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2008/11/05(水)
社会福祉の歴史(欧米編6)各科目共通ポイント
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<米国におけるソーシャルワークの発展史 2>
◆M.リッチモンドのケースワーク体系化への貢献 ・アメリカの社会構造の変化とリッチモンドの登場 M.リッチモンド(M.E.Richmond)の生涯は,アメリカ合衆国で南北戦争が始まった1861年から、大恐慌が勃発する前年にあたる1928年までであった。アメリカは工業化による高度成長とともに,都市間題の出現,貧富の格差の増大が社会問題を激化させた。社会構造の変化による矛盾を克服するために、慈善・博愛の活動も,専門的活動へと転換する必要性が生じ,ソーシャルワークヘの転換が形成されるようになった。
*1889年、リッチモンド、ボルチモア慈善組織協会に就職 *1899年、リッチモンド、『貧困者への友愛訪問』を著す。友愛訪問を「貧困者の家庭の喜び,悲しみ,意見,感情,そして人生全体に対する共感をもって常に身近に知ること」と定義した。リッチモンドはアメリカにおけるソーシャルワークの指導的人物とみなされるようになった。
* 1917年、リッチモンド「社会診断(Social Diagnosis)」を著す。 ケースワークの理論と方法を専門的水準に高め,「ソーシャルワークが単なる親切ではなく,専門職実践」として位置づけた。ソーシャルワークの原理を確立したこの書籍は、多数のケース記録を当時の医学や法学など諸科学の知見から分析したものである。 「社会診断」は,貧困問題等にあらわれる利用者の社会的困難と社会的要求を把握するために,利用者と社会環境の関係をできるだけ正確にとらえていく方法を指していた。その過程は,「社会的証拠の蒐集→比較・推論→社会的診断」と進められ,@利用者との最初の十分な面接,A利用者の家族との早期の接触,B家族以外の協力者の調査,が必要であるとしている。また、ソーシャルケースワークとは「さまざまな人のために、さまざまな人とともに、彼ら自身の福祉と社会の改善をとを同時に達成できるよう、彼らと協力して、さまざまなことを行なう技術」であると述べており、ケースワークは「社会改良の小売的方法」であると位置付けた。
*1922年、リッチモンドは「ソーシャル・ケース・ワークとは何か(WhatIs Social Case Work?)」を著し,「ソーシャル・ケースワークは人間と社会環境との間を,個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる諸過程から成っている」と定義した。またリッチモンドは、人を「社会的諸関係の総体」からなるものとして捉え、その「社会的諸関係」を調整することによってクライエントのパーソナリティの発達を図っていくところにケースワークの独自性を求めた。 リッチモンドは、ケースワークの基本になるべき事柄を,@社会環境の中の人間としてとらえること,Aケースワークが専門職であること,Bソーシャルワーク実践が経験の蓄積を通して実証的に理論化されるべきものであること,C利用者の主体性を尊重すること,D諸科学の知識を基礎とした合理的判断と科学的方法の5点に集約し,「専門家は訓練と専門的経験を通じて成長していく存在であること」を指摘した。
・彼女の示したケースワークは「社会環境を通してなされる包括的,多面的なアプローチ」であり,しかも個別化の原則,面接の重視,生活史の解明と事例研究,実践記録の重視など,今日のケースワークの基本的方法がすでにリッチモンドによって体系化されていたことがよくわかる。それは,医学の診断に学びながらも,人と環境の間で起こる生活問題に焦点化されたソーシャル・ケースワークの方法であり,個人と社会環境への洞察をもとに人にはたらきかける直接的援助と環境にはたらきかける間接援助の両方の必要性を明確に示した。 これらは今日のケースワークにおいても基本となるべき事柄であり,「ケースワークの母」といわれる所以である。その後も社会福祉援助技術はアメリカを中心に発展することとなる。
* 1929年、ミルフォード会議報告書『ソーシャルワーク――ジェネリックとスペシフィック』。 ケースワークにおける「ジェネリック」と「スペシフィック」の捉え方の重要性が提起され、ソーシャルケースワークの統合化が早くも試みられた。 ここでのジェネリック・ケースワークとは、実践の各分野に共通な概念、知識、方法、社会資源など、基本となる原理、過程、技術を示す基本的ケースワークをいう。スペシフィック・ケースワークとは、家庭、児童、障害者などのそれぞれの実践分野で行われるケースワークで、各分野に固有の特殊な知識や方法が求められる。またこのとき、援助技術の専門分化、つまりケースワーク、グループワーク、コミュニティワークといういわゆる、伝統的な3方法(援助技術)の分化が進んでいた。
・ミルフォード会議とは、ペンシルベニア州ミルフォード市で開かれた,ケースワークのあり方に関する会議。1923年,専門分化していた,アメリカ家族福祉協会,アメリカ児童福祉連盟,アメリカ精神医学ソーシャルワーカー協会,全国訪問教師協会,全国保護観察協会などの団体が集まり,「ケースワークに関する思考と実践の混乱,不確定性,正確性の低さ」に対応すべく開催。その後,1928年まで毎年継続され,29年に報告書として,その成果が報告された。
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