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2008/08/31(日)
公的扶助論・ポイント
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*公的扶助論・ポイント 第3章 生活保護基準と最低生活保障水準 第1節 生活保護基準の考え方 P88から 生活保護基準とは、生活保護法によって保障すべき最低生活の水準を金額で示したものであり,扶助の種類ごとにさまざまな事情を考慮して詳細に決められている。生活保護法3条では,こうした基準が健康で文化的な水準であるべきことが保護の原理として主張された。また8条の「基準及び程度の原則」では,この基準額の決定は厚生労働大臣の権限に属し,さまざまな事情を考慮して決定すべきことなどを定めている。具体的には,「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示158号)として定められ,改正を重ねている。 この基準額は国が国民に保障する最低生活費ということになるが,その具体的な算定には,国民生活全体の動向との関連をどう考えるかという大きな論点が存在する。これまで,絶対的な必要額を積み上げたマーケット・バスケット方式,エンゲルの法則を利用して低所得世帯の消費動向の変化にリンクさせようとしたエンゲル方式,一般階層との格差是正を明確な政策目標とした格差縮小方式が採用された。現在は一般階層との格差の現状維持を目的とした水準均衡方式が採用されている。
◆生活保護基準について 生活保護費は現在、内容別に8種類の扶助に分類され、細かく基準額が定められている。また、地域別に1級地−1から3級地―2まで、6地域(級地)に区分して基準額が定められている。 生活保護費は、被保護世帯が生活するために、最低限度必要な額(最低生活費)として、一カ月単位で基準額が定められている。収入がない場合には、この基準額(最低生活費)そのものが、保護費として支給される。収入がある場合には、最低生活費から収入を差し引いて、残りの不足分が支給される。 生活保護法第8条では,「保護は厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭及び物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。A前項の基準は,要保護者の年齢別,世帯構成別,所在地別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものでなければならない。」と,保護の要否判定の方法と受けることのできる保護の程度に関する原則を示している。 最低生活保障原理は,「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することを生活保護の基本とすることであるが,その際重要なことは,1949年社会保障制度審議会勧告「生活保護制度の強化改善に関する件」でも強調された,「この制度の実施に要する必要にして十分な予算の計上」であり,つまり財政上の理由による最低生活保障の抑制の禁止(公的扶助3原則)であった。 保護基準は,生存権のセーフティネットの内容を構成するナショナル・ミニマムであるために,生活保護を利用している人たちにとってはもちろん,国民にとっても重要なものである。したがって保護基準の決定は厚生労働大臣が行うこととされているが,その決定の過程が重要となる。生存権保障の中身を規定する生活保護基準が,すべて国の裁量と判断で行われることになるために,国民の側からの異議申し立ては,不服申し立て制度によるほかないということになる。 1957年に提訴された,朝日訴訟裁判は,当時の生活保護基準が憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を保障していないとして争われたものであるが,この提訴の前の4年間,保護基準が実質的に据えおかれたままであったことがその発端であった。国だけが基準の決定にかかわることの弊害が現れた典型的な事例である。 生活保護基準が国民生活に深くかかわるものである以上,最終的に厚生労働大臣が決定するとしても,学識経験者や実務担当者,そして国民,とくに生活保護受給者の代表などの意見が,策定の過程で反映される必要があると考えられる。さらに,厚生労働大臣が決定した基準を,国会での審議承認することも本来は必要なことであろう。
■ナショナル・ミニマム ・国家がすべての国民に最低限の生活を保障すべきという理念。この理念は,シドニー・ウェッブが最初に提唱したとされる。ウェッブによれば,ナショナル・ミニマムとは,最低賃金などの所得保障にとどまらず,最低限の教育,衛生,余暇を含むもので,雇用条件,衛生的環境と医療サービス,余暇とレクリエーション,教育の分野で,国や自治体が,ナショナル・ミニマムを維持する必要があると主張した。その後,「ベヴァリッジ報告」(1942年)に「最低生活費保障原理」として取り入れられ,イギリスの福祉国家の基本理念となった。もっとも,ナショナル・ミニマムは一つの理念であり,その基準は,絶対的なものではなく,歴史的,社会的に規定される。日本では,この理念を発展させ,市民の生活権保障という観点から,国や自治体が保障すべき住宅,環境,衛生などの最小範囲という意味で「シビル・ミニマム」ということばが使われることがある。
■生存権 ・日本国憲法25条は,その第1項で「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定し,第2項で「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定する。この条項を一般的には「生存権」規定とよんでいるが,条文の文言のうえでは,「生活」という用語がキーワードとなっている。ここで保障される人権は,「健康で文化的な最低限度の生活」という内容をもったものであって,たんなる生物としての存在,生理学的な生命維持といったレベルをさすものでないことは明らかである。さらに第2項は,この人権の実質的な保障のためのシステムを国家の責任で構築することを明示する。具体的な制度の定立によって国民の誰もが人間らしい生活を送ることができるよう求めている。
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