ソーシャルワーク実践)とは、それぞれの時代や地域特性といった背景を交錯させながら生じる個人と集団および、その環境間の不調和からもたらされる問題が、社会的援助を必要とするとき、その間題の解決もしくは問題を軽減するために展開され、専門性を高めてきたものである。

*具体的なソーシャルワーク実践とは、社会福祉学を基に、ケースワーク(個別援助技術)、グループワーク(集団援助技術)、コミュニティワーク(地域援助技術)等の、方法レパートリーを用いて、社会的に支援を必要とする利用者とその環境に働きかけることを指す。これら方法レパートリーは、個々に援助技術を発展させてきたものであるが、相互に関連しあうことで援助の有効性が高まる。一人のソーシャルワーカーがさまざまな場面でこれらの技術を連鎖的に用いることが必要とされる。

*社会福祉援助活動の特性 P12上段参照
@視点:利用者中心の視点
A焦点:人間と環境による固有な生活世界をとらえる生活概念、
B目的:社会参加、自己実現の支援
C手段:問題状況の改善・向上
D方法:科学的方法、利用者の問題解決能力の育成
<ソーシャルワークのフィードバック>
E運動:社会福祉サービスの改善 = フィードバック
F過程:ミクロからマクロへの循環
G特性:人間と環境への介入

■用語解説:ミクロ・メゾ・マクロ
・ソーシャルワーク実践の対象は,ミクロ(小領域),メゾ(中領域),およびマクロ(大領域)に分けられる。ミクロ領域の実践には,個人のもつ生活問題や精神保健問題への支援,家族や小集団への介入や支援などが含まれる。メゾ領域には,地域住民の組織化や支援や社会福祉機関の管理・運営などが含まれる。また,マクロ領域には,自治体の調査,計画立案,実施と評価,国の政策立案,実施,評価,社会サービスの管理・運営などが含まれる。小領域,中領域のソーシャルワーク実践に対し,組織の管理・運営や組織化,政策立案などの指向性を含んだ実践をマクロレベルの実践とよぶ。

◆補足:社会福祉援助活動の目的  P12上段参照
専門的な社会福祉援助活動の目的とは、
@すべての人の人権擁護の実現をめざして、
A歴史的・社会的実体としての社会福祉問題をとらえ、Bその予防、改善、解決を含む社会的対応を図るため、C価値・知識・技能の共通基盤をもつ専門的立場から、D当事者が主体的に問題解決に取り組む力と過程を支援するとともに、
E広く環境にはたらきかけてフォーマル・インフォーマルなサポート・ネットワークを発展させ、
F全体としての社会福祉の向上を図ることにある。それは、人と環境の問題や、現代社会の構造などが要因となって生み出される社会的問題に向けられたものであると言える。

■用語解説:インフォーマルサポート
 インフォーマルサポートとは、専門職・職業としてではなく、地域住民や家族の会などによる支援である。特徴として、専門性は低く、安定した供給は無理であるが、情緒面での支援に貢献できる点が挙げられる、とされている。
 社会福祉援助活動の担い手は専門家のみではない。今日では、社会福祉問題をかかえている当事者、社会福祉サービスの利用者、そして家族や友人、隣人、ボランティアなどが、専門の教育・訓練を受けた専門家とパートナーシップを組んで、全体として社会福祉援助活動を担っていくものと考えられるようになった。
 したがって社会福祉援助活動は、広い意味では、何らかの制度的規定の有無や社会的承認の程度による「フォーマルな活動とインフォーマルな活動」、担い手の専門性による「専門的活動と非専門的活動」などの全体を含むが、狭い意味では、専門的な社会福祉援助活動に限定してソーシャルワークといわれている。

■用語解説:ケースワーク(casework)
 ケースワークとは、困難な課題、問題をもった対象者(クライエント)が主体的に生活できるように支援、援助していく個人や家族といった個別に対する援助技術のことである。ケースワークは、クライエントの生活における諸問題(生活困難、問題解決、社会生活に関するニーズの充足等)について、改善を行うため、相談援助などを行なう。


<学習にご活用下さい。関屋光泰 編集>
■社会福祉の歴史 web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1226020506/

2009/02/20(金) ソーシャルワーク論・Web講座1「社会福祉と社会福祉援助活動」
ソーシャルワーク論(旧科目名:社会福祉援助技術論)
第1章 社会福祉における援助活動の意義
第1節 社会福祉と社会福祉援助活動 テキストP8
1−1 社会福祉の概念 テキストP8〜
<ポイント>
社会福祉は、未成年者、高齢者や障害者で生活上なんらかの支援、介助・介護を必要とする人や、貧困・生活困窮者などに対し、社会生活上の困難の解決や、地域での自立生活の支援・ノーマライゼーション、またQOL(生活の質)を維持・向上させるためのサービスを社会的に提供すること、あるいはそのための制度や設備を整備することを指す。

<解説>
@社会福祉の「目的」と「実体」 テキストP8から
*社会福祉概念の混乱、錯覚 P8上段等 参照。
 「社会福祉」とは何か。その意味は歴史的、思想的、社会的にも変化を続けてきた。また個人によっても多様な受け止め方があり、学説も分かれる。
しかし、大別すると「目的としての社会福祉」と「実体としての社会福祉」という二つの面が含まれている。

◆社会福祉の目的=生存権保障、ノーマライゼーションの実現、QOLの向上
 「目的としての社会福祉」とは、社会福祉自体を実現すべき目的としてとらえることである。それは、目的であるとともに、思想、理念、方針、あるいは目標として表現される。
 「目的としての社会福祉」は、日本国憲法第25条で国民の生存権とその保障に関する国家の義務を明記して以来、国内および世界における社会福祉思想の影響も受けながら、絶えず検討が続けられている。
中でも、「すべて人間は、生まれながらにして自由であり、尊厳と権利において平等である」とした「世界人権宣言」(1948年国際連合第3回総会で採択)は、国民と国の間での権利と責任の範囲を超えて、「すべての人間」の人権保障をめざす社会福祉の考え方の羅針盤ともなった。
 またその後の人種や性や障害などによる差別からの解放を求める様々な当事者運動の台頭とあいまって、「国際障害者年」(1983年)とそれに続く「国連・障害者の10年」(1983〜1992年)を通して世界的に広まった「ノーマライゼーション」の思想が、「生活の質quality of life、QOL」の向上とともに、今日の「目的としての社会福祉」に重要な課題を提示している。

■用語解説:生存権
◎生存権とは、日本国憲法25条第1項において、「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定し,第2項で「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定する。ここで保障される人権は,「健康で文化的な最低限度の生活」という内容をもったものであって,たんなる生物としての存在,生理学的な生命維持といったレベルをさすものでないことは明らかである。第2項は,この人権の実質的な保障のためのシステムを国家の責任で構築することを明示する。それは国家にとっては責務・義務であり、国民にとっては権利とされている。

■用語解説:ノーマライゼーション(Normalization)
ノーマライゼーションは、社会福祉分野において共生原理を明示した根本理念の一つである。ノーマライゼーションは、障害を持つ人々も持たない人々も社会的に共生をするのが人間にとって正常=ノーマルな社会であるとの考え方である。
 歴史的に障害者への施策は、社会的弱者を、社会的に保護する仕組みとして入所施設の建設から始まることが多く、障害者や他の対象者(子ども等)にとって、施設での「保護」が当事者の多様なニード・要求に応えられていない、人としての尊厳が保たれていない状況(障害者や児童の施設収容等)が往々にして起っていた。また「福祉」を名目に対象者の隔離が計られることも多かった。(「ハンセン病」施設など)また日本での福祉施策は行政措置により行われ、対象者の意志が尊重されることは稀であった。
それに対して提唱されたのが、「障害者を排除するのではなく、障害を持っていても健常者と均等に当たり前に生活できるような社会こそがノーマルな社会である」という考え方である。こうした取り組みをノーマライゼーションと呼ぶ。この概念はデンマークの社会省行政官バンク・ミケルセンにより初めて提唱され、スウェーデンのベングト・ニリエにより世界に広められた。バンク・ミケルセンは「知的障害者の生活を可能な限り通常の生活状態に近づけるようにすること」と定義し、ニーリエは1969年に論文「ノーマライゼーションの原理」において、ノーマライゼーションをすべての知的障害者の「日常生活の様式や条件を社会の普通の環境や生活方法にできるだけ近づけること」と定義した。また、ニーリエは1日・1週間・1年のノーマルなリズム,ライフサイクルにおけるノーマルな経験,ノーマルな要求や自己決定の尊重,男女両性のいる暮らし,ノーマルな経済的水準,ノーマルな住環境水準といった具体的な目標を提示している。
その後、「国際障害者年」(1983年)とそれに続く「国連・障害者の10年」(1983〜1992年)を通して世界的な福祉思想となった。今日でも社会福祉全般に重要な課題を提示している。
日本においては、1960年代、日本の重症心身障害児の教育と福祉に取り組んできた糸賀一雄が、「この子らを世の光に」といった生命と生活の価値を問い直す福祉理念を提唱した。
国立国語研究所は「等生化」という言い換え例を提案している。

■用語解説:QOL(quality of life 生活の質) 
 生活者の満足感・安定感・幸福感を規定する主観的要因や生活者の意識構造、生活環境などを表す用語である。人の欲求、ニーズが多様化・高度化し、「量」から「質」へ移行したことを背景に注目された概念である。クオリティ・オブ・ライフ(QOL)は,「生活の質」「生命の質」「生の質」などと訳されている。

<参考リンク>
世界人権宣言: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%BA%E6%A8%A9%E5%AE%A3%E8%A8%80

2009/02/19(木) ソーシャルワーク関連科目・練習問題&ワンポイント
*ソーシャルワーク関連科目 練習問題(社会福祉援助技術論、精神保健福祉援助技術論)
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題12 国際ソーシャルワーク連盟(lFSW)の"ソーシャルワークの定義"の「価値」の文章(一部)について、空欄 A、B、Cに該当する語句の組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

「ソーシャルワークは、人道主義と< A >の理想から生まれ育ってきたのであって、(略)これを尊重することに基盤を置いている。
(中略)
 人権と< B  >は、ソーシャルワークの活動に対し、これを動機づけ、正当化する根拠を与える。ソーシャルワーク専門職は、不利益を被っている人と連帯して、貧困を軽減することに努め、また、傷つきやすく抑圧されている人々を解放して< C  >を促進するよう努力する。

《組み合わせ》
   A        B           C
1 個人主義  新自由主義  ソーシャルエクスクルージョン
2 民主主義  社会正義   ソーシャルインクルージョン
3 民主主義  女性解放   ソーシャルインテグレーション
4 社会主義  社会連帯   ユニバーサルデザイン
5 社民主義  社会改良   ベーシックインカム

問題13 次のうち、「非言語コミュニケーション」に該当しないものを一つ選びなさい。
1 表情
2 声の抑揚
3 服装
4 相手との距離の取り方
5 手話による会話

問題14 日本ソーシャルワーカー協会の倫理綱領の内容と、その解説に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A ソーシャルワーカーは、同僚や他の専門職業家の貢献や業績を尊重し、自己や同僚のサービスの効果、効率について常に検討し、援助方法の改善向上に心がけなければならない。
B クライエントの自己実現の権利は、無制限に認められる。それは、法に触れる場合や、他人の権利を侵害する場合、自傷他害の場合も認められる。
C ソーシャルワーカーは、自らの所属する機関・団体の業務等を改善・向上していくために常に努力し、責任者に提言するようにしなければならない。
D ソーシャルワーカーは、同僚や他の専門職業家との間に職務遂行の方法に差異があることに気づいたときは、その相手を徹底的に糾弾し、いかなる場合も、自らの職務遂行方法と異なるものを容認してはならない。
《組み合わせ》
1  A  B
2  A  C                 
3  A  D
4  B  C
5  C  D

==========================
<解答>

問題12 正答2
Aは民主主義、Bは社会正義、Cはソーシャル・インクルージョンが該当する。

問題13 正答5
手話による会話は「言語コミュニケーション」に含まれる。

問題14 正答2
A,Cが正しい。
B× クライエントの自己実現は無制限ではない。
D× 正しくは「同僚や他の専門職業家との間に職務遂行の方法に差異があることを容認するとともに、もし相互批判の必要がある場合は、適切、妥当な方法、手段によらなければならない。」

<ポイント解説>
*コミュニケーション
 何らかの記号,情報などを媒介にして,意思や意味のある事柄を相互に伝え合い,理解しあうことである。
 対人援助の場面では,援助者は利用者が言語で表出した感情や情報だけではなく,表情や身振り,視線,態度などの非言語・ノンバーバル・コミュニケーションにも注目して相互に信頼関係を結ぶ。さらに,傾聴や共感的理解といったコミュニケーション技術を活用して,利用者自身が課題を明確化し自らの能力を最大限に活用して問題解決ができるよう働きかける。

*ノンバーバル・コミュニケーション
 ことばを直接には用いないコミュニケーション形態で,身振り,姿勢,表情などの身体動作から,空間意識や接触行動,化粧や服装などにまで及ぶ。意図的,意識的な言語コミュニケーションとは対照的に無意図的,無意識的な色彩が濃いが,対人関係において相互の感情状態を判断したり,パーソナリティや社会的地位に関する情報を交換する積極的機能も果たす。言語コミュニケーションを円滑にし相互理解を深める補助手段としても重要である。

<参考リンク>
*精神保健福祉士法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO131.html

2009/02/18(水) ソーシャルワーク関連科目・練習問題&ポイント
*ソーシャルワーク関連科目 練習問題(社会福祉援助技術論、精神保健福祉援助技術論)
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題9 次の文章の空欄 A・B・Cに該当する語句の組み合わせとして、正しいものを一つ選びなさい。
ソーシャルワーカーの行うあらゆる活動は、専門職< A  >と< B  >、専門的な知識、そして専門的な<  C  >に根差している。このうち、専門職の< A  >とは理想的な人間観・社会観を集約したものであり、< B  >とは「〜するべき」「〜してはならない」などの行動指針と規範である。
《組み合わせ》
   A    B    C  
1 道徳   価値   技術 
2  価値   倫理   技術 
3  倫理   価値   美術  
4  価値   理想   芸術 
5  価値   方針   綱領 

問題10 社会福祉援助技術の分類と技術レパートリーの組み合わせとして、次のうち誤っているものを一つ選びなさい。

1 ケースワーク……………………直接援助技術
2 グループワーク……………………間接援助技術
3 コミュニティワーク………………間接援助技術
4  スーパービジョン…………………関連援助技術
5 ケアマネジメント…………………関連援助技術

問題11 マズローのヒューマン・ニーズの階層(五段階欲求説)に関する次の文章の空欄 A,B,Cに該当する語句の組み合わせとして、正しいものを一つ選びなさい。

 第一の階層に位置するのは「生理的ニーズ」で、第二の階層は< A>ニーズ、第三の階層は<  B  >ニーズ、第四の階層は< C >ニーズで、第五の階層は「自己実現のニーズ」である。

《組み合わせ》
  A        B       C
1 経済的     安全・安定の  所属・愛情の
2 安全・安定の  所属・愛情の  自尊の
3 安全・安定の  経済的     所属・愛情の
4 安全・安定の  経済的     自尊の
5 所属・愛情の  安全・安定の  自尊の

=======================
<解答>

問題9 正答2
Aは価値、Bは倫理、Cは技術が該当する。 
<テキストP44から参照>

問題10 正答2
2 × グループワークは「間接」ではなく、「直接」援助技術に含まれる。

問題11 正答2
マズローの人間の(ヒューマン)ニーズの階層には、「経済的ニーズ」は存在しない。

*ワンポイント
 マズローMaslow, Abraham Harold (1908-70)
 アメリカの心理学者で,欲求段階説の提唱者として知られる。人間の欲求・動機を階層構造として捉え,生理的欲求,安全欲求,社会的欲求,尊敬欲求,そしてその頂点に自己実現があるとし,低次元の欲求が満たされてはじめてより高次元の欲求の満足が求められるという考え方を提示した。
 病理現象を扱う傾向の強い旧来の心理学へのアンチテーゼとして,人間の成長性・全体性・創造性を強調した心理学を提唱。彼の理論は,人間の動機づけに関する経営論にも大きな影響を及ぼした。[主著]Motivation and Personality, 1954 ; Toward a Psychology of Being, 1962.

*自己実現
 自己実現とは,ある個人が自分の能力や可能性をあますところなく発揮し,その結果としての創造的活動,自己の成長を望む欲求をさす。また自己実現は,哲学や思想の領域でも扱われる概念であり,その包含するものは領域によって広くさまざまである。


<参考リンク>
「自己実現理論」: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E7%90%86%E8%AB%96

2009/02/17(火) ソーシャルワーク論・練習問題&ポイント
*ソーシャルワーク関連科目 練習問題(旧科目名:社会福祉援助技術論)
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題7 次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 社会福祉士には、「信用失墜行為の禁止」や「秘密保持(守秘)義務」等が課せられている。
B 社会福祉士及び介護福祉士法の定めるところによれば、医療ソーシャルワーカーの業務は、社会福祉士の有資格者でなければ行なってはならない。
C 社会福祉士及び介護福祉士法の定めるところによれば、社会福祉施設において生活指導員・生活相談員の業務を行なう者は、社会福祉士の有資格者でなければならない。
D 社会福祉士及び介護福祉士法の定めるところによれば社会福祉士でない者が社会福祉士の名称を用いてはならない。このような規定を「名称独占」という。
《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ×  ×  ○  ○
2 ×  ○  ○  ×
3 ○  ×  ×  ○
4 ×  ○  ×  ○
5 ○  ×  ○  ×


問題8 次の文章の空欄 A,B,Cに該当する語句の組み合わせとして、正しいものを一つ選びなさい。

 何らかの問題を抱える個人を、様々な環境(自然環境、物的環境、社会環境、人間環境)と別々のものとして捉えるのではなく、一体的なシステムとして捉える方法を< A  >アプローチといい、そうした捉え方に基づく支援のありかたが< B >モデルである。対照的に、個人と環境を切り離して捉え、個人(主に不健全性・病理)に焦点を当てた支援のあり方を< C >モデルという。
《組み合わせ》
     A      B       C
1 アグレッシヴ  ライフ(生活)   物語
2 ナラティブ   医学     ライフ(生活)
3 エコシステム  ライフ(生活)   医学
4 エコシステム  医学        課題中心
5 ストレングス  危機介入      行動変容


=========================
<解答>

問題7 正答3
A ○ 正しい
B × 、C × 職種に関わらず、社会福祉士は「業務独占」ではない。
D ○ 正しい

問題8 正答3
Aはエコシステム(アプローチ)、Bはライフ(生活)(モデル)、Cは医学(モデル)が該当する。


<ポイント解説>
*エコシステム
 あるエリア内のすべての生物と,そこに存在するすべての物理的条件の間に発生する,物質の循環,エネルギーフロー,情報伝達といった相互作用を機能の観点から捉えたシステムである。マイヤー(Meyer, C. H.)は,ソーシャルワークに多大な影響を与えてきた生態学理論とシステム理論の統合を試みるなかで,このエコシステムの概念をソーシャルワーク実践の文脈に則してエコシステム視点として体系化した。エコシステム視点では,クライエントと環境との間にある相互関連性に焦点をあてることをワーカーに奨励している。アセスメントでは,クライエントのみならず,クライエントを取り巻く環境(家族,友人・知人,関係社会機関,地域など)からの影響をも含めた包括的なアセスメントを行うことで,クライエントがおかれている状況を理解することが求められる。

*社会福祉士の定義・義務(社会福祉士及び介護福祉士法)
(定義)第2条「この法律において「社会福祉士」とは、第28条の登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第47条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第7条及び第47条の2において「相談援助」という。)を業とする者をいう。」

<義務等>
(誠実義務)第44条の2「社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、その有する能力及び適性に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない。」
(信用失墜行為の禁止)第45条「社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。」
(秘密保持義務)第46条「社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。」
(連携)第47条「社会福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス(次項において「福祉サービス等」という。)が総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。」
(名称の使用制限)第48条「社会福祉士でない者は、社会福祉士という名称を使用してはならない。」

第50条 第46条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

<参考リンク>
「社会福祉士及び介護福祉士法」
http://www.houko.com/00/01/S62/030.HTM#s4

2009/02/16(月) ソーシャルワーク論・練習問題&ワンポイント
*ソーシャルワーク関連科目 練習問題(旧科目名:社会福祉援助技術論、精神保健福祉援助技術論)
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題5 次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 「ソーシャルワーカーの倫理綱領」は、理想的な人間観や社会観、ソーシャルワーカーのとるべき行動指針や規範を明文化したマニュアルであり、さらに、ソーシャルワーカーが持つべき知識・技術の内容を詳細に列挙し規定したものである。
B ソーシャルワーカーの役割は、障害のある人や日常生活を営むのに支障がある人の相談業務のみに限定される。
C 社会福祉援助活動は日常生活にかかわる援助を行うので、その援助関係は、家族や友人との関係のような自然な人間関係でなければならない。
D ソーシャルワーカーは専門知識として、人間の心理や行動に関する理解だけでなく、援助の場となる地域・機関・施設や家族に関する理解や、福祉の歴史や法制度・政策に関する理解など、幅広い知識を必要とする。
《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ×  ×  ×  ○
2 ×  ○  ×  ○
3 ○  ×  ○  ×
4 ×  ○  ×  ×
5 ×  ○  ○  ×


問題6 次の記述は、日本ソーシャルワーカー協会の倫理綱領における「クライエントとの関係」についての四つの項目である。このうち、正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A ソーシャルワーカーは、職務の遂行に際して、クライエントに対するサービスを最優先に考え、自己の私的な利益のために利用することがあってはならない。
B ソーシャルワーカーは、個人・家族・集団・地域・社会の文化的差異や多様性に配慮する必要は無く、これら差異あるクライエントに対しては、サービスを提供するべきではない。
C ソーシャルワーカーは、クライエントや関係者から事情を聴取する場合も、業務遂行上必要な範囲にとどめる。
D ソーシャルワーカーは、中流階層の市民としての先入観や常識、偏見に依拠しつつ、クライエントの好ましい部分だけを受容する。
《組み合わせ》
1  A  C
2  A  D
3  B  C
4  B  D
5  C  D


===========================
<解答>

問題5 正答1
A × 倫理綱領は「知識・技術の内容を詳細に列挙し規定したもの」ではない。テキストP60等参照
B × 相談業務だけでなく、社会環境に働きかける、社会サービスを調整するという役割(機能)もある。
C × 社会福祉援助活動は、専門的援助関係で行われる。テキストP53等参照
D ○ 正しい


問題6 正答1
A,C(正しい)
B× 正しい文は「文化的差異や多様性を尊重するとともに、これら差異あるクライエントに対しても、同等の熱意を持ってサービスや援助を提供しなければならない。」
D× 正しくは、「ソーシャルワーカーは、自らの先入観や偏見を排し、クライエントをあるがままに受容する。
<テキストP61から参照>


*<ポイント解説>
*社会福祉専門職の倫理
 専門職として内在化している価値を実際にクライエントとの関係において実現しようとするとき,さまざまな制約,配慮すべき点が起こってくるが,その際の行動のガイドラインとなるのが倫理である。社会福祉援助は,その職務の特性上,個人のプライバシーに属する事柄を取り扱わなければならないこと,援助過程が第三者からは見えにくいこと,クライエントは権利侵害を受けやすい立場にあること等から,ソーシャルワーカーには高い倫理性が求められる。これら専門職としての行動規範というべきものが職能団体において定められている倫理綱領であり,こうした倫理綱領を定めていることが専門職としての要件の一つでもある。
1986年に採択された日本ソーシャルワーカー協会の倫理綱領において,前文および原則に続いて,「クライエントとの関係」「機関との関係」「行政・社会との関係」「専門職としての責務」の4領域に関して,合計14項目の規範が示されている。


<参考リンク>
『ソーシャルワーカーの倫理綱領』(日本ソーシャルワーカー協会)
http://www.jasw.jp/jaswtowa/jasw-rinri-050127.htm

2009/02/15(日) 地域福祉論・練習問題&ポイント
*地域福祉論 本日の練習問題
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題3 正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 地域福祉の計画の変遷として、1950年代は各地の福祉事務所主体のコミュニティ・オーガニゼーションの地域福祉の計画が推進されていた。
B 地域福祉の計画の変遷として、1960年代には行政主体のソーシャルアクション中心の地域福祉の計画が推進された。
C 地域福祉の計画の変遷として、1970年代にはコミュニティケアを中心とする地域福祉の計画が進められた。
D 1953年には、牧賢一が著した「社会福祉協議会読本」が刊行され、地域福祉計画の位置づけがされた。
《組み合わせ》
1 AB  2 AC  3 AD  4 BD  5 CD


問題4 正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 市町村地域福祉計画の策定に当たっては,住民の意見を反映させることが強く求められている。
B 市町村地域福祉計画に盛り込むべき事項には、地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項が含まれる。
C 地域福祉の計画に関して、1980年代には地域福祉理論の統一的理解が図られたものの、住民主体の原則に立って公私協働による社会福祉の新しい体系等として地域福祉計画を位置づけた取り組みの必要性は提起されていない。
D 地域福祉計画においては、計画の実施時のみに住民の参加を必要としている点に特色があり、いわば専門家は頭脳であり、住民は実行部隊にすぎない。
《組み合わせ》
1 AB  2 AC  3 AD  4 BD  5 CD


=======================
<解答>

問題3 正答5
A × 誤り。正しくは、社会福祉協議会主体の。
B × 誤り。正しくは、コミュニティ・ディベロップメントの
C D ○ 正しい。

問題4  正答1
A ○ 正しい。
B ○ 正しい。社会福祉法第107条を参照「第107条 3.地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項」
C × 誤り。正しくは、提起された。
D × 誤り。地域福祉計画の策定には、すべての面に住民の参加を必要としている点に特色がある。専門家は側面的援助を行うものであり、いわば住民・専門家・行政担当者との合同計画である。


<ポイント解説>
*市町村地域福祉計画
 2000年に改正された社会福祉法107条に規定されるように,地域福祉の推進に関する事項を一体的に定めるために市町村が策定する計画のことであり,@地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項,A地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項,B地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項をその内容とする(2003年4月施行)。
 また,市町村地域福祉計画を策定し,または変更しようとするときは,あらかじめ,住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに,その内容を公表するものとされている。
 なお,具体的策定に向けて,平成14年1月に指針「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」(社会保障審議会福祉部会,平成14年1月)が公表されている。

*(都道府県)地域福祉支援計画
 2000年の社会福祉法への改正に伴い,都道府県は,市町村の地域福祉計画の達成を支援するために都道府県地域福祉支援計画を策定することが定められた。具体的事項は,市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項,社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保または資質の向上に関する事項,福祉サービスの適切な利用の推進および社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項である。


<参考リンク>
『市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)』
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/01/s0128-3.html

2009/02/14(土) 地域福祉論・練習問題&ワンポイント
*地域福祉論 練習問題
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題1 次の記述のうち、正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 地域福祉計画がつくられた背景や理由のひとつとして、非貨幣的ニードから貨幣的ニードへの変化が挙げられる。
B 地域福祉計画がつくられた背景や理由のひとつとして、普遍的サービスから選別的サービスへの社会福祉サービスの質的変化と拡大が挙げられる。
C 社会福祉法においては2003年4月から、市町村が地域福祉の推進に関する事項を一体的に定める市町村地域福祉計画の策定を規定した。
D 社会福祉法において地域福祉計画は、1.地域における福祉サービスの適切な利用促進、2.地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達、3.地域福祉に関する活動への住民参加の促進の3点を踏まえなければ、社会福祉法上の地域福祉計画としては認められないと規定した。
《組み合わせ》
1 AB  2 AC  3 AD  4 BD  5 CD


問題2 次の記述のうち、適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A コミュニティ・ディベロップメントとは、日常生活圏を基盤として、住民が自分達でニーズや問題を明らかにし、組織をつくり資源を開発したり獲得して、生活を具体的に改善する一連の過程が重視される方法であり、「コミュニティ全体の経済的並びに社会的進歩の状態をつくり出すことを意図する過程」(国連)ともいえる。
B コミュニティ・オーガニゼーションとは、ベネズエラで体系化された技術であり、主に地域を対象にした社会福祉の援助方法、また福祉活動における住民参加を援助する社会福祉の専門的方法である。
C コミュニティ・オーガニゼーションの代表的な定義としては、M.スチュアートの組織化説等がある。
D コミュニティケアとは、 複合的なニーズを持つ人々を、入所型の福祉施設や医療機関のなかで、他の市民と同様に自立した生活が送れるように支援しようとする考え方やそのような実践であり、ノーマライゼーションの理念に基づいて、要援護者が地域社会において、自立した地域生活を送ることを目指した地域福祉の体系であるといえる。
  ( 組み合わせ)
  A B C D
1 ○ ○ × ○
2 ○ × ○ ○
3 ○ × × ×
4 ○ ○ ○ ×
5 × ○ × ○



===========================
<解答>

問題1  正答5
A × 誤り。正しくは、貨幣的ニードから非貨幣的ニードへの変化。
B × 誤り。正しくは、選別的サービスから普遍的サービスへの…。
CとD ○ 正しい。

問題2  正答3
A ○ 正しい。
B × 誤り。正しくは、アメリカ(合衆国)で体系化された。
C × 誤り。正しくは、M.ロスの組織化説
D × 誤り。正しくは、地域社会のなかで

<ポイント解説>
*地域福祉計画
 「地域福祉計画」とは、法的には,2000年に改正され2003年4月に施行された社会福祉法107条・108条に規定される市町村地域福祉計画ならびに都道府県地域福祉支援計画をさすが,歴史的には,「地域福祉計画」がさす内容は時代ごとに変遷してきたといえる。
 以下,年代順に概略を記すと,@第1段階:「社会福祉協議会基本要項」(1962年制定)において,コミュニティワークの過程で具体的な問題解決を促進するためにたてられる計画として,A第2段階:1970年代〜80年代前半に,各地の社会福祉協議会が策定した「社会福祉協議会発展・強化計画」の名称として,B第3段階:市区町村社会福祉協議会の法制化(1983年)を契機として社会福祉協議会が策定した,自らの強化計画を含んだ自治体の福祉計画として,C第4段階:1989年に東京都地域福祉推進計画等検討委員会が提言した,三相計画に基づく区市町村の福祉計画として,D第5段階:上述した,社会福祉法に規定されている現在の使われ方としての地域福祉計画,というようにそれぞれの時代にそれぞれの意味をもって使われてきた。

2009/02/13(金) 公的扶助論―低所得者に対する支援と生活保護制度─ 練習問題
公的扶助論(旧科目名) 練習問題
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題1 正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 生活扶助の第1類費(個人単位の経費)は、性別・年齢別に分れている。
B 保護基準の中には、級地制度を採用しているものがある。
C 幼稚園教育費は,教育扶助の対象になる。
D 教育扶助の対象になるのは、義務教育の就学に必要な費用である。
(組み合わせ)
1AB  2AC  3AD  4BC  5BD


問題2 正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 専門学校や大学、及び大学院の費用は教育扶助の対象になる。
B 教育扶助は教科書のほか、給食費,通学のための交通費なども対象になっている。
C 教育扶助は原則として金銭給付であるが,学校給食費は学校長に対して交付することもできる。
D 住宅扶助は借家やアパートなどの家賃のほか.自分の家(マンション)のローンも対象になる。
(組み合わせ)
1AB  2AC  3AD  4BC  5BD



=============================
<解答>

問題1 正答5 BとDが正しい。
A × 正しくは地域別・年齢別
B ○
C × 教育扶助の対象は義務教育のみ
D ○

問題2 正答4 BとCが正しい。
A × 義務教育のみ
B ○
C ○
D × 家・マンションのローンは対象にならない。


<ポイント解説>
*生活保護の「扶助」制度
・生活保護法には8種類の扶助が規定され,必要に応じて併給もできる。それらの扶助は,生活扶助,住宅扶助,教育扶助,医療扶助,出産扶助,生業扶助,葬祭扶助,そして介護保険実施にあわせて2001年4月に創設された介護扶助である。

*生活扶助
 困窮のため最低限度の生活を維持することができない者に対して,衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの等を,原則として居宅で金銭給付する。
 経常的最低生活費と臨時的最低生活費(一時扶助費)とに分けられ,前者はさらに基準生活費(個人ベースの第一類と世帯ベースの第二類)と各種加算とに分けられる。
 生活扶助基準は,現在では「水準均衡方式」で算定しており,厚生労働大臣が毎年改定を行っている。

*住宅扶助
 住居費を負担すると衣食の面で最低限度の生活を維持できない者に,@家賃・地代,A家屋補修等(新築は不可)に必要な費用の不足分を,地域別の基準の範囲で,原則として金銭給付する。宿所提供施設の利用・委託のかたちで現物給付することも認められる。

*教育扶助
 教育費を負担すると最低限度の生活を維持できない者に,@教科書等の学用品,A通学用品,B学校給食等の費用の不足分を,原則として金銭給付する。ただし,教育扶助は義務教育段階までが対象である。


<こちらも学習に活用して下さい。>
*公的扶助論―低所得者に対する支援と生活保護制度─ web講座(関屋光泰が編集)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1225585731/

2009/02/12(木) 公的扶助論(旧科目名)・練習問題&ポイント
公的扶助論(旧科目名)・練習問題
<解答は下方に表示されます。>

問題1 正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合その組み合わせとして正しいものを一つ選べ。

A 生活保護法は生活に困窮する国民は健康で文化的な最低生活が保障されることを恩恵として認めている。
B 生活保護法第2条には「国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護を,無差別平等に受けることができる」とあるが、生活困窮に陥った原因による差別は許されている。
C 生活保護法第3条において「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と規定されている。
D 公的扶助は、最低生活需要に対する補足性、補完的性格を有する給付である。
(組み合わせ)
   A   B    C   D
1  ×   ○   ×   ×
2  ×   ○   ○   ○
3  ○   ○   ×   ×
4  ○   ×   ○   ○
5  ×   ×   ○   ○


問題2 正しいものの組み合わせを一つ選べ。

A 生活保護法第4条は,「保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用しなくても行われる。」と規定している。
B 生活に困窮する国民の最低生活保障を国がその恩恵・慈善において行う原理が生活保護法に規定されている。(国家責任による最低生活保障の原理)
C 公的扶助の財源は国や地方自治体の一般歳入によってまかなわれ、本人等の拠出はなく全額公費負担によって給付が行われる。
D 生活保護法は、日本国憲法第9条に規定する生存権保障の理念を具現するための制度である。
(組み合わせ)
1AB   2AC   3AD   4BC    5BD


===========================

<解答>

問題1  正答2  CとDが誤り
A × 健康で文化的な最低生活が保障されることを権利として認めている。
B × 無差別平等
C ○
D ○

問題2  正答2  AとCが正しい
A ×「資産・能力の活用」とは、保護を受けるためには、資産・能力を最低生活の維持のために活用しなければならない。
B × 国の責任
C ○
D × 正しくは、「日本国憲法第25条に規定する生存権保障の理念」


<ポイント解説>
*生存権
 日本国憲法25条第1項において、「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定し,第2項で「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定する。
 この条項を一般的には「生存権」規定とよんでいる。ここで保障される人権は,「健康で文化的な最低限度の生活」という内容をもったものであって,たんなる生物としての存在,生理学的な生命維持といったレベルをさすものではない。
 さらに第2項は,この人権の実質的な保障のためのシステムを国家の責任で構築することを明示する。具体的な制度の定立によって、全ての国民が人間らしい生活を送ることができるよう求めている。


<こちらも学習に活用して下さい。>
■公的扶助論(生活保護制度)web講座(関屋光泰編集)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1225585731/

2009/02/09(月) ソーシャルワーク論練習問題&ワンポイント
*ソーシャルワーク論・練習問題(旧科目名:社会福祉援助技術論)
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。

問題3 次の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。

1 「エンパワメント」とは、主体的な生活を諦めた無力状態に陥った人々が、再び本来持っている力を取り戻し、自らの問題解決の能力を強めていこうとする援助・視点である。
2 「ストレングス視点」とは、人間としての良好な状態が続いていることを指し、人権の尊重と自己実現として解説されている。
3 生態学(エコロジー)を基軸にソーシャルワーク論を展開したものが「医学モデル」〈ジャーメイン、ギッターマンによる〉である。
4 「ライフ(生活)モデル」は、人々の成長と発達を最大限にし、人格・人間性を改善すれば良好な適合状態が確保されるという観点から、人間の不健全性だけに関心をもつ。
5 「医学モデル」においては、援助者は利用者の生活を指導するのではなく支援するのであり、利用者は受動的存在ではなく、能動的・応答的存在としてパートナーとしてみられる。


問題4 次の記述は、社会福祉法(第3条)に規定された福祉サービスの基本的理念であるが、空欄A、B,C,に該当する語句の組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

 福祉サービスは、個人の<  A  >の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ<  B  >した日常生活を営むことができるように<  C  >するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。」

<組み合わせ>
  A     B     C
1 権威   自立   指導
2 尊厳   自律   指導
3 威厳   依存   支援
4 尊厳   自立   支援
5 権威   自律   指示


==============
<解答>

問題3 正答1 
正しいのは1である。
2 × これはウェルビーイングの説明である。
3 × これは「ライフ(生活)モデル」である。
4 × 正しくは、環境を改善すれば良好な適合状態が確保されるという観点から、人間の健全性にも関心をもつ。
5 × 正しくは、「ライフ(生活)モデルにおいては、」
テキストP24参照

問題4 正答4
Aは尊厳、Bは自立、Cは支援が7、該当する。


*ポイント解説
*エンパワーメント
 心理学など、さまざまな隣接分野でも用いられている。
 ソーシャルワークにおいて、一致した定義はいまだないが,おおむね,個人,家族,集団あるいはコミュニティが,その個人的,対人関係的,社会経済的および政治的な影響力(パワー)を強め,それによってその取り巻く環境の改善を実現させていくこと,あるいはそれらが実現された状態を意味している。パワーの脆弱化,無力化をディスエンパワーメント(disempowerment),パワーの欠如状態をパワーレスネス(powerlessness)とそれぞれよんでいる。
 ソーシャルワークにおいてこの概念を初めて取り上げたのは,ソロモン(Solomon, B.)の著書『黒人のエンパワーメント』(1976)であるといわれている。そこでは,アフリカ系アメリカ人がイギリス系アメリカ人に比較してパワーの欠如した状態にあること,それがスティグマによる否定的評価と社会的な抑圧によるものであり,その結果として,社会的役割を遂行するうえで有用な資源を活用できない状態に陥っているという図式が提示された。こうした状態にあるクライエントに対して,パワーの回復を図っていくソーシャルワークのプロセスに「エンパワーメント」という名称が与えられたのである。それ以降,1980年代から取り上げられるようになり,90年代に入ると,デュボアとマイリー(Dubois, B. & Miley, K.),グティエーレス(Gutierrez, L.),リー(Lee, J.)などによっておのおののソーシャルワーク理論の中核に位置づけられるようになる。さらに,人種・民族上の少数者にとどまらず,さまざまなマイノリティの人々,例えば,高齢者,障害者,同性愛者,貧困者層などに対するソーシャルワークの取組みにこの概念が適用されていくようになった。このように,エンパワーメントがソーシャルワークに浸透していった背景には,社会経済的な不公平にソーシャルワークが有効に対応できていないという批判と,その裏返しとしての伝統的な医学モデルからの脱却という課題の存在があった。エンパワーメント概念は,生態学的視点にそうことによって,医学モデルに代わる新たな視点を打ち立てるのに貢献したといえる。
 この概念に基づくソーシャルワーク実践は,すべての人間はどのような悪い状況にあってもそれを改善していける能力とパワーを有しているという基本的人間観にたち,クライエントとワーカーとのパートナーシップを通して,クライエント自身がエンパワーメントしていくことが目標になる。加えて,以下のような特徴があることが指摘されている。@制度や社会構造との関係において人はパワーが欠如した状態におかれ,その結果,社会資源をコントロールしたり,獲得することが困難になる,Aクライエント= ワーカー関係におけるパワーの不平等性はクライエントのエンパワーメントを阻害する恐れがあるために,両者がパワーを共有しあえる協働関係の樹立が望まれる,Bクライエントとそれを取り巻く環境の強さ(strength)が強調される,Cワーカーの介入は,ミクロからマクロにまたがるジェネリックなアプローチが基本とされる,Dパワーの欠如状態を発生せしめた原因は主にマクロ的なものであるという認識から,特に資源配置上の公平性確保といった政治的パワー回復が重視される,E問題解決の前提として,クライエントが変化に向けての責任をもつべきであるという視点にたつ。

<こちらも学習にご活用下さい。>
■社会福祉の歴史 web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1226020506/

2009/02/08(日) ソーシャルワーク論・練習問題&ポイント
*ソーシャルワーク関連科目 練習問題(旧科目名:社会福祉援助技術論、精神保健福祉援助技術論)
 解答は下方に表示されます。ご注意ください。
問題1 専門的な援助関係に関する次の記述のうち、適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 専門的な援助関係においては、援助者は自分の感情を一切表出してはならない。
B ソーシャルワーカーはクライエントと専門的な援助関係を築くために、クライエントが言葉で表現したことだけを重視しなければならない。
C 専門的な援助関係には自己覚知が必要とされるが、この自己覚知とは、クライエントにクライエント自身の価値観や言動の傾向を自覚してもらうことである。
D 家族・友人関係が「人間関係に基づくパートナー」であるのにたいし、専門的援助関係は「契約関係に基づくパートナー」といえる。

《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ○  ×  ○  ×
2 ×  ○  ×  ○
3 ○  ○  ×  ○
4 ×  ×  ×  ○
5 ×  ○  ○  ×


問題2 次の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。

1 「パーソナリティ」とは、個人間の差異を説明する概念であり,一貫性と統合性をもつ科学的に観察可能な行動特性をいう。
2 「非貨幣的ニーズ」とは、貨幣で測定することが困難で,物品や人的サービス等の現物給付によって充足するのが適当とみなされるニーズである。
3 クオリティ・オブ・ライフ(QOL)は,「生活の質」「生命の質」「生の質」などと訳されている。
4 「コンピテンス(コンピタンス)」とは、もとはギリシャ語で,忌避や排除の対象者としての奴隷や犯罪者の身体に刻み込まれた烙印を意味する。
5 スウェーデンのニーリエは、ノーマライゼーションをすべての知的障害者の「日常生活の様式や条件を社会の普通の環境や生活方法にできるだけ近づけること」と定義している。



===========================
<解答>

問題1 正答4
A × 援助者は自らの感情をコントロールしなければならない(統制された情緒関与)が、それは「自分の感情を一切表出してはならない」ということではない。感情のコントロールが必要である。
B × 言語コミュニケーションだけでなく、非言語コミュニケーションも重視しなければならない。
C ×「自己覚知」とは、援助者が援助者自身の価値観や言動の傾向を自覚することをいう。
D 正しい

問題2 正答4
4 × 正しくは、スティグマは・・・。
*コンピタンスとは、環境と個人が相互にやりとりをする過程で,自分自身が周囲に与える影響を肯定的な感情で捉えることができれば,その個人は自己肯定感に基づいた一定の感覚を心のなかに確立することができる。そして,その内的な感覚をよりどころとして,必要な支援を自ら探したり受け入れたりする能力が開花していく。この能力をコンピタンスという。

<ポイント解説>
*ノーマライゼーション
 デンマークで1950年代前半に設立された知的障害者の親の会での議論を踏まえて,1959年に制定された知的障害者法において,行政官バンク- ミケルセンが「知的障害者の生活を可能な限り通常の生活状態に近づけるようにすること」と定義づけたことに始まる。その後,1967年にスウェーデンで制定された知的障害者援護法にもノーマライゼーションの理念が盛り込まれ,その制定に尽力したニーリエが1969年に論文「ノーマライゼーションの原理」を発表するに至って,世界各国の関係者に広く知られるようになった。ニーリエは,ノーマライゼーションをすべての知的障害者の「日常生活の様式や条件を社会の普通の環境や生活方法にできるだけ近づけること」と定義したうえで,1日・1週間・1年のノーマルなリズム,ライフサイクルにおけるノーマルな経験,ノーマルな要求や自己決定の尊重,男女両性のいる暮らし,ノーマルな経済的水準,ノーマルな住環境水準といった具体的な目標を提示している。1970年代以降になると,71年の「知的障害者の権利宣言」,75年の「障害者権利宣言」,80年の「国際障害者年行動計画」などでも基本的理念の一つと位置づけられ,国際的にも普及していくことになるが,この理念を北米に導入したヴォルフェンスベルガーは,1972年に「可能な限り文化的に通常である身体的な行動や特徴を維持したり,確立するために可能な限り文化的に通常となっている手段を利用すること」と定義し,「通常」ということの意味するところが文化的な違いを伴うことにも注意を促している。
 日本では,1970年代の後半より紹介され始め,81年の国際障害者年に刊行された『厚生白書』でも取り上げられて,80年代を通じて急速に定着していくことになる。だが,学術的な用語というより「ごく普通の,あたり前の生活を実現する」などといった日常語として,障害者福祉分野に限らず社会福祉分野全般でスローガン的に用いられる傾向が強い。
 普及に伴って概念規定が曖昧になるのは世界的な傾向であり,そのため,先述のヴォルフェンスベルガーは,1980年代よりノーマライゼーションに代えて,ソーシャルロール・バロリゼーションを実践原理として提唱している。今日では,たしかにその意味するところは多様になっているが,少なくとも,社会福祉サービスの利用者も一般市民と同様に地域社会での生活を共に送ることがノーマルであるという基本線は守られており,そこから隔離収容や分離処遇とも訳されるセグリゲーションに対して異議を唱えるという点で,コミュニティ・ケアや脱施設化といった考え方とも近接している。また,同一地域や環境での共生を求めるインテグレーション,障害児教育におけるメインストリーミングやインクルージョンといった理念などとも,アンチ・セグリゲーションを志向する点で共通性を有する。

2009/02/07(土) 社会福祉原論(旧科目名)・練習問題
*解答は画面下方に表示されますので、ご注意下さい。

問題1 社会福祉援助技術に関する次の記述のうち,正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 直接援助技術とは,個別援助技術(ケースワーク),集団援助技術(グループワーク),地域援助技術(コミュニティーワーク)の3種類で構成される。
B 個別援助技術(ケースワーク)での援助原則としてよく知られているバイステック(Biestek,F.)の7原則とは,個別化,意図的な感情表出,統制された情緒関与,受容,非審判的態度,自己決定,秘密保持である。
C 地域援助技術は個人,家族,各種の住民組織などが相互にかかわりをもつシステムとしての地域社会を対象とする技法である。
D 社会福祉援助技術には,直接援助技術と間接援助技術のほかに,社会福祉調査法や社会福祉運営管理といった関連援助技術がある。
(組み合わせ)
1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD


問題2 法令による福祉専門職の配置に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。

1 福祉事務所の現業員は,社会福祉主事でなければならない。
2 福祉事務所には,指導監督を行う職員が配置されなければならない。
3 保健所は,精神保健福祉士が配置されなければならない。
4 児童相談所には,児童福祉司が配置されなければならない。
5 身体障害者更生相談所には,身体障害者福祉司が配置されなければならない。



=============================
<解答>

問題1 答 3
A × 正しくは、地域援助技術は間接援助技術
D × 社会福祉調査法、社会福祉運営管理 は 間接援助技術

問題2 答3
3 ×

<ポイント解説>
*問題2の関連法規
社会福祉法 第15条第1項
 福祉に関する事務所には、長及び少なくとも次の所員を置かなければならない。ただし、所の長が、その職務の遂行に支障が
ない場合において、自ら現業事務の指揮監督を行うときは、第1号の所員を置くことを要しない。
@指揮監督を行う所員A現業を行う所員B事務を行う所員
 (中略)
6  第1項第1号及び第2号の所員は、社会福祉主事でなければならない。
 
児童福祉法 
第11条  都道府県は、児童相談所に、事務吏員又は技術吏員であつて次の各号のいずれかに該当するものの中から任用した児童の福祉に関する事務をつかさどるもの(以下「児童福祉司」という。)を置かなければならない。

身体障害者福祉法
第11条の2第1項
 都道府県は、その設置する身体障害者更生相談所に、身体障害者福祉司を置かなければならない。

地域保健法
第六条  保健所は、次に掲げる事項につき、企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行う。
 一  地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項
 二  人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
 三  栄養の改善及び食品衛生に関する事項
 四  住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項
 五  医事及び薬事に関する事項
 六  保健師に関する事項
 七  公共医療事業の向上及び増進に関する事項
 八  母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
 九  歯科保健に関する事項
 十  精神保健に関する事項
 十一  治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項
 十二  エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
 十三  衛生上の試験及び検査に関する事項
 十四  その他地域住民の健康の保持及び増進に関する事項

第七条  保健所は、前条に定めるもののほか、地域住民の健康の保持及び増進を図るため必要があるときは、次に掲げる
事業を行うことができる。
 一  所管区域に係る地域保健に関する情報を収集し、整理し、及び活用すること。
 二  所管区域に係る地域保健に関する調査及び研究を行うこと。
 三  歯科疾患その他厚生労働大臣の指定する疾病の治療を行うこと。
 四  試験及び検査を行い、並びに医師、歯科医師、薬剤師その他の者に試験及び検査に関する施設を利用させること。
第十条  保健所に、政令の定めるところにより、所長その他所要の職員を置く。

2009/02/06(金) 社会福祉原論・練習問題&ポイント
<解答は画面下方に表示されますので、ご注意下さい。>

問題1
 共同募金に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 地域福祉推進のための財源となる。
2 市町村を単位にして実施される。
3 寄付金の3分の2は,社会福祉事業経営者に配分される。
4 配分先は,都道府県知事が定める。
5 配分額は,都填府県杜会福祉協議会が定める。


===========================
<解答>

問題1 答1
2 × 市町村 → 正しくは、都道府県を単位に実施
3 × 正しくは、寄付金の配分は、配分委員会の承認を得なければならない。
4 × 国及び地方公共団体は、寄附金の配分について干渉してはならない。
5 ×

*ポイント解説:共同募金
 共同募金
 1947年から開始された「赤い羽根」をシンボルとした募金活動である。国民の助け合いの精神を基調とし,民間社会福祉活動の資金援助を目的としている。制度的には,社会福祉法112条〜124条で規定されており,第一種社会福祉事業である。共同募金会が都道府県を区域として毎年1回寄付金を募集し,区域内での社会福祉を目的とする事業を経営するものに寄付金を配分している。

(共同募金)
社会福祉法 第110条
 この法律において「共同募金」とは、都道府県の区域を単位として、毎年1回、厚生大臣の定める期間内に限つてあまねく行う寄附金の募集であつて、その区域内における地域福祉の推進を図るため、その寄附金をその区域内において社会福祉事業更生保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営する者(国及び地方公共団体を除く。以下この節において同じ。)に配分することを目的とするものをいう。

(共同募金の配分)
社会福祉法 第115条第1項
 共同基金は、社会福祉を目的とする事業を経営する者以外の者に配分してはならない。
第2項
 共同募金会は、寄附金の配分を行うに当たつては、配分委員会の承認を得なければならない。
第3項
 共同募金会は、第110条に規定する期間が満了した日の属する会計年度の翌年度の末日までに、その寄附金を配分しなければならない。
第4項
 国及び地方公共団体は、寄附金の配分について干渉してはならない。

2009/02/05(木) 社会福祉原論(旧科目名)・練習問題&ポイント
*社会福祉原論(旧科目名)の練習問題です。解答は画面下方に表示されますので、ご注意下さい。>

問題1 我が国の社会福祉に関する次の組み合わせのうち,誤っているものを一つ選びなさい。

1 石井十次 ――― 岡山孤児院
2 生江孝之 ――― 『社会事業綱要』
3 井上友一 ――― 済世顧問制度
4 石井亮一 ――― 滝乃川学園
5 横山源之助 ――― 『日本之下層社会』


問題2 社会福祉法に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい

1 昭和26年に社会福祉事業法として制定され,平成12年に大幅な改正がなされ社会福祉法となった。
2 社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定めている。
3 社会福祉事業を第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業に区分している。
4 特別養護老人ホームを第一種社会福祉事業としている。
5 第一種社会福祉事業の経営主体を社会福祉法人に限定している。



===========================
<解答>

問題1 答3
 済世顧問制度=笠井信一(1864〜1929)
 1917年、岡山県知事笠井信一により創設された、篤志家による貧民救済活動である。
 井上友一(1871〜1919)は、内務官僚として感化救済事業の推進者。

問題2 答 5
社会福祉法(経営主体)
第60条  社会福祉事業のうち、第1種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則とする。

<ポイント解説>
*社会福祉法人
 社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として,社会福祉法に基づき設立された法人である(社会福祉法22条)。
 社会福祉法人には、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに,その提供する福祉サービスの質の向上や事業経営の透明性の確保を図らなければならないという「経営の原則」とともに,社会福祉事業を行うために必要な資産を備えているという要件も課せられている(同法24条・25条)。
 なお、社会福祉法人の設立に際しては,社会福祉事業の種類や役員,資産などについて規定した定款を定めて所轄庁(都道府県知事等)の認可を受けなければならない(同法31条)。一方、国・地方公共団体を除き,所轄庁から認可を受けた法人以外に第一種社会福祉事業への参入を認めず(同法60条),「公の支配」(日本国憲法89条)により,社会福祉法人に対してすべての部面で厳しい行政監督が可能とされる一方(社会福祉法58条2項・3項),社会福祉法人の行う事業に対する公費助成が容易となっている(同法58条1項)。


<こちらも学習に活用して下さい。>
■公的扶助論(生活保護制度)web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1225585731/

■社会福祉の歴史 web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1226020506/

2009/02/04(水) 社会福祉原論(旧科目名)練習問題
<解答は画面下方に表示されますので、ご注意下さい。>

問題1 社会福祉法に規定される社会福祉事業の分類と具体的なサービスの組み合わせとして、次のうち誤っているものを一つ選びなさい。

1 保育所を経営する事業 ……… 第二種社会福祉事業
2 老人短期入所事業 ‥‥… 第一種社会福祉事業
3 軽費老人ホームを経営する事業 ……… 第一種社会福祉事業
4 介助犬訓練事業 ……… 第二種社会福祉事業
5 母子生活支援施設を経営する事業 ……… 第一種社会福祉事業


問題2 「社会福祉士及び介護福祉士法」の規定に関する次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 社会福祉士でない者が社会福祉士の名称を用いてはならない。このような規定を「名称独占」という。
B 医療ソーシャルワーカーは社会福祉士の有資格者でなければならない。
C 社会福祉施設で生活指導員・生活相談員として勤務する者は社会福祉士の有資格者でなければならない。
D 社会福祉士には、「信用失墜行為の禁止」や「秘密保持(守秘)義務」等が課せられている。
《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ○  ○  ×  ×
2 ×  ○  ○  ×
3 ×  ×  ×  ○
4 ○  ×  ×  ○
5 ○  ×  ○  ○


=========================

<解答>
問題1 答2 
2 × 誤り 「短期入所事業」は第二種社会福祉事業に含まれる。
 福祉士養成講座編集委員会「新版 社会福祉士養成講座 社会福祉原論 第2版」2003 中央法規出版 P94参照。

問題2 答4
A ○ 正しい
B × 、C × 職種に関わらず、社会福祉士は「業務独占」ではない。
D ○ 正しい
 前掲テキストP256等を参照。

<ポイント解説>
*社会福祉士
 1987年の「社会福祉士及び介護福祉士法」により創設された社会福祉専門職の国家資格である。業務の適正を図り,もって社会福祉の増進に寄与することを目的」としている。
 この法律において社会福祉士は,「社会福祉士の登録」を受け,「社会福祉士の名称を用いて」,「専門的知識及び技術をもって,身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ,助言,指導その他の援助を行うことを業とする者」と定義されている。
 資格取得は,福祉系大学や社会福祉士指定養成施設の卒業し、国家試験の受験資格を得た後,社会福祉士国家試験に合格し,指定登録機関に所定の登録手続を行うことによりなされる。
 社会福祉士には,その業務の性格上,信用失墜行為の禁止,秘密保持義務,医療関係者等との連携が義務づけられており,高い職業倫理が要求されている。


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2009/02/03(火) 社会福祉原論(旧科目名)の練習問題・ワンポイント
<解答は画面下方に表示されますので、ご注意下さい。>
問題1 次の記述のうち、適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A QOL(quality of life)とは、生活者の満足感・安定感・幸福感を規定する主観的要因や生活者の意識構造、生活環境などを表す用語である。
B 利用者とは個人・家族・組織集団の構成員・地域住民等の当事者を意味し、個別援助技術、集団援助技術、地域援助技術等の対象となる。
C エンパワメントとは、諦めや無力状態(パワーレス)に陥った人々が、自分の無力さや現実を直視して、自らの問題の解決は専門職に全て任せていけるよう、そのサービスを活用する能力のみを強めていこうとする援助である。
D 1929(昭和4)年に、救護法が制定され、同じ年に実施された。 
《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ×  ×  ○  ○
2 ○  ○  ×  ○
3 ○  ○  ×  ×
4 ×  ○  ×  ○
5 ○  ○  ○  ×


問題2 次の文章の空欄A、B、Cに該当する語句の組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
 日本の社会福祉のあり方について考えるうえで、日本国憲法に定められた< A >保障の思想は、最も基本的な拠りどころである。憲法<  B  >第1項では、「すべて<   C   >で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定している。
《組み合わせ》
 A        B     C
1 生存権     第25条  国民は健康
2 財産権     第9条   国民は幸福
3 プライバシー権 第13条  国民は富裕
4 労働三権    第17条  国民は劣悪
5 日照権     第62条  国民は多忙


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<解答>
問題1 答え3 AとBが正しい。
C 正しくは、「エンパワメントとは、主体的な生活を諦めた無力状態に陥った人々が、再び本来持っている力を取り戻し、自らの問題解決の能力を強めていこうとする援助・視点である。」となる。
D 正しくは、1929(昭和4)年に、救護法が制定され、実施は昭和7年である。 

問題2 答え1
Aは生存権、 Bは第25条  Cは国民は健康

<ポイント解説>
*社会福祉の範囲 
・社会福祉の類型と基準(社会福祉法)
  "この法律において「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう。" (社会福祉法第2条)。それぞれに該当する具体的な事業を列挙している。

*第一種社会福祉事業
 第一種社会福祉事業は、公共性の高い事業であって、人格の尊厳に重大な関係を持つ事業、また生活保護事業で、不当な搾取が行われるおそれがある事業ともされている。第一種社会福祉事業の経営主体は、国と地方公共団体(独立行政法人)、社会福祉法人に制限されている。

*第二種社会福祉事業
 第二種社会福祉事業は、第一種事業以外の、社会福祉の増進に寄与する事業とされており、第一種に比べて利用者に及ぼす影響がそれほど大きくないために、事業の経営主体は社会福祉法では特に制限されていない。しかし、他の福祉関係法規で規制されている場合もある。第二種社会福祉事業は具体的には、生活困難者に対する居宅援助、生活相談事業、宿泊所の提供、居宅生活支援事業、在宅福祉サービス、ホームヘルプサービスなどである。

■解説:社会福祉法
 福祉サービスの利用者の利益の保護、地域における社会福祉の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明適切な実施の確保、社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もって社会福祉の増進に資することを目的とした法律である。社会福祉事業法(1951年制定)を改正、名称を変更して平成12年(2000)に公布。

2009/02/02(月) 社会福祉原論(旧科目名)の練習問題
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問題1 次の記述のうち、適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 社会資源とはソーシャル・ニーズを充足するために動員される施設・設備、資金や物資、集団や個人の有する知識や技能等を総称していう。
B 高度成長期から今日に至るまで、国民全体として、非貨幣的ニーズが縮小し、貨幣的ニーズが増大したのは、雇用や所得保障政策が充実してきた一方で、都市化や核家族化などの変化による。
C 社会福祉法において、第二種社会福祉事業である児童、老人、障害者の居宅介護サービスの経営主体は、国・地方公共団体および社会福祉法人に限定されている。
D 社会資源とは、社会福祉法に示される第一種・第二種社会福祉事業だけでなく、家族や友人、ボランティアなども含む概念である。  《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ○  ○  ×  ○
2 ×  ○  ○  ×
3 ○  ×  ×  ○
4 ×  ○  ×  ○
5 ○  ×  ○  ○


問題2 次の文章の空欄 A・Bに該当する語句の組み合わせとして、正しいものを一つ選びなさい。
 古代< A >から、明治維新以降の公的救貧制度制定にいたる日本の救済制度は、< B >の救済制度の影響を受けていた。< B >の救済制度とは、家族制度と地域制度を基盤に,儒教や仏教の思想が背景にある。
《組み合わせ》
   A    B
1 律令制度    中国 
2  幕府制度   インド 
3  五人組制度  ロシア
4  備荒制度   カナダ
5  下賜制度   シンガポール



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<解答>

問題1 答3  AとDは正しい。
Bは貨幣・非貨幣ニーズが逆である。 正しくは、高度成長期から今日に至るまで、国民全体として、貨幣的ニーズが縮小し、非貨幣的ニーズが増大したのは、雇用や所得保障政策が充実してきた一方で、都市化や核家族化などの変化による。
Cは、第二種社会福祉事業は経営主体を限定されない(同法では)。
第一種社会福祉事業の経営主体は、国・地方公共団体および社会福祉法人に限定されている。

問題2  答え1
Aは律令制度、Bは中国

<ポイント解説>
*ニーズ
 必要もしくは要援護性と訳され、ニードと単数形が用いられることもある。ニーズの定義については,さまざまな見解があるが,三浦文夫による次の定義が最も代表的なものである。「何らかの基準に基づいて把握された状態が,社会的に改善・解決を必要とすると社会的に認められた場合に,その状態をニード(要援護状態)とすることができる」。
 このように、ニーズの概念は,ある財を購入できる資力を有していることを前提にしないが,「改善・解決が必要である」という社会的な判断が前提になる。すなわち,ある人がある特定の福祉サービスを必要としていても(つまりニーズを有していても),そのサービスを購入できる資力がなければサービスを購入できないので,その場合には需要は成立しない。一方,何らかの奢侈品に対する需要がいくら多くても,通常,それに対するニーズが存在するとはみなされない。
 ニーズ概念のこのような性格を踏まえつつ,ニーズに関する判断の主体や基準に着目して設定されたニーズの類型として,次のブラッドショー(Bradshaw, J.)による類型がよく知られている。@規範的ニーズ(normative needs):専門家,行政官,社会科学者が,「望ましい」基準との対比においてニーズがあると判断した場合。A感得されたニーズ(felt needs):ニーズがあることを,本人が自覚している場合。B表明されたニーズ(expressed needs):「感得されたニーズ」が,サービス利用の申請といった行動に転化した場合。C比較ニーズ(comparative needs):サービスを利用している人と同じ特性をもちながらサービスを利用していない人がいる場合。個人レベルのほか,地域レベルで比較を行う場合がある。
 政策立案や援助実践において重要なことは,具体的にニーズをどのように正確に把握するかという点にある。政策立案や援助実践の場においても,ニーズの把握方法の改善のためのさまざまな努力が行われている。

2009/02/01(日) 社会福祉原論(旧科目名)練習問題
<練習問題です。解答は画面下方に表示されますので、ご注意下さい。>
問題1 次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A フォーマルなセクターとは、家族成員、親戚、友人、同僚、近隣住民、ボランティア、当事者組織、相互扶助団体等が挙げられる。
B インフォーマルなセクターは、柔軟な対応が可能であるが、反面、専門性は低く、感情・関係性により提供されるサービス内容等が異なるときもある。
C 精神保健福祉士は、1997年の「精神保健福祉士法」に基づく,精神科ソーシャルワーカー(PSW)の国家資格である。
D 第一種社会福祉事業である児童、老人、障害者の居宅介護サービスの経営主体は、国・地方公共団体および社会福祉法人に限定されている。
《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ○  ×  ○  ×
2 ×  ○  ×  ○
3 ○  ○  ×  ○
4 ×  ×  ×  ○
5 ×  ○  ○  ×


問題2 次の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
1 「パーソナリティ」とは、個人間の差異を説明する概念であり,一貫性と統合性をもつ科学的に観察可能な行動特性をいう。
2 クオリティ・オブ・ライフ(QOL)は,「生活の質」「生命の質」「生の質」などと訳されている。
3 「スティグマ」とは、もとはギリシャ語で,忌避や排除の対象者としての奴隷や犯罪者の身体に刻み込まれた烙印を意味する。
4 スウェーデンのニーリエは、ノーマライゼーションをすべての知的障害者の「日常生活の様式や条件を社会の普通の環境や生活方法にできるだけ近づけること」と定義している。
5 福祉六法とは社会福祉に関する法律(6つ)である、「生活保護法」・「児童福祉法」・「母子及び寡婦福祉法」・「身体障害者福祉法」・「知的障害者福祉法」・「老人福祉法」「介護保険法」「社会福祉法」の総称である。


問題3 次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 現在の社会福祉サービス供給主体は、多元化の傾向がみられる。
B 社会保障制度審議会は、社会保障を「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民に健やかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行うもの」と定義している(1993年)。
C 世界的に、「社会保障」という言葉の意味するところ、つまり社会保障の定義、制度の範囲・内容・対象者、その給付水準は、全ての国家や地域において共通である。
D 日本国憲法第25条第1項は「すべての人間は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定している。
《組み合わせ》
  A  B  C  D
1 ×  ×  ×  ○
2 ○  ○  ×  ×
3 ○  ×  ○  ×
4 ×  ○  ×  ×
5 ×  ○  ○  ×


===========================

<解答>
問題1  答5  BとCが正しい。
正しくは、Aは「インフォーマルセクター」の記述である。 Dは居宅介護サービスだから第二種社会福祉事業である。そして、第二種は経営主体の制限は無い(社会福祉法では)

問題2 答5
 「介護保険法」「社会福祉法」は誤り。他の六法は正しい。

問題3 答2 AとBが正しい
C、社会保障の対象や給付水準など、各国間で共通しない。
D 正しくは「…国民は…」

<ポイント解説>
*社会資源
 人々のニーズを充足するために活用できる,あらゆる制度・物・人・情報等である。具体的には,制度,機関,組織,施設・設備,資金,物品,さらに個人や集団が有する技能,知識,情報などである。
 社会資源を供給する主体から分類すると,家族,親戚,友人,同僚,近隣,ボランティアなどのインフォーマル・セクターによるもの,および行政,法人などのフォーマル・セクターによるものとに分けることができる。


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