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2008/08/18(月)
公的扶助論・ポイント
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生活保護法による保護施設 ○保護施設の概要 *生活保護法は居宅保護を原則としつつも,保護の目的を達成するために,いわば補完的に保護施設を維持してきた。救護施設,更生施設,医療保護施設,授産施設,宿所提供施設の5種類の施設がある。 このうち救護施設を除く4種類の施設は,障害者施策などの他法の整備・拡充によりその数が減少してきている。一方,救護施設は,他法の施設の入所待機者や他法の施設では受入れが困難とされる人々が利用し,施設数も増加している。 *救護施設:身体・精神上の著しい障害のため独立して日常生活を営めない要保護者を入所させる施設。 ・「身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者」のための生活扶助施設(38条2項)とされている。救護法による旧救護施設は,身寄りのない極貧者に対して限定的な院内救済を行う収容施設であったが,現在では,入所と通所によるサービスが実施され,重複障害等をもつために身体障害や精神障害等の各福祉法による施設になじまない者が多く利用している。 救護施設は複合的な障害をもっていたり、長期入院していた精神障害者の退院先の受け皿などとして利用されている。
*更生施設:身体・精神上の理由により養護・補導を必要とする要保護者を入所させる施設。 第38条3項 更生施設は、身体上又は精神上の理由により養護及び生活指導を必要とする要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。
*医療保護施設:医療扶助の給付を行う施設。 ・「医療を必要とする要保護者に対して,医療の給付を行うことを目的とする施設」(38条4項)とされている。救護法の時代から,医療費の負担能力のない浮浪者や行旅病人に対して入院等の治療を実施する病院として機能しており,生活保護法による医療扶助が普及した現在でも,住所不定者等に対して寝具や日常生活用具を含めた包括的医療を提供できる施設として,一定の役割を果たしている。
*授産施設:就業能力が眼られている要保護者のため就労または技能の習得のための機会・便宜を与える、通所施設。 ・生活保護法による授産施設は,「就業能力の限られている要保護者に対して,就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて,その自立を助長することを目的とする施設」(38条5項)とされている。授産施設の数は減少の一途をたどっている。
*宿所提供施設:住宅のない要保護者の世帯に住宅扶助を行う施設。 ・「住居のない要保護者の世帯に対して,住宅扶助を行うことを目的とする施設」(38条6項)とされている。第二次世界大戦後の混乱の時代において,住居を失った者,海外からの引き揚げ者,浮浪者等に対して住居を提供してきたが,その後,住宅事情の改善によって施設数は激減している。現在では,精神障害者等が社会復帰する際の一時的な生活の場として利用されること等が多い。
被保護者の権利及び義務 *不利益変更の禁止(第56条) ・生活保護法第56条では、一度なされた保護の決定について、相当の理由がないかぎり不利益になる変更は許されない「不利益変更の禁止」が定められている。保護機関の裁量など窓意的な変更は許されない。
*公課禁止(第57条)、差押禁止(第58条) ・生活保護法第57条と第58条では、公課禁止と差押禁止が明示されている。最低限度の生活である以上、論理的にも租税の余地はないし、民事上の債務から保護金品を保障するためにも必要な規定である。
*譲渡禁止(第59条) ・一方、被保護者の義務としては、第59条で、保護を受ける権利は一身専属権で、第三者に譲渡できるものではないことを明示している。
*生活上の義務(第60条) ・また、第60条では、被保護者の生活の維持・向上に努める勤労と節約という生活上の義務を規定している。直接的な制裁規定はないが、保護機関の指導指示に従わない場合は、保護の変更、停廃止がなされる場合もある。
*届出の義務(第61条) ・第61条では、被保護者の収入などに変動があった場合は速やかに保護実施機関に届け出る義務を課している。
*費用返還義務(第63条) ・被保護者に資力があるにもかかわらず、急迫した事情で保護を受けた場合は、第63条で費用を返還する義務を課している。
*指示などに従う義務(第62条) ・第62条で被保護者は原則として保護実施機関の指示に従う義務があり、従わない場合は被保護者に弁明の機会を与えたうえで、実施機関は保護の変更、停廃止を行うことができるとしている。被保護者の自由を尊重すべきことも規定されているが、保護実施機関の指導指示権限がぎりぎりのところで上回っているといえる。
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