社会福祉士 受験支援セミナー 日替講座
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2008/11/30(日) 掲載を終了しました(他の日も同じく)
 練習問題等の掲載を終了しました。
 引き続き、当サイトと下記のリンクをご活用ください。

<社会福祉士・精神保健福祉士 受験対策レジュメ&練習問題集>
 関屋光泰が講師を担当した、受験支援セミナーのレジュメや模擬問題等の一部です。URLをクリックで、PCで閲覧できます。

@社会福祉の歴史 レジュメ・資料集(受験支援セミナー・MGU学内学会主催2008年11月10日)
http://docs.google.com/Doc?id=dcn94hv7_11c985njc2  

A社会福祉の歴史等、練習・模擬問題集(同上)
http://docs.google.com/Doc?id=dcn94hv7_12kpjxk5f5 

Bソーシャルワーク・社会福祉援助技術論、練習・模擬問題集(受験支援セミナー・MGU 第3回)
http://docs.google.com/View?docID=dcxvhmvj_4gnnzpghj&revision=_latest


C地域福祉論等、練習・模擬問題集(受験支援セミナー・MGU 12月1日)
http://docs.google.com/View?docid=dcn94hv7_134w7t7bdz

D公的扶助論(生活保護制度)web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1225585731/

2008/11/24(月) 掲載終了(他の日も同じくです)
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<社会福祉士・精神保健福祉士 受験対策レジュメ&練習問題集>
 関屋光泰が講師を担当した、受験支援セミナーのレジュメや模擬問題等の一部です。URLをクリックで、PCで閲覧できます。

@社会福祉の歴史 レジュメ・資料集(受験支援セミナー・MGU学内学会主催2008年11月10日)
http://docs.google.com/Doc?id=dcn94hv7_11c985njc2  

A社会福祉の歴史等、練習・模擬問題集(同上)
http://docs.google.com/Doc?id=dcn94hv7_12kpjxk5f5 

Bソーシャルワーク・社会福祉援助技術論、練習・模擬問題集(受験支援セミナー・MGU 第3回)
http://docs.google.com/View?docID=dcxvhmvj_4gnnzpghj&revision=_latest


C地域福祉論等、練習・模擬問題集(受験支援セミナー・MGU 12月1日)
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2008/11/23(日) 掲載終了
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<社会福祉士・精神保健福祉士 受験対策レジュメ&練習問題集>
 関屋光泰が講師を担当した、受験支援セミナーのレジュメや模擬問題等の一部です。URLをクリックで、PCで閲覧できます。

@社会福祉の歴史 レジュメ・資料集(受験支援セミナー・MGU学内学会主催2008年11月10日)
http://docs.google.com/Doc?id=dcn94hv7_11c985njc2  

A社会福祉の歴史等、練習・模擬問題集(同上)
http://docs.google.com/Doc?id=dcn94hv7_12kpjxk5f5 

Bソーシャルワーク・社会福祉援助技術論、練習・模擬問題集(受験支援セミナー・MGU 第3回)
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C地域福祉論等、練習・模擬問題集(受験支援セミナー・MGU 12月1日)
http://docs.google.com/View?docid=dcn94hv7_134w7t7bdz

D公的扶助論(生活保護制度)web講座
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9517/1225585731/

2008/11/22(土) 第3回受験支援セミナーの補足・システム論 3
2 生態学(エコロジー)とエコシステム論 
<概要>
・エコロジー・生活モデルは、生活問題は個人や家族と,彼らを取り巻く環境間とその接触面(インターフェイス)における不適切な相互作用の結果として発生するとみなし,人間のプラスの側面に目を向け,適応(コーピング)能力を高め,環境の応答性(レスポンス)を増してストレスを軽減し,新しい適応のバランスを得ることをめざして援助を行うものである。

1)エコロジーの特性
◆エコロジーの特性
@交互作用と互恵関係
・人間と環境の交互作用に焦点をあて、さらにそれが人間と環境の互恵関係として成立し、維持されることを目指す。
Aストレスと対処
・環境の側にあって人間と環境の交互作用における緊張関係の原因となるものを生活ストレッサーといい、人間がそれを処理する能力を対処能力(コーピング)という。
Bアセスメント
・人間と環境の相互の影響を調査することである。
Cニッチ
*エコロジーは、人と環境との交互作用を通してハビタットを追求し、ニッチ(生態学的適所)の作成を目指す。
D希少動物の保護
*「希少動物の保護」という考え方は、社会の価値(利益主義、能力主義など)に合致しない人間で合っても、その人が存在することに無限の価値と意義を見出そうとする社会福祉の価値と整合性をもつ。

*C.H.マイヤーは、1980年代、一般システム論とエコロジーを融合したエコシステム論を提示した。

■ニッチ niche
・多くの場合生態学の分野で使われる用語であるが,社会学,経済学でも使用される。生態学的には,相互に依存するコミュニティ内で,ある種が占有する位置(地位)をさす。社会学,社会福祉学の分野では,ある個人あるいは家族がその住むコミュニティの社会構造のなかで占める状態のことをいう。

■エコロジー ecology
・19世紀中葉にヘッケル(Haeckel, E. H.)が生物学の一分野として造語。ギリシャ語のoikos(家)に由来し,生物とその環境の相互作用を扱う科学=生態学を意味する。1960年代以降は,主にヨーロッパで,この概念が社会行動の領域に援用され,環境汚染をもたらす産業社会や既存の社会システムへの批判として用いられるようになった。今日では人間と自然環境との調和的な政治・経済・社会システムを構想しようという目的や理念,態度,環境保護運動や自然保護運動を示す。

■エコシステム
・ある地域のすべての有機体(生物)と,そこに存在するすべての物理的条件の間に発生する,物質の循環,エネルギーフロー,情報伝達といった相互作用を機能の観点から捉えたシステム。マイヤー(Meyer, C. H.)は,ソーシャルワークに多大な影響を与えてきた生態学理論とシステム理論の統合を試みるなかで,このエコシステムの概念をソーシャルワーク実践の文脈に則してエコシステム視点として体系化した。
 エコシステム視点では,クライエントと環境との間にある相互関連性に焦点をあてることをワーカーに奨励している。アセスメントでは,クライエントのみならず,クライエントを取り巻く環境(家族,友人・知人,関係社会機関,地域など)からの影響をも含めた包括的なアセスメントを行うことで,クライエントがおかれている状況を理解することが求められる。
 エコシステム視点によって,ワーカーは多様な介入方法を考察するための認識論的枠組を得ることができたと評価される一方で,ワーカーによって介入方法の選択が相対的になるとの批判もある。

■ジャーメインGermain,CarelBailey (1916-95)
・アメリカのコネチカット大学社会福祉学部名誉教授。生活モデル(ライフ・モデル・アプローチ)の提唱者。1970年代からギッターマン(Gitterman, A.)とともに人と環境との交互作用に焦点を当て,個人と環境の間での継続的な相互交換のなかで,個人と環境は相互に影響し合うと提唱した。生活モデルには,人と環境の交互作用の下位概念として,相互交換や適応,ストレス,対処(コーピング)がある。[主著] The Life Model of Social Work Practice, 1980 (with Gitterman, A.).

■アメニティ amenity
・19世紀なかば以降のイギリスの都市計画において形成されてきた考え方で,「居心地のよさ」「快適な生活環境」を作り出す複合的な諸要因の総体を意味する。イギリスのアメニティ法(Civil Amenities Act)で「しかるべき場所にしかるべきものがあること」と定義されるように,地域の特性や人々の生活様式に応じて異なり,その要件となるのは,自然も含め,歴史のなかでつくられた文化財などのように,人間の生活の営みと結びつきながら保存されている場合である。アメニティは,地域に固着し売買するのが困難な地域固有財(location-specific goods)とされ,またその喪失は不可逆的で絶対的な損失をまねく面をもつ。

<MGU 社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー> *主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*第5回 11月24日(月)3・4時間目限
*ところ:MGU白金 1255教室
*内容:社会保障論(理念、公的年金、医療保険制度等)

 各回、部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます。参加費や申し込みは不要です。

*関屋光泰が担当する受験支援セミナーの最終回は、
12月1日(月)の3・4時間目に開催予定です。

*受験を予定しているお友達・お知り合い、同じ学科の方々に転送をお願いします。

2008/11/21(金) 第3回受験支援セミナーの補足・システム論 2
*ベルタランフィによる一般システム理論の概念には、開放システム、閉鎖システム、エントロピー、定常状態、インプット、アウトプット、情報・資源処理システムなどがある。 →P110参照

◆開放システム
*一つの対象となるシステムが他の様々なシステムと相互関係をもち、それによってシステム内部に変化が起きるものとみなすとき、これを「開放システム」と呼ぶ。一般システム理論が対象とするのは開放システムである。

◆閉鎖システム
*一つの対象をシステムとして捉え、他のシステムや要素との相互関係を排除するとき、もしくは、ある特定のシステムとその内的要素のみの相互関係に限定するとき、これを「閉鎖システム」と呼ぶ。

◆インターフェイス
*システムは環境や他のシステムと資源・情報・エネルギーを交換する境界をもつ。この境界(相互接触面)をインターフェイスという。

◆ホロン
*システムはそれが最小のシステムでない限り、より小さなシステム要素よって構成され、同時にそれが最大のシステムでない限り、さらに大きなシステムを構成するシステム要素である。システムをこのように捉える概念をホロンという。

◆エントロピー
*システムは発展、安定、均衡(定常状態)を維持するためにエネルギーを消費し、最終的には死滅(非活性状態)に至る。これをエントロピーという。

◆互酬性
*システム内の一つのサブ・システムが変化すると、その変化が他のサブ・システムと相互作用を行い、結果としてシステム全体が影響を受ける。これを互酬性という。

◆シナジー
*システムはその構造と特徴を保持する傾向がある。エントロピーを防ぐために環境から新たな資源・情報・エネルギーをインプットすることにより、システムを強化する力のことをシナジーという。
*G.ハーンは一般システム論をソーシャルワーク理論に応用することが可能であると考え、1950年代にその成果を発表した。
 これは、初期のジェネリック・ソーシャルワーク理論である。

3)システム論に基づくソーシャルワーク
* A.ピンカスとA.ミナハンは、1973年、ソーシャルワークを一つのシステムと捉え、システム理論に基づくソーシャルワーク実践では,ソーシャルワーカーは以下の四つのサブシステムの相互作用に関心をもたねばならないとしている。
@クライエント・システム
・個人,家族,グループ,組織など,ソーシャルワーカーが援助の対象とするシステムである。
 クライエント・システムとは、社会福祉サービスを既に利用しているか、サービスを必要としている、援助活動を通して問題解決に取り組もうとしている個人や家族などから構成されている小集団を指す。

Aワーカー・システム=チェンジ・エージェント・システム(ワーカーとその所属機関)
 ワーカー・システムとは、援助活動を担当するソーシャルワーカーとそのワーカーが所属する機関や施設とそれを構成している職員全体を指す。

Bターゲット・システム(目標達成のために変革しなければならない人や組織)
 ターゲット・システムとは、クライエントとワーカーが問題解決のために変革あるいは影響を与えていく標的とした人々や組織体を指す。
 標的は、クライエントが選択される場合や、クライエント以外のワーカーやワーカーが所属している機関や施設も含む人々や組織体が選択される場合もある。

Cアクション・システム(目標達成のためにターゲットに働きかける媒体)
 アクション・システムとは、変革に影響を与えていく実行活動に参加する人々や資源のすべてを指し、実行活動のチームワークを構成する人々をいう。
*援助者は必然的に四つのシステムと重層的に関係し、発展させていく。

*システム理論は、現在のソーシャルワークの基本的視点と枠組みを支える理論の1つとして機能している。

2008/11/20(木) 第3回受験支援セミナーの補足・システム論 1
*ソーシャルワーク関連科目

1 一般システム論 テキストP108から
<概要>
・1980年前後からシステム理論とエコロジカル理論は,社会と人間の関係をつなぐ概念として,対人支援専門職の関心を集めた。これらの理論は,個人,家族,小集団,地域の諸領域で人間の機能の概念化において重要概念である。

1)システム思考
・システムとは、全体のなかの部分同士が目的をもって組織される状態を指す。
・社会福祉の分野では,貧困や精神的・心理的な障害の原因を対象者自身の態度や生活史に求める考え方が主流であった。しかし,社会環境との摩擦や環境自体のもつ問題,各環境要因の不調和などが原因で利用者の困難が生じていることが見直され(「リッチモンドに帰れ」),利用者とその周辺の環境要因をシステムとして捉え,援助の対象と考えるようになった。
・現在ではこのシステム理論に基づき,ソーシャルワーカーが直接援助・間接援助の技術を使い分けながら多様な実践を行うジェネラリスト・アプローチという考え方が定着してきていると言える。

2)一般システム論の特徴 テキストP109
*一般システム論とは、専門分化された諸科学の概念や知識を、統一された方法論によって統合する普遍的原理として提唱された。
*システム理論は、現在のソーシャルワークを支える理論の1つである。システムとは諸要素のまとまりという意味をもち、全体は諸要素より成り立っており、その個々の要素は全体と無関係のものではなく、相互に作用しあって、全体を構成しているという考え方を全体的モデルという。
■一般システム論とは
 一般システム理論 general systems theory は、1968年に生物学者ベルタランフィ (Bertalanffy, L. v.) によって発表され,有機体の全体性を包括的に説明した理論として位置づけられている。この理論は,ニュートン力学など,それまで主流だった還元主義に基づく近代科学に対して,有機体の構成要素を分断せず,構成要素間の関係性に注目した点に特色がある。 具体的には,@有機体の各構成要素間の相互作用・相互制御に基づく全体性の存在,A開放システムによる外的諸条件との相互作用,B構成要素間あるいは外的条件との間で生じるフィードバック・メカニズムとシステム維持機能 (ホメオスタシス),といった三つの基本概念から有機体システムの特徴を説明している。
 生物学にとどまらず,物理学,心理学,あるいは社会科学で扱われるいかなるシステムにも適用できる一般的特性を示しており,多くの分野でシステム分析のために活用されている。
 社会福祉分野では,1980年代以降,エコロジカルな視点に基づく方法論の統合化が行われた際,「人と状況の全体性」を捉える理論的枠組として重要な役割を果たした。

2008/11/19(水) 公的扶助論の復習A
(前日の続き)
5.介護扶助
 2000年度から実施された介護保険法に対応して,生活保護法15条の2で新設された扶助である。
 生活困窮(生活保護を受給中)の、要介護・要支援者に対し,居宅介護,福祉用具,住宅改修,施設介護,移送などを行なう。
 ただし,「保護の補足性」により,介護保険の保険給付が行われる場合はそれが優先される。
 介護扶助は原則として、サービスが現物給付される。

(生活保護法第15条2・介護扶助)
 介護扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない要介護者(介護保険法第7条第3項に規定する要介護者をいう)に対して、第1号から第4号まで及び第8号に掲げる事項の範囲内において行われ、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない要支援者(同条第4項に規定する要支援者をいう。)に対して、第5号から第8号までに掲げる事項の範囲内において行われる。
1.居宅介護(居宅介護支援計画に基づき行うものに限る。)
2.福祉用具
3.住宅改修
4.施設介護
5.介護予防(介護予防支援計画に基づき行うものに限る。)
6.介護予防福祉用具
7.介護予防住宅改修
8.移送
2 前項第1号に規定する居宅介護とは、介護保険法第8条第2項に規定する訪問介護、同条第3項に規定する訪問入浴介護、同条第4項に規定する訪問看護、同条第5項に規定する訪問リハビリテーション、同条第6項に規定する居宅療養管理指導、同条第7項に規定する通所介護、同条第8項に規定する通所リハビリテーション、同条第9項に規定する短期入所生活介護、同条第10項に規定する短期入所療養介護、同条第11項に規定する特定施設入居者生活介護、同条第12項に規定する福祉用具貸与、同条第15項に規定する夜間対応型訪問介護、同条第16項に規定する認知症対応型通所介護、同条第17項に規定する小規模多機能型居宅介護、同条第18項に規定する認知症対応型共同生活介護及び同条第19項に規定する地域密着型特定施設入居者生活介護並びにこれらに相当するサービスをいう。
3 第1項第1号に規定する居宅介護支援計画とは、(中略)。
4 第1項第4号に規定する施設介護とは、介護保険法第8条第20項に規定する地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、同条第24項に規定する介護福祉施設サービス、同条第25項に規定する介護保健施設サービス及び同条第26項に規定する介護療養施設サービスをいう。
5 第1項第5号に規定する介護予防とは、介護保険法第8条の2第2項に規定する介護予防訪問介護、同条第3項に規定する介護予防訪問入浴介護、同条第4項に規定する介護予防訪問看護、同条第5項に規定する介護予防訪問リハビリテーション、同条第6項に規定する介護予防居宅療養管理指導、同条第7項に規定する介護予防通所介護、同条第8項に規定する介護予防通所リハビリテーション、同条第9項に規定する介護予防短期入所生活介護、同条第10項に規定する介護予防短期入所療養介護、同条第11項に規定する介護予防特定施設入居者生活介護、同条第12項に規定する介護予防福祉用具貸与、同条第15項に規定する介護予防認知症対応型通所介護、同条第16項に規定する介護予防小規模多機能型居宅介護及び同条第17項に規定する介護予防認知症対応型共同生活介護並びにこれらに相当するサービスをいう。
6 第1項第5号に規定する介護予防支援計画とは(中略)

■被保護者の権利及び義務 テキストP80〜
*不利益変更の禁止(第56条)
・生活保護法第56条では、一度なされた保護の決定について、相当の理由がないかぎり不利益になる変更は許されない「不利益変更の禁止」が定められている。保護機関の裁量など窓意的な変更は許されない。

*公課禁止(第57条)、差押禁止(第58条)
・生活保護法第57条と第58条では、公課禁止と差押禁止が明示されている。最低限度の生活である以上、論理的にも租税の余地はないし、民事上の債務から保護金品を保障するためにも必要な規定である。

*譲渡禁止(第59条)
・一方、被保護者の義務としては、第59条で、保護を受ける権利は一身専属権で、第三者に譲渡できるものではないことを明示している。

*生活上の義務(第60条)
・また、第60条では、被保護者の生活の維持・向上に努める勤労と節約という生活上の義務を規定している。直接的な制裁規定はないが、保護機関の指導指示に従わない場合は、保護の変更、停廃止がなされる場合もある。

*届出の義務(第61条)
・第61条では、被保護者の収入などに変動があった場合は速やかに保護実施機関に届け出る義務を課している。

*費用返還義務(第63条)
・被保護者に資力があるにもかかわらず、急迫した事情で保護を受けた場合は、第63条で費用を返還する義務を課している。

*指示などに従う義務(第62条)
・第62条で被保護者は原則として保護実施機関の指示に従う義務があり、従わない場合は被保護者に弁明の機会を与えたうえで、実施機関は保護の変更、停廃止を行うことができるとしている。被保護者の自由を尊重すべきことも規定されているが、保護実施機関の指導指示権限がぎりぎりのところで上回っているといえる。

2008/11/18(火) 公的扶助論の復習
*公的扶助論・7月の受験支援セミナーの復讐
■保護の内容及び方法(8種の扶助)
1. 生活扶助 
 生活扶助とは、衣食その他、日常生活の需要を満たすために必要なものを,原則として居宅で金銭給付するものである。
 生活扶助は、個人単位の費用である第1類の経費(飲食費・被服費等。居住地域・年齢別に算定される)と、世帯単位の費用である第2類の経費(光熱費・家具什器等の世帯共通費用。居住地域・世帯人員別に算定される)、さらに各種加算、及び一時扶助と勤労控除を中心に構成されており、原則として金銭給付により、一か月分を世帯主又はこれに準ずる者に対して交付される。 
*被保護者が入院・入所している場合には,入院患者日用品費,介護施設に入所している場合には介護施設入所者基本生活費が生活扶助として行われる。

■用語解説:生活扶助基準
 生活扶助基準は,現在では水準均衡方式で算定しており,厚生労働大臣が改定を行なう。一般国民の消費動向をもとに,一般世帯との均衡状態を保つための調整を行い,これをもとに生活扶助基準の改定率を決めようとする方式である。

■用語解説:勤労控除
 生活保護で収入の認定を行うに際し,勤労に伴う必要経費として,勤労収入から一定額を控除すること。基礎控除,特別控除,新規就労控除,未成年者控除の4種類がある。勤労控除の意義は、勤労に要する経費の補填とともに,受給者の勤労意欲を増進することにより経済的自立を促進することにある。

2.教育扶助
 「教育扶助」の対象となるのは、義務教育の就学に必要な費用で、金銭給付され、通常は生活扶助と併せて支給される。(生活保護法第13条)。
 義務教育の、@学用品,A通学用品,B学校給食等の費用の不足分を,原則として金銭給付する。

3.住宅扶助
 「住宅扶助」の対象となるのは、住宅の確保及びその維持のために必要な費用で、具体的には(賃貸物件の)家賃、家屋の修繕費であり、原則金銭給付で生活扶助と併せて支給される。(第14条)
 @家賃・地代(住宅ローン返済は不可),A家屋補修等(新築は不可)に必要な費用の不足分を,地域別の基準の範囲で,原則として金銭給付する。宿所提供施設の利用・委託のかたちで現物給付することも認められる。

4.医療扶助
 原則的には、「指定医療機関」において、医療等のサービスが現物給付される。
 その範囲とは、診察、薬剤又は治療材料、医学的処置、治療並びに施術、居宅における治療上の管理・看護、入院、移送等と規定されている。あんま、柔道整復、鍼灸等も対象になる。また、医療費のみ不足する者には、単給もある。近年では,高齢化に伴って被保護人員の約8割が受給している。
*医療扶助の根拠
生活保護法 第15条 医療扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
 1.診察
 2.薬剤又は治療材料
 3.医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
 4.居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
 5.病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
 6.移送
同法 第49条 厚生労働大臣は、国の開設した病院若しくは診療所又は薬局についてその主務大臣の同意を得て、都道府県知事は、その他の病院、診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)若しくは薬局又は医師若しくは歯科医師について開設者又は本人の同意を得て、この法律による医療扶助のための医療を担当させる機関を指定する。

6.出産扶助
・「出産扶助」の範囲となるのは、分娩の介助、分娩前後の処置、分娩に伴って必要となる衛生材料費であり、金銭で給付される。(生活保護法第16条)

7.生業扶助
・生業に従事できずに最低限度の生活を維持することができない者や,そのおそれのある者の,稼働能力を引き出し、それを助長することによって自立を図ることを目的としている。他の扶助と異なり,(困窮の)のおそれのある者も対象とする。(第17条)
 収入増加・自立助長の見込みがある場合に,@生業費,A技能修得費,B就労支度費を,原則として基準額の範囲で金銭給付するが、授産施設利用という現物給付の方法もある。 
 2005年度から、高等学校等就学費として、高等学校等での就学に必要な費用が、「自立支援」の観点から生業扶助費として支給されている。支給の内容は、入学準備金や、通学費、学用品代などであり、公立高校相当額である。

8.葬祭扶助
 「葬祭扶助」は、死体の運搬や火葬、その他葬祭に必要な最低費用が、原則、金銭で給付される。(第18条)
第18条2 左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。
 1.被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。
2.死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。
(介護扶助は明日に掲載)

<MGU 社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー> *主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*第4回 11月20日(木)4・5時間目限
*ところ:MGU白金 3101教室
*内容:社会保障論(理念、公的年金、医療保険制度等)

*第5回 11月24日(月)3・4時間目限
*ところ:MGU白金 1255教室
*内容:社会保障論(理念、公的年金、医療保険制度等)

 各回、部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます。参加費や申し込みは不要です。

*関屋光泰が担当する受験支援セミナーの最終回は、12月1日(月)の3・4時間目に開催予定です。

*受験を予定しているお友達・お知り合い、同じ学科の方々に転送をお願いします。

*ご感想、ご質問など、sekiyaへのコメントは以下のフォームから送信してください。
 http://www.milmil.cc/user/hinkon/mailform.html

2008/11/17(月) 本日17日の第3回セミナーに向けてB:復習と予習
*本日の、第3回セミナーは、7月に実施済みの第1回セミナーの内容の後編にあたります。当サイトでは、第1回セミナーの内容のうち、17日に関連がある事項を復習します。続編です。

<第1回セミナーの復習:公的扶助論>
◎公的迭助の各国共通の要素
 公的扶助は、資力調査をその前提条件として、貧困な生活状態にあり、独力で自立した生活ができない要保護状態にある者の申請あるいは請求に基づき、国が定めた自立した生活を送るのに不足する生活需要に対して、国や地方自治体が全額公費負担によって実施する補足的給付であり、人々の最低生活の保障を目的とする、最終的な公的生活保障制度である。

■生活保護制度の仕組み
◎その目的 
 日本国憲法は第25条において、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定しているが、この憲法の規定する生存権の保障を国が実体的に具現するための一つとして制定されたのが生活保護法である。
 生活保護法第1条は、「この法律は、目本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定している。

◎生活保護法の「四つの基本原理」
 生活保護法の1条〜4条は「基本原理」といわれ,生活保護法の理念を整理している。
@国家責任による最低生活保障の原理(国家責任の原理)
 生活に困窮する国民の最低生活保障を国がその責任において行うことを規定した原理である。加えて、保護を受ける者がその能力に応じ、自立して社会生活を送ることができるように自立助長を図ることも併せて規定している。

A無差別平等の原理
 救護法及び旧生活保護法においては、素行不良な者などについては救護や保護は行わないこととする条項が設けられていた。
 しかし、現行の生活保護法は第2条において、「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」と規定し、生活困窮に陥った原因による差別を否定している。

B健康で文化的な最低生活保障の原理(最低生活の原理)
 生活保護法第3条において、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と規定されている。

C保護の補足性の原理
 第4条は、「@保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。A民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と規定している。
*この原理は,保護の開始決定の前提として,自己の資産・能力等の活用(1項),民法上の扶養義務者の扶養や他の社会保障制度の給付など(2項)が先行してなされる必要があり,生活保護法による援助はその不足分を補う限りにおいてなされるという趣旨である。これらに関して、資産調査(ミーンズ・テスト)を行なう。なお4条3項に但し書きとして急迫保護の規定がある。

■保護の原則
@ 申請保護の原則(同法第7条)
1.保護は申請にもとづいて開始すべきこと、2.申講権者の範囲を規定、3.但し書きとして急迫した場合には職権保護が可能であることの3点がその趣旨である。

A基準及び程度の原則 (生活保護法第8条)
 その趣旨は、@保護の基準は厚生労働大臣が決定すること、Aこの基準は最低限度の生活に十分である一方、この限度を超えてはならないこと、B保護の程度はミーンズ・テストを行ってその不足分を補うものであることの3点である。

B必要即応の原則(生活保護法第9条)
 同法9条に、「保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態などその個人または世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする」と定めており、保護の実施は要保護者の個別事情の違いに応じて柔軟に対応すること、というものである。

C世帯単位の原則 (生活保護法第10条)
 同法10条に、「保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする」と規定し、状況により個人を単位とする世帯分離についても定めている。

■生活保護制度による扶助
 生活保護法には8種類の扶助が規定され,必要に応じて併給ができる。それらの扶助は,生活扶助,住宅扶助,教育扶助,医療扶助,出産扶助,生業扶助,葬祭扶助,そして介護保険実施にあわせて2001年4月に創設された介護扶助である。

■被保護者の権利と義務
 その他,生活保護法には,不服申立ての手続や,正当な理由がない限り不利益に変更されない等の被保護者の権利,あるいは収入の変動などがあった場合の届出義務などの被保護者に課した義務なども明記されている。

★「被保護者」とは、生活保護を受給している保護者であり、保護を要する者のことをいう。
★「保護率」とは通常人口千人当たり被保護者人員数=パーミル(‰)で表示する。

<本日開催!! MGU 社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー 第3回>
*11月17日(月)3・4時間目限
*ところ:MGU白金 1255教室
*主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*内容:ソーシャルワーク関連科目(後編)、公的扶助論(後編)
 練習・模擬問題もあります。
 部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます。参加費や申し込みは不要です。
 第3回は、関屋光泰(当サイト編集者)が担当します。
*関屋担当のセミナー最終回は、12月1日(月)の3・4時間目に開催予定です。

*受験を予定しているお友達・お知り合い、同じ学科の方々に転送をお願いします。

*ご感想、ご質問など、sekiyaへのコメントは以下のフォームから送信してください。
 http://www.milmil.cc/user/hinkon/mailform.html

2008/11/16(日) 17日の第3回セミナーに向けてA:復習と予習
*第3回セミナーは、7月に実施済みの第1回セミナーの内容の後編にあたります。昨日からの3日間、第1回セミナーの内容のうち、17日の内容に関連がある事項を復習します。続編です。

<第1回セミナーの復習>
■グループワークのモデル
・グループワークのモデルは,初期のモデルからの変遷を経て現代では主に次の三つがあげられる。
@社会的諸目標モデル:最も伝統的なモデルで,コミュニティ・オーガニゼーションに近い。個人およびグループは潜在的に社会問題の解決に影響を及ぼす能力があるとの考えから,ワーカーはグループ過程を促進して,個人やグループを取り巻く環境の変革に取り組む。
A治療モデル:ヴィンターによって構築されたモデルで,最もリスクの高い問題を抱えるクライエントを対象として,彼らに望ましい変化をもたらすためにグループが意図的に構成される。その後ガーヴィン(Garvin, C.)やグラッサー(Glasser, P.)によって引き継がれ,「予防的およびリハビリテーション的モデル」ともよばれる。
B相互作用モデル:シュワルツによって発展したこのモデルは,個人と社会を有機的・体系的な相互援助システムと捉え,ワーカーは個人と社会が主体的に望ましい関係を結べるよう両者間の媒介の役割をすることから,「媒介モデル」ともよばれる。

■集団凝集性group cohesiveness (第16回試験)
・集団のなかでメンバーが相互に作用しあいながら形成され,維持されていく,その集団独自の,集団総体としてのまとまりをいう。集団のメンバーが,互いやそのグループに感じている魅力のまとまり,総量ともいえる。集団の凝集性は集団の機能に影響を与え,凝集性が高ければ,集団のメンバーはグループへ参加し続け,より互いに影響を与え合い,また,グループの課題達成やグループが機能していくことに,より責任をもって取り組むようになる。

→ 第3回セミナーでは、更にグループワークについて、学習します。


<第1回セミナーの復習>
■ソーシャルワークの統合化
 バートレット(Bartlett, H.)は,ソーシャルワークの専門職性(プロフェッション)を全体として捉え,ソーシャルワーク実践に共通する拠り所を求めて理論的な整理を行い,ソーシャルワーク実践の共通基盤(common base)としてまとめている。
(15回試験出題) テキストP101
 ピンカス(Pincus, A.)とミナハン(Minahan, A.)も,実践の構成要素をクライエント・システム,ワーカー・システム,ターゲット・システム,アクション・システムとして整理し,クライエントの生活と問題を包括的に捉え,社会資源の活用を通して,計画的に働きかける手順を示しているが,それは従来のケースワークの枠を越えた統合的な理論であった。その後もソーシャルワーク理論の統合化は,一般システム理論やエコロジーの概念を枠組としながら発展している。ジャーメインとギッターマン(Gitterman, A.)のエコロジカル・パースペクティブやライフ・モデルは,ソーシャルワークの統合理論として広く受け入れられるようになっている。
 今日ではこうしたエコシステムの理論がソーシャルワーク統合化理論として不動の位置を占めているが,人と環境を一体とみなし,そのダイナミックな関係を包括的な視点で捉え,計画的に援助をしようとする姿勢はソーシャルワークの伝統的な視点をより明確,かつ具体化したものであるともいえる。

→ 17日の第3回セミナーでは、更に一般システム論や生態学についても、学習します。


<お知らせ:MGU 社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー 第3回>
*11月17日(月)3・4時間目限
*ところ:MGU白金 1255教室
*主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*内容:ソーシャルワーク関連科目(後編)、公的扶助論(後編)
 練習・模擬問題もあります。
 部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます。参加無料。
 第3回は、関屋光泰(当サイト編集者)が担当します。
*関屋担当のセミナー最終回は、12月1日(月)の3・4時間目に開催予定です。

*当日が迫っていますので、受験を予定しているお友達・お知り合い、同じ学科の方々に転送をお願いします。

2008/11/15(土) 17日の第3回セミナーに向けて@:復習と予習
*第3回セミナーは、7月に実施済みの第1回セミナーの内容の後編にあたります。今日から3日間、第1回の内容のうち、17日に関連がある事項を復習します。本日はその初回です。

<お知らせ:MGU 社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー 第3回>
*11月17日(月)3・4時間目限
*ところ:MGU白金 1255教室
*主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*内容:ソーシャルワーク関連科目(後編)、公的扶助論(後編)
 練習・模擬問題もあります。
 部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます。参加無料。
 関屋光泰(当サイト編集者)が担当します。 
 当セミナーは、以降も開催予定です。
*当日が迫っていますので、受験を予定しているお友達・お知り合い、同じ学科の方々に転送をお願いします。

■第1回セミナーの復習
<新たなモデルの登場:ケースワーク>
■心理社会的アプローチ
・精神分析,自我心理学,力動精神医学の知見を導入した診断主義ケースワークに立脚する,個別援助技術の主要アプローチの一つ。ホリスによって,1960年代に体系化された。ハミルトンらも代表的な研究者である。特に「状況における人」に着目し,クライエントの環境面と内面・心理面の相互作用を認識すること,さらにクライエントに対する直接的な働きかけと同じく,環境への間接的な働きかけや調整の重要性も強調した。

■ホリス Hollis, Florence (1907-87)
・アメリカにおけるケースワーク理論の主流の一つである診断主義アプローチを代表する理論家の一人。特に,ホリスは,診断主義のなかでも「状況の中にある人間」や「人と状況の全体関連性」といった特有の概念を用いる心理社会的アプローチを提唱した研究者として広く知られ,ケースワークの発展に大きく貢献した。[主著] Casework : A Psychosocial Therapy, 1964. (16回試験出題)

■ライフ・モデル・アプローチ
・1960年代以降アメリカでは,複雑で多様な生活問題に対する援助の社会的要請が高まり,従来の個人のパーソナリティに治療の焦点をおいた伝統的なアプローチに対する批判が高まった。
そのソーシャルワークの限界を打開するために,生態学や一般システム理論などの新たな理論的枠組を背景に登場したのがジャーメインらによって体系化されたライフ・モデル(生活モデル)である。このモデルでは,人,環境のどこに問題があるのかを問うのではなく,問題は生活空間における不適切な交互作用(transaction)にあると考え,人と環境の接触面(interface)に焦点をあてていく。ソーシャルワーカーの社会的目的は,人々の成長と発達を最大限にし,環境を改善する交互作用を生み出すように,人々の適応能力と環境の特性を結び合わせることとされる。そこでは,生活体の適応能力を高めると同時に環境を改善するという二つの実践の焦点があり,人も環境も等しく重要であって,この両者の互恵的適応関係のバランスがいかに獲得されるのかに最大の関心が払われる。したがって,ソーシャルワーカーが扱う対象は人と環境の「開かれた」連鎖的交互作用であり,「人と環境の適合性」である。

→ 第3回セミナーでは、<ケースワーク・新たなモデルの登場>として、危機介入など、多様な新たなモデルについて、学習します。

■第1回セミナーの復習
<グループワーク・集団援助技術>
■グループワーク(第14回、第16回試験出題)
・ソーシャルワークの体系化された方法の一つで,厳密にはソーシャル・グループワークとよぶ。グループによる意図的なプログラム活動やグループの相互作用を活用して個人の成長をめざし,個人,集団,社会のさまざまな問題への効果的な対応を支援するもの。
・グループワークの援助媒体は,グループワーカーがグループの目的を達成するために用いる手段のことで,主に次の四つがあげられる。@グループワーカーとメンバー間の専門的援助関係,Aメンバーの相互作用,Bプログラム活動,C社会資源である。特にグループワークに特徴的な援助媒体は,メンバーの相互作用とプログラム活動である。グループワークでは,ワーカーとの援助関係とは異なる,グループ特有のメンバー同士の関係が互いを支え合うことに役立つ。一方,プログラム活動は,グループの目的にそって展開される活動で,メンバーの参加,相互作用の促進,グループ意識の高揚等さまざまな意義がある。
 グループワークの原則は,依拠するモデルによって違いがみられるものの,一般的にはコノプカによる14原則が代表的で,メンバーの個別化の原則,グループの個別化の原則,受容の原則,参加の原則,葛藤解決の原則,制限の原則,継続評価の原則等がある。

→ 第3回セミナーでは、更にグループワークについて、学習します。

2008/11/14(金) 地域福祉論・練習問題
*地域福祉論・練習問題

問題34 次の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。

1 1917(大6)年に 岡山県にて民生委員制度が発足したが、それは岡山県知事の笠井信一が考案したものである。
2 上記の岡山県における制度は、ドイツの「エルバーフェルト制度(救済委員制度)」を参考とした。
3 1918(大7)年 に大阪府にて方面委員制度が発足したが、それは大阪府知事の林市蔵が救済事業指導嘱託の小川滋次郎の協力により創設したものである。
4 上記の大阪府における制度は、米騒動の混乱や社会不安が高まるなか、低所得階層の救済のため創設され、「社会測量」と呼ばれていた社会調査とケース・スタディ、また民間社会事業の発展が期待されていた。
5 1948(昭23)年に方面委員法が制定・公布され(即日施行)、任期は3年と規定された。


問題35 次の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。

1 1997(平成9)年の「活動強化方策」による民生委員の七つの働きとは、@社会調査、A相談、B福祉サービス,情報提供、C連絡通報、D意見具申、E調整、F支援体制づくりである。
2 昭和22年、第1回国民たすけあい共同募金が実施されたが、それは1913年にアメリカ・オハイオ州クリーブランドで実施された共同募金がモデルである。
3 共同募金は、昭和26年に老人福祉法制定に伴い、制度化された。
4 共同募金事業は第一種社会福祉事業である。
5 共同募金は都道府県を単位として、毎年1回厚生労働大臣の定める期間内に限って、あまねく行う寄付金募集であり、都道府県共同募金会が実施機関として実施する。


問題37 次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 国及び地方公共団体は、ホームレスの自立支援等の施策の実施に当たって、関係する民間団体との緊密な連携の確保とその能力の積極的な活用が求められている。
B 居宅介護等事業の経営を目的として社会福祉法人を設立する場合は、最低5千万円以上の資産を有することが要件となっている。
C 民生委員協議会は、都道府県知事が市町村長の意見を聞いて定める区域ごとに組織されることになっており、民生委員の職務に関する連絡及び調整などを行う。
D 共同募金の配分は、社会福祉を目的とする事業を経営する者以外には配分できず、かつ配分に当たっては配分委員会の承認を得なければならない。
(組み合わせ)
  A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × ○ ○
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ○
5 × ○ × ×


============================
<解答>

問題34 1

問題35 3


問題37 正答2
A ○ 国及び地方公共団体は、ホームレスの自立支援等の施策の実施に当たって、関係する民間団体との緊密な連携の確保とその能力の積極的な活用が求められている。
 「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成14年8月7日施行)」及び平成15年7月31日の「ホームレスの自立の支援等に関する基本指針」を参照

B × 正しくは、居宅介護等事業の経営を目的として社会福祉法人を設立する場合は、最低1千万円以上の資産を有することが要件となっている。
 平成12年9月8日通知「居宅介護等事業の経営を目的として社会福祉法人を設立する場合の資産要件等について」において、原則として1億円以上の資産を基本財産として有していなければならないが、居宅介護等事業(いわゆるホームヘルプ事業)については、各地域においてきめ細かい福祉活動の展開に大きく寄与しており、その事業活動の機動性・柔軟性を十分に活用することは、今後、地域福祉の推進を図る上で重要になるため、下記の要件となった。
 居宅介護等事業の経営を目的として法人を設立する場合の資産要件等居宅介護等事業(児童居宅介護等事業、母子家庭居宅介護等事業、寡婦居宅介護等事業、父子家庭居宅介護等事業、老人居宅介護等事業、身体障害者居宅介護等事業、知的障害者居宅介護等事業又は精神障害者居宅介護等事業をいう。以下同じ。)の経営を目的として法人を設立する場合においては、次に掲げる要件を満たしていれば、1000万円以上に相当する資産(現金、預金、確実な有価証券又は不動産に限る。以下同じ。)を基本財産とすることで足りるものとすること。

C ○ 民生委員協議会は、都道府県知事が市町村長の意見を聞いて定める区域ごとに組織されることになっており、民生委員の職務に関する連絡及び調整などを行う。民生委員法第20条、第24条参照

D ○ 共同募金の配分は、社会福祉を目的とする事業を経営する者以外には配分できず、かつ配分に当たっては配分委員会の承認を得なければならない。社会福祉法117条1項2項参照


<ポイント>
*「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」
 2002年8月に施行された法律で,ホームレスの自立支援のため,就労機会や住居の確保,生活相談など,自立につながる総合的な対策の実施を国や地方自治体の「責務」とした法律(平成14年法律105号)。
 本法により,国には,自治体と協力してホームレスの実態に関する全国調査を行うことが義務づけられた。なお,本法には,施行後5年を目途として見直しを行い,10年を経過した日にその効力を失うとする附則がおかれている。

2008/11/13(木) 社会福祉の歴史(日本編5)各科目共通ポイント
*政策動向
*1971(S46)、 国立コロニーが開設された。

1973(昭和48)年の石油ショックから「福祉見直し」への移行期
(福祉優先予算は昭和54年まで続く)

1973 老人医療費支給制度
 (70歳以上医療費の無料化、所得制限付き) ,

1979年(昭和54)、閣議「新経済社会7カ年計画」了承
(「日本型福祉社会」の実現目指す=個人の自助努力,家族・近隣の相互扶助連帯重視)

1982(昭和57)年、第2臨調第3次答申
 (医療費適正化、活力ある福祉社会の実現。日本型福祉社会。家族や近隣、職場等において連帯と相互扶助が十分に行われるように必要な条件整備をおこなう)

1986(昭和61)年 長寿社会対策大綱(閣議決定)
 同年「地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律」制定 
同年 全社協社会福祉基本構想懇談会「社会福祉改革の基本構想」
“社会福祉は、いまや重大な転機にさしかかっている。それは、第一に昭和20年代中頃につくられた社会福祉制度の基本的枠組を、30数年を経過した今日、そのままの形で維持・存続させることが困難。第二に、諸外国に例をみないほどの急速な高齢化が進行しており、21世紀の本格的な高齢化社会のなかで生まれる新しい福祉課題に対して適切に対応することが求められている。”


<1970年代末から1980年代>
・病院から地域へという精神医療分野における動向、高齢社会の到来
・地域基盤の社会福祉方法論を構築する必要性が高まる

*1987年、社会福祉士・介護福祉士の国家資格制定


◆介護保険から社会福祉基礎構造改革へ
<1990年代から2000年>
1989(平成元) 福祉関係三審議会合同企画分科会意見具申「今後の社会福祉のあり方について―健やかな長寿・福祉社会を実現するための提言」
 市町村の役割重視,社会福祉事業範囲見直し(在宅福祉サービスを位置づける),民間事業者・ボラ団体など多様な福祉サービス供給主体育成,地域における福祉・保健・医療の連携した供給体制,在宅福祉と施設福祉の連携強化。

平成10年  社会福祉構造改革分科会「社会福祉基礎構造改革について( 中間まとめ)」
 (改革の基本的方向→利用者と提供者の対等な関係確立・個人の多様な需要への地域における総合的支援・信頼と納得が得られるサービスの質と効率性の確保・多様な主体の参入促進・住民参加による福祉文化の土壌形成・情報公開による事業運営の透明性確保)

平成10年 教護院→児童自立支援施設と名称変更 母子寮→母子生活支援施設  養護施設→児童養護施設

1999(平成11年)「日本経済再生への戦略」
 公的年金は、高齢者の基礎的生活コストを十分カバーできる水準に.将来的には税方式に移行.介護と高齢者医療は、将来的には税によって国民にサービスを保障.(株式会社による医療機関経営、保険者と医療機関との直接契約、混合診療。皆保険解体し民間保険中心へ、落ちてくる人を政府がネットで拾うという新自由主義的改革案)

2000(平成12)年 介護保険法施行

同年 地方分権一括法(地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律)施行
(機関委任事務なくなり自治体の仕事は法定受託事務と自治事務となる。介護保険は自治事務となる。生活保護の決定・実施は法定受託事務、自立援助は自治事務。社会福祉は主に自治事務)

同年 「21世紀に向けての社会保障」社会保障構造の在り方について考える有識者会議
*持続可能な社会保障
・世代間の公平の視点
1.支え手を増やす
 健康づくり・予防の推進
 子どもを産み育てやすい環境を整備する
2.高齢者も能力に応じ負担を分かち合う
 負担を若い世代と高齢者で分かち合う
  高齢者の資産の問題
3.給付の見直しと効率化
 給付の効率化と合理化
 年金給付の在り方
 高齢者医療の見直し
 効率的で良質な医療の確保
*21世紀の社会保障に向けての国民の選択
・負担を増大させても給付を確保していく選択もしくは、負担を増大させずに給付を見直していく。



<MGU 社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー 第3回>

*11月17日(月)3・4時間目限
*ところ:MGU白金 1255教室
*主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*内容:ソーシャルワーク関連科目(後編)、公的扶助論(後編)
*練習・模擬問題もあります。
 部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます。参加無料。
 当セミナーは、以降も開催予定です。
 
*当日が迫っていますので、受験を予定しているお友達・お知り合いに転送をお願いします。

2008/11/12(水) 社会福祉の歴史(日本編4)各科目共通ポイント
<ケースワーク・資格制度>
●1950(昭和25)年、ケースワーカーとして「社会福祉主事」が制度化

●1951(昭和26)年、社会福祉事業法(現・社会福祉法)制定
(第1種2種の社会福祉事業制限列挙、社会福祉を援護・育成・更生などの福祉サービスに限定、社会福祉法人創設、福祉事務所の設置、社会福祉協議会設置、民生委員は協力機関に)
 10月、福祉事務所発足(民生安定所改組) 社会福祉主事は福祉事務所に専任職として配置。

■用語解説:児童福祉司
 児童相談所長の命を受けて児童の福祉に関する相談に応じ,専門的技術に基づいて指導等を行うソーシャルワーカー。児童福祉法11条1項各号に該当する者から任用されるが,専門性の低さが指摘され,2000年の児童福祉法改正で,社会福祉士を加えるなど基準が厳格化された。

■用語解説:身体障害者福祉司  
 身体障害者福祉法11条の2に規定されており,都道府県は身体障害者更生相談所に身体障害者福祉司をおかなければならず,市町村はその設置する福祉事務所におくことができるとされている。身体障害者福祉司は自治体公務員の職名であり,身体障害者の福祉に関する専門的な知識・技術を必要とする業務を行う者である。

■用語解説:任用資格
 社会福祉行政機関において,専門的な知見を要する職務について,任用されるために一定の資格が必要とされる場合がある。例えば,社会福祉主事として任用されるためには,20歳以上,人格高潔・思慮円熟,社会福祉の増進に対する熱意のほか,大学等で厚生労働大臣の指定科目を修めて卒業することなどが求められている(社会福祉法19条)。このようなものを,一般に任用資格という。ほかに,児童福祉司(児童福祉法11条),身体障害者福祉司(身体障害者福祉法12条)などがある。

*1951年、社会福祉協議会の設立
 戦前からの社会事業団体が統合され、社会福祉協議会が設立された。設立に関連し、黒木利克、谷川貞夫らにより、米国のコミュニティ・オーガニゼーション理論が紹介された。

*1962年(昭和37年)、社会福祉協議会は地域福祉活動の指針となる「社会福祉協議会基本要項」を策定し、「住民主体の原則」の活動原則を打ち出した。
■用語解説:社会福祉協議会
*地域住民と公私の社会福祉機関・団体より構成された民間組織。根拠法は社会福祉法。
*1948(昭和23)年から1949(昭和24)年にかけて、占領軍の指導のもと行われたグループワーク講習会。
 D.サリバンらを講師としてグループワーク技術の紹介。

<1960年代>
*1960(昭和35)年 朝日訴訟(人間裁判) 生活保護基準を違憲とする東京地裁1審判決
同年、岩手県沢内村で老人医療費支給制度導入

●1960(昭和35)年、精神薄弱者福祉法制定(現・知的障害者福祉法)

●1961(昭和36)年 国民皆保険、皆年金実現
 (保険料の収納事務開始)

●1963(昭和38)年、老人福祉法制定
 (特別養護老人ホーム創設,新生活保護法で養老院から替えられた養老施設は養護老人ホームに,65歳以上者の老人健康診査制度.老人クラブ助成事業創設)

●1964(昭和39)年、母子保健法制定(現・母子及び寡婦福祉法)
「福祉六法」時代に入る。
◎今日では社会福祉関係の法律は「福祉六法」のほかにも多数存在しているが,歴史的・社会的変化に対応して立法化され,社会福祉関係法のなかで基本的なユニットを構成していることから,通称「福祉六法」とよばれている。

*1967(昭和42)年 朝日訴訟 最高裁判決(39年 朝日氏死去)

*1969(昭和44) 東京都単独で児童手当実施、70歳以上福祉年金受給者の医療費無料化実施

*1972(昭和47)年 堀木訴訟第1審で国側敗訴(障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止は違憲)


● ・・・・・・ 社会福祉制度関連事項、 * ・・・・・・ 社会福祉事業・ソーシャルワーク関連事項

<社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー 第3回>
*11月17日(月)3・4時間目限
*ところ:MGU白金 1255教室
*主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*内容:ソーシャルワーク関連科目(後編)、公的扶助論(後編)
*練習・模擬問題もあります。
 部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます。参加無料。
 今回も、関屋光泰が担当します。
 当セミナーは、以降も開催予定です。
 当日が迫っていますので、受験を予定しているお友達・お知り合いに転送をお願いします。

2008/11/09(日) 社会福祉の歴史(日本編3)各科目共通ポイント
<社会事業の時代>
■解説:社会事業
 社会福祉の発展段階の一つを特徴づける用語。1918年の米騒動を契機にした社会不安を背景とする1920年頃から,戦後の福祉六法体制の成立時期にあたる1960年代頃までが該当する。社会事業が前段階の慈善救済事業と区別される点は,その思想的背景に,隣保相扶から社会連帯責任思想への転換がみられることである。換言すると,生活困窮者に対する救済の公的責任を認めたことである。次段階の社会福祉事業と区別される点は,権利としての受給を認めていないこと,サービス提供が経済的困窮だけに限定されていることである。

*1917(大正6)年、岡山県の済生顧問制度設置。
◎民生委員制度の源といわれる済世顧問制度は,1917年に岡山県において当時の笠井信一知事によって創設。済世顧問は防貧活動をその使命とし、防貧方法は精神上の感化,物質上の斡旋等によって行った。1921年には済世顧問を補充する制度として「済世委員制度」も設けられた。なお,済世顧問が創設された翌年,東京府慈善協会による救済委員制度が創設された。

*1918(大正7)年夏、「米騒動」と呼ばれた民衆蜂起は、全国に広がり各地で軍隊が出動して弾圧した。これを契機に大都市部では無料宿泊所や職業紹介所、貧困児童のための託児所も設置された。

*1918(大正7)年、大阪府の方面委員制度設置。
◎方面委員制度は1918年に大阪府に設けられた制度で,当時の大阪府知事林市蔵と社会事業家であった小河滋次郎がその制度創設に尽力した。当時の社会・経済状況は物価の高騰,米騒動の勃発など社会不安が広がる状況にあったが,方面委員を市町村の小学校通学区域に配置し,区域内の生活状態の調査,改善・向上方法の攻究,要救護者の状況調査と救済方法の攻究,生活安定の方法の攻究などが行われた。小河滋次郎の「社会事業と方面委員制度」(1924年)の理論を林市蔵知事が採用したものである。小河はドイツのエルバーフェルト制度などを研究し、それを日本的に適用しようとした。
 その後,1928年までに同様の制度が全国すべての道府県に設置されるようになったが、統一性に欠けていた。1932年には救護法が実施され,救護委員に方面委員があたることとされたので,1936年に全国統一の組織と運営を行うために方面委員令が制定された。
・方面委員制度は,戦後,民生委員制度(1948(昭和23)年)に改められる

●1919(大正8)年、内務省に社会課がつくられる(第一次世界大戦後)。
◎ 1919年,内務省救護課は社会課に改称され翌年社会局に昇格された。
 1922年,内務省の外局として社会局が設置。

*大正8年、東京市に社会局が設置され、職業紹介所、浴場、公設市場、牛乳配給所、託児場の開設などを行なった。

* 1919年 セツルメント「マハヤナ学園」設立
* 1920年 キリスト教婦人矯風会設立
     興望館セツルメント設立
*1920年 「愛隣社老人ホーム」、松江に設立。
*1924年 東京帝国大学セツルメント設立

*1920年代半ば、世界規模の経済恐慌にみまわれ,失業者,生活困窮者が続出

●1929(昭和4)年、「救護法」を制定(実施は昭和7年)。公的救済を国と地方自治体に義務づけ。恤救規則廃止
◎救護法は、第一次世界大戦後の不況を背景に,従来の恤救 規則にかわって,制定された法律(昭和4年制定,昭和7年7月施行)。1946年(旧)生活保護法が制定されるまで,わが国の一般救貧法として機能した。対象者は,65歳以上の老衰者,13歳以下の幼者,障害者など。救済内容は,生活扶助,医療扶助,助産扶助,生業扶助。実施機関は,市町村。居宅保護を原則とし,収容保護,委託保護を容認。

<要保護児童への個別援助>
*1920年頃、東京府の「児童保護員」の実践。要保護児童への援助の先駆的活動である。
●1933(昭和8)年)、「児童虐待防止法」制定。児童の労働酷使が中心。14歳未満の子どもを保護する責任のある者に対し,刑罰法令に抵触するか,そのおそれのある子どもの虐待を行った場合,訓戒,条件つき監護命令や,私人や施設への子どもの委託を行うとした。また子どもの虐待につながる業務や行為を禁止し,違反者には懲役や罰金を科した。

*アメリカでチャイルド・ガイダンス・クリニックの実践に学んだ竹内愛二が児童保護領域へのケースワークの必要性を説いた。

<戦時厚生事業への転換>
*1930年代、中国東北部への侵略戦争
● 1938(昭和13)年、厚生省を設置し「社会事業法」制定。戦時厚生事業が始まる。
 厚生事業とは、戦時的状況での社会事業の一形態である。1937年に始まる日中戦争を契機として,軍事扶助法の制定,厚生省の新設,国家総動員法の制定などの過程を経て,それまでの社会事業が厚生事業と改められた。背景には、戦争遂行のための健民健兵政策としての人的資源の保護育成がある。

<戦後体制へ>
● 1945年12月 生活困窮者緊急生活援護要綱
 著しく生活に困窮せるもので,失業者・戦災者・海外引揚者・傷痍軍人・軍人遺族等を対象とする.施設収容・生活必要品給与ほか.

●1946年2月、SCAPIN 775号
◎SCAPINとは連合国最高司令官指令のことであり775号は,1946年2月27日に出された公的扶助3原則の指令である。GHQは,保護の無差別平等,扶助の国家責任の明確化,最低生活保障の3原則を日本政府に指令した。これらの原則はその後の生活保護法に原理・原則として組み込まれた。
●1946(昭和21)年、日本国憲法公布 翌年5月3日施行。

● 1946(昭和21)年、「旧生活保護法」制定
(保護国家責任・無差別平等・最低生活保障など占領軍指令を取り入れるが、素行不良者は不適格などは救護法を引き継ぐ)

* 1946(S21)、近江学園を糸賀一雄が設立。

●1947(昭和22)年、児童福祉法 制定
●1949(昭和24)年、身体障害者福祉法 制定
● 1950(昭和25)年、現行(新)生活保護法 制定

2008/11/08(土) 模擬試験問題・解き方のテクニック紹介
<模擬試験直前 問題攻略テクニック>
 問題を解くときに、先ず頼るのは覚えてきた知識であり、次に(もしくは並行して)頼るのは4年間で培った、ソーシャルワーク的な思考法・常識で判断することになる。
本日、紹介するのは、上記の知識も思考でもカバーが難しい場合にどうするかという、模擬試験の攻略テクニックである。

<問題の形式別、解き方のテクニック>
1 「正しいものを一つ選べ」正答択一型の問題(選択肢から内容的に正しいものを選ぶ)
@当然ながら、最も「正しい」と自信がある選択肢をマークする。
 ただし、一つの選択肢の中に、2つの内容が記述されている場合は、2つとも正しいことが必要である。一つの選択肢に、2つの内容が含まれている場合、双方とも正しければ、○である。しかし、一方が誤りであれば×である。
A全ての選択肢についてよく知らない、忘れた場合は、自らの思考・常識に頼る。絶対に、諦めないことが大切である。選択肢をよく読めば、常識的に考えて納得がいくものがあるはずであり、それを選ぶ。逆に常識から誤りと分かるものは先に消すことは(消去法)、考察を助ける。

2 「誤っているものを一つ選べ」誤答択一型(選択肢から内容的に正しくないものを選ぶ)
@ 最も「誤り・適切でない・×」であると自信があるものをマークする。
A全ての選択肢について、よく知らない場合は、思考・常識に頼る。選択肢をよく読めば、常識的に考えて「これは間違っている・おかしい(内容的に誤っている)」と思えるものがあるはずである。分からない問題は、焦らず、先ずはよく読み、そして考える。それでも駄目ならば、潔く運に委ねて、次の問題を頑張るだけである。

3 ○×組み合わせ型「適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選べ」
<解き方の過程>
過程1:○ × のパターンを見渡す
過程2:知識と常識から自信がある記述(AからD)を見つけ、それが○か×かを判断し、選択肢を絞り込んでいく。もちろん、判断しやすいものから攻めていく。
過程3:○× 組み合わせ選択肢が2つくらいになり、それ以上絞り込めなかったら、後は運に委ねる。消去法も考察を助ける。

4 事例問題(援助後術論等)先に事例を読むか、問題の方を先に読むかはそれぞれである。事例が苦手な人は、これまでの自分のパターンを試験的に逆にしてみよう。
なお、試験終了時間が迫っている場合は、事例文を読まなくても、問題だけ読めばある程度は解ける問題もある。最終手段として使いたい。


<選択肢ごとのテクニック>
1 選択肢の文章の中に「常に」「必ず」「絶対」「全て」「いつも」等のワードがあり、断定的・固定的な記述になっている選択肢は、内容的に誤り(×)であることが多い。
 →無理のある記述、やたらに強気な記述は誤り(×)のことが多い。

2 選択肢の文章中に「〜ということもある」「〜とは限らない」等の表現があり、譲歩的な記述になっている選択肢は、内容的に正しいこと(○)であるが多い。
 →控えめな記述は正しい(○)のことが多い。

3 初めて目にする言葉・名称が登場しても焦らない、諦めない。先ず、選択肢をよく読み、思考法・常識から考えれば、どう考えても不適切なもの、正しいものを発見できるはずである。

4 場合によっては、出題者のミスにより正答が欠如している場合もある。これが疑われる場合は、考え込まず、時間を浪費せずに次の問題へ進む。

<管理人が作成中の、公的扶助論やソーシャルワーク、社会福祉の歴史等に関する資料・レジュメ集です。未整理で恐縮ですが、参考です。>
 http://jbbs.livedoor.jp/study/9517/

2008/11/07(金) 社会福祉の歴史(日本編2)各科目共通ポイント
第2章 社会福祉の歴史・日本における社会福祉の史的展開2
1889(M28)、「聖ヒルダ養老院」が日本最初の養老院として設立された。

*1899(明治32)年、留岡幸助の家庭学校(教護活動)
 留岡幸助は、同志社神学校を卒業後,牧師を経て,北海道空知の集治監(監獄)教誨師となる。その際,幼年犯の処遇改良の必要性を感じ,1894年,アメリカのコンコルド感化監獄で研修。帰国後,1899年,東京巣鴨に私立の感化施設「巣鴨家庭学校」を創設。1914年,北海道遠軽に「北海道家庭学校」を創設。キリスト教精神に基づき「徳育、知育」といった教育を重んじ、農業や木工などの労働により人間形成を目指した。自然的環境の中に配置した15人以内の子どもと、両親の代替である男女のスタッフを置き、家庭的雰囲気を重視した施設経営が行なわれた。

*明治33年、貧民街に「二葉幼稚園」設立。

*明治44年、山室軍平『公娼全廃論』
◎山室軍平 (1872-1940) : 明治・大正・昭和初期の社会事業家。岡山県出身。同志社において神学を学び,1895年に日本救世軍に参加。以後,日本救世軍司令官,救世軍中将として救世軍の発展に尽力し,日本のキリスト教社会事業の開拓的役割を果たした。[主著] 『平民之福音』 1899

*1899年、滝乃川学園を石井亮一が創設した。
 石井亮一は、セガンの影響からこの学園において,精神薄弱児教育の父となった.



■用語解説:賀川豊彦  (1888-1960) 神戸市出身で,明治学院神学部予科・神戸神学校を卒業。その後,アメリカに学ぶ。
 1909年、キリスト教の伝道者として神戸新川の貧民街で伝道に努めるとともに,キリスト教社会事業家としてセツルメント活動を行う。また,労働組合,農民組合,生活協同組合運動などでも多彩な活躍をした。多数の著作があり,『死線を越えて』(1920)はベストセラーとなった。

*1899(明治32) 横山源之助『日本之下層社会』

●1899(明治32)行旅病人及び行旅死亡人取扱法制定(現行法)
 第一条 行旅病人ト称スルハ歩行ニ堪ヘサル行旅中ノ病人ニシテ療養ノ途ヲ有セス且救護者ナキ者ヲ謂ヒ行旅死亡人ト称スルハ行旅中死亡シ引取者ナキ者ヲ謂フ. 2 住所、居所若ハ氏名知レス且引取者ナキ死亡人ハ行旅死亡人ト看做ス.
 第二条 行旅病人ハ其ノ所在地市町村之ヲ救護スヘシ. 2 必要ノ場合ニ於テハ市町村ハ行旅病人ノ同伴者ニ対シテ亦相当ノ救護ヲ為スヘシ

●1900(明治33)精神病者監護法
 精神病者の公的な監禁を禁じたが、自宅の座敷牢などで「私宅監置」が認められていた.

*1903年、日本慈善同盟の結成。
 1908年には中央慈善協会となった。後には地方にも社会事業協会が創設され、わが国の社会事業の近代化、組織化に大きな役割を果たした。
 中央慈善協会の会則の「目的」には、内外の慈善救済事業の調査、慈善団体相互の連絡や,団体と慈善家との連絡を図ること,慈善事業を奨励し,行政を翼賛することが掲げられ、上からの組織化が前面にでていた。

*1908(明治 41)年、内務省は「第 1 回感化救済事業講習会」開催し、社会事業従事者教育の始まりとなった。36日間にわたり、25科目及び臨時講演140時間、受講300人弱。内容は、救済・感化事業を中心としつつ、都市農村改良から施設管理にまで及んだ。感化事業の処遇内容に重点がおかれた。

●1908明治41年、「済貧恤救は隣保相扶の情誼に依り互いに協救せしめ国費救助の濫給矯正方の件」を内務省は通達し、救助を制限した。明治41年には13090人がだった受給者が、明治42年には3753人に激減

*1909年、井上友一の『救済制度要義』が著される。「夫れ救貧は末にして防貧は本なり防貧は委にして風化は源なり」、つまり、救貧よりも防貧,防貧よりも教化が根本的であり、これを推進しようとした。井上は、階級分化の深刻化や「継承的貧民」の形成前に、「良民」=独立自営の勤労国民となることを奨励する方向を最良と考え、救貧を排したのである。
井上の「経恤的行政及法制」とは、(1)救貧は「人民相互の情誼」を傷つけ、独立自助心を破壊する背徳の途と考えた。「公利公益」、共同体の隣保相扶を重視した。(2)エルバーフェルト制度等の救済取締り制度を導入した。風化制度とは、普通教育以外の風気の善導であり、児童救済・勤倹勧奨・庶民教化を井上は挙げている。それは、社会改良よりも精神的要素の救済が重要と考えた。また、風化事業は階級調和のみならず国運の発展に期するところがあるとした。

*明治44年、下谷・浅草,明治45年・大正元年に本所・深川・大阪などで細民調査を内務省地方局が実施した.日本の科学的貧困調査のはじまりであった。
明治45年「細民戸別調査記入心得」によれば、細民と称するのは、細民地域に居住する者、人力車牽き等の都市雑業に従事する者、家賃三円以内の家屋の居住者、世帯主の収入月額20円以内の者と規定していた。

*明治44年、「浄土宗労働共済会」創立。深川における防貧事業とセツルメントであり、創立者の渡辺海旭は仏教慈善事業の開拓者であり、サンスクリットの世界的学者であった。ドイツ留学から帰国後、ドイツ「労働者の家」の影響によって事業を開始。
渡辺の理念として、相互扶助的発想、仏教有機体説に基づく「慈悲の平等性」を挙げることが出来る。渡辺は、仏教の報恩思想による差別感克服や、社会的救済を為すための人類相愛と防貧を論じた。(『慈善事業の要義』明治44年)渡辺の思想の基本は、共済=相互扶助=相互報恩と、人格=「一切衆生悉有仏性」観にたっている。
*明治45年、渡辺を中心に「仏教徒社会事業研究会」を創立。

*明治45年、生江孝之『欧米視察 細民と救済』。近代的社会連帯思想を論じた。
* 大正2年、原胤昭『出獄人保護』が著された。
*大正2年、大阪救済事業研究会設立、機関誌『救済研究』発刊。

2008/11/06(木) 社会福祉の歴史(日本編1)各科目共通ポイント
<昨日の、米国におけるソーシャルワークの発展については、セミナー第1回にて解説済みでした。復習をしましょう。>

第2章 社会福祉の歴史・日本における社会福祉の史的展開 1
1 救済行政と宗教活動
 古代律令制度から明治維新(恤救制度)にいたる日本の救済制度は中国の救済制度の影響を受けていた。
中国の救済制度とは、家族制度と地域制度を基盤に,儒教や仏教の思想が背景にある。
・古くは、孤児・病者を養う悲田院とともに施薬院がおかれている。
また、僧行基は救貧事業を行った。これは仏教慈善事業とつながりが強い。
しかし農民救済制度としては災害・飢饉に対する荒政・常平倉・囲籾といいた備荒貯蓄,古くは義倉などもそのなかに含まれる。

2 村落共同体の相互扶助
・室町時代には、キリシタンによって自然科学的方法を取り入れた兄弟愛的慈善活動が行われる(ミゼルコルディア。他、救癩・孤児院・病院づくり)が,幕府の禁制によって長く弾圧された。
・徳川幕府は、幕府と藩の二重体制で租税方式をとり、商業の台頭と貧富の格差の増大,天災や飢餓により増加してきた窮民に対しては,「五人組制度」により相互扶助と連帯責任を強要した。五人組は本来,住民相互の自発的な相互扶助を、国家が制度として強要した。
・江戸末期の儒学者の救済論は 1)救貧よりも防貧重視 2)家族制度を重視し,血縁,地縁,国主の順で責任をとる 3)村落共同体の救済を重視し都市貧困層には帰農,開墾奨励.

■解説:隣保相扶
◎隣保相扶とは、村落共同体を中心とした相互扶助思想をいう。公的救済概念が発生する以前の,人々の自然の発露としての救済思想を基盤にした相互扶助である。1874年に制定された恤救規則は,前文に「人民相互ノ情誼」を掲げ,隣保相扶を公的な救済の前提条件とした。江戸時代の五人組制度,戦時下の隣組制度などもその一形態である。
*日本では「家」制度と村落共同体に基づく相互扶助の思想が根強い。

3 恤救と慈善の間で
<ポイント>
・明治維新後、急速な産業革命・近代化の背後で,貧困に伴う生活問題は増大し、都市の貧困地区の形成,劣悪な労働条件,健康破壊や非行・犯罪などが多発した。また、所謂「身売り」、捨て子の問題など、人権問題も深刻化していた。
・明治2,3年前後、江戸時代の下層社会を母体にして、都市の細民街が形成された.乞食・浮浪者・下級職人・日雇・土方・零細行商人・零細自営業者など。また、維新の政治的変革から生まれた浮浪者・無籍者や貧困者が増え,士族の失業問題が深刻さを加えた. 

●明治4年、「棄児養育米の達」、0歳〜15歳までの棄児に年7斗の米を支給

●1874(明治7)年「恤救規則」が制定−
 農民一揆の激増を機に制定された、日本初の救貧法・制度である。
◎恤救規則とは、1874年に府県に出された通達(明治7年太政官達162号)であり,窮民に対する国による救済策を示したもの。この規則においては「人民相互ノ情誼」が強調され,生活困窮者に対しては血縁・地縁による相互扶助を第一に優先させることを旨としている。公的救済は、家族の扶養を受けられない者に対象を制限し,極貧の労働不能者,70歳以上の老衰者,病者,13歳以下の子どもに対して,一定限度の米(その後,米代に変わる)を支給するものであった。

*1879(明治12) 京都府立盲唖院設立(盲児,聾児への職業教育)

*1880(明治13) 楽善会盲唖院開設(盲生は鍼・きゅう・按摩や音楽,唖生は裁縫などの職業教育中心)


■用語解説:キリスト教社会事業
 キリスト教の信仰を基盤に,主に教会を中心として実践される社会事業。明治期に入って多くのクリスチャンが近代社会事業の実践家として活躍した。事業内容は,児童保護,監獄改良,医療保護,廃娼運動,禁酒運動,隣保運動などであった。

*1880(明治13)年、東京YMCAをはじめとする青少年団体の集団援助活動。

*1887(明治20)年、石井十次によって岡山孤児院は、「孤児教育会」として設立。「家族制度(現在の小舎制)」の導入、里託児制度の設置、非体罰主義、海外をも巡回した募金事業を行なった。濃尾震災、東北三県凶作などの孤児を収容し、「孤児無制限収容」方針発表後、一時1200人規模の施設となった。その後、入所児童の農業的独立のために、宮崎県茶臼原へ全面移転し、1926(大正15)年に解散した。
・孤児院の他に、石井十次は、大阪「愛染橋保育所」など、セツルメント的な事業なども試みた。

*1897(明治30)年、片山潜のセツルメント「キングスレー館」設立
 キングスレー館とは、片山潜がアメリカにてキリスト教社会主義,社会問題を研究し、帰国後,1897年3月、東京の神田三崎町にグリーンの支援を得て設立した日本の先駆的セツルメント施設である。琴具須玲館とも表記。「基督教社会事業の本営」として,青年倶楽部,講演会,大学普及講演,西洋料理,英語,市民夜学校,職工教育会など労働者教育型の事業を展開した。労働運動,社会主義の方向性や当時の社会状況の困難から1910年代に入り活動を終えた。

2008/11/05(水) 社会福祉の歴史(欧米編6)各科目共通ポイント
<米国におけるソーシャルワークの発展史 2>

◆M.リッチモンドのケースワーク体系化への貢献
・アメリカの社会構造の変化とリッチモンドの登場
 M.リッチモンド(M.E.Richmond)の生涯は,アメリカ合衆国で南北戦争が始まった1861年から、大恐慌が勃発する前年にあたる1928年までであった。アメリカは工業化による高度成長とともに,都市間題の出現,貧富の格差の増大が社会問題を激化させた。社会構造の変化による矛盾を克服するために、慈善・博愛の活動も,専門的活動へと転換する必要性が生じ,ソーシャルワークヘの転換が形成されるようになった。

*1889年、リッチモンド、ボルチモア慈善組織協会に就職
*1899年、リッチモンド、『貧困者への友愛訪問』を著す。友愛訪問を「貧困者の家庭の喜び,悲しみ,意見,感情,そして人生全体に対する共感をもって常に身近に知ること」と定義した。リッチモンドはアメリカにおけるソーシャルワークの指導的人物とみなされるようになった。

* 1917年、リッチモンド「社会診断(Social Diagnosis)」を著す。
 ケースワークの理論と方法を専門的水準に高め,「ソーシャルワークが単なる親切ではなく,専門職実践」として位置づけた。ソーシャルワークの原理を確立したこの書籍は、多数のケース記録を当時の医学や法学など諸科学の知見から分析したものである。 
 「社会診断」は,貧困問題等にあらわれる利用者の社会的困難と社会的要求を把握するために,利用者と社会環境の関係をできるだけ正確にとらえていく方法を指していた。その過程は,「社会的証拠の蒐集→比較・推論→社会的診断」と進められ,@利用者との最初の十分な面接,A利用者の家族との早期の接触,B家族以外の協力者の調査,が必要であるとしている。また、ソーシャルケースワークとは「さまざまな人のために、さまざまな人とともに、彼ら自身の福祉と社会の改善をとを同時に達成できるよう、彼らと協力して、さまざまなことを行なう技術」であると述べており、ケースワークは「社会改良の小売的方法」であると位置付けた。

*1922年、リッチモンドは「ソーシャル・ケース・ワークとは何か(WhatIs Social Case Work?)」を著し,「ソーシャル・ケースワークは人間と社会環境との間を,個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる諸過程から成っている」と定義した。またリッチモンドは、人を「社会的諸関係の総体」からなるものとして捉え、その「社会的諸関係」を調整することによってクライエントのパーソナリティの発達を図っていくところにケースワークの独自性を求めた。
 リッチモンドは、ケースワークの基本になるべき事柄を,@社会環境の中の人間としてとらえること,Aケースワークが専門職であること,Bソーシャルワーク実践が経験の蓄積を通して実証的に理論化されるべきものであること,C利用者の主体性を尊重すること,D諸科学の知識を基礎とした合理的判断と科学的方法の5点に集約し,「専門家は訓練と専門的経験を通じて成長していく存在であること」を指摘した。

・彼女の示したケースワークは「社会環境を通してなされる包括的,多面的なアプローチ」であり,しかも個別化の原則,面接の重視,生活史の解明と事例研究,実践記録の重視など,今日のケースワークの基本的方法がすでにリッチモンドによって体系化されていたことがよくわかる。それは,医学の診断に学びながらも,人と環境の間で起こる生活問題に焦点化されたソーシャル・ケースワークの方法であり,個人と社会環境への洞察をもとに人にはたらきかける直接的援助と環境にはたらきかける間接援助の両方の必要性を明確に示した。
 これらは今日のケースワークにおいても基本となるべき事柄であり,「ケースワークの母」といわれる所以である。その後も社会福祉援助技術はアメリカを中心に発展することとなる。


* 1929年、ミルフォード会議報告書『ソーシャルワーク――ジェネリックとスペシフィック』。
 ケースワークにおける「ジェネリック」と「スペシフィック」の捉え方の重要性が提起され、ソーシャルケースワークの統合化が早くも試みられた。
 ここでのジェネリック・ケースワークとは、実践の各分野に共通な概念、知識、方法、社会資源など、基本となる原理、過程、技術を示す基本的ケースワークをいう。スペシフィック・ケースワークとは、家庭、児童、障害者などのそれぞれの実践分野で行われるケースワークで、各分野に固有の特殊な知識や方法が求められる。またこのとき、援助技術の専門分化、つまりケースワーク、グループワーク、コミュニティワークといういわゆる、伝統的な3方法(援助技術)の分化が進んでいた。

・ミルフォード会議とは、ペンシルベニア州ミルフォード市で開かれた,ケースワークのあり方に関する会議。1923年,専門分化していた,アメリカ家族福祉協会,アメリカ児童福祉連盟,アメリカ精神医学ソーシャルワーカー協会,全国訪問教師協会,全国保護観察協会などの団体が集まり,「ケースワークに関する思考と実践の混乱,不確定性,正確性の低さ」に対応すべく開催。その後,1928年まで毎年継続され,29年に報告書として,その成果が報告された。

2008/11/04(火) 社会福祉の歴史(欧米編5)各科目共通ポイント
社会福祉の歴史 欧米における社会福祉の史的展開 5
<イギリスの報告・続き>
*1978年、ウルフェンデン報告
・多元的な福祉システムにおけるイギリスのボランタリーセクターの役割について報告書(Wolfenden  Committee Report)。民間財団の委託を受けた委員会(座長:ウルフェンデン卿Wolfenden, J. F.)によってまとめられ,1978年にThe Future of Voluntary Organisationsとして発刊された。硬直的・官僚的な公的セクターや未組織のインフォーマル・セクターなど多元的な福祉システムのなかにあって,個人のニーズの充足や,援助を求める者とボランティアとの橋渡しなど,補完的,先駆的,仲介的な役割を果たすことをボランタリー・セクターの将来の方向性と位置づけた。公的資金によるバックアップや媒介団体の役割強化なども提言されている。

*1982年、バークレイ報告
・イギリスにおけるソーシャルワークの現状と課題について検討するために設けられた政府委員会(座長:ピーター・バークレイBarclay, P.)による報告書(Social Workers : Their Roles and Tasks)。1982年に発表。コミュニティ・ソーシャルワークの可能性に言及し,ソーシャルワーカーの役割について,伝統的な個人や家族に対するケースワークだけでなく,コミュニティにおける多元的な福祉システムのなかで,資源と個人・家族を結びつけ,ネットワークを開発・発展させるためにカウンセリングとソーシャル・プランニングの両方を求めるとともに,官僚主義的なシステムの改善,チーム・アプローチなどを提案している。しかしながら,報告書としての見解は統一されず,伝統的な個別援助を重視する立場からコミュニティへの期待を疑問視するピンカー委員からの反対意見など三つの報告が併記された。(第16・6回試験)

*1988年、グリフィス報告
・イギリスのコミュニティ・ケア政策のあり方について政府の諮問を受けたグリフィス卿(Griffiths, R.)による報告書(Community Care : Agenda for Action)。1988年に発表された。コミュニティ・ケアに関して地方自治体が責任をもつこと,サービスの購入者と提供者を分離し,地方自治体は個人のニーズのアセスメントに基づいて必要なサービスを営利・非営利を含む多元的な供給主体から購入することなどが提案され,効率的な資源供給のためのケアマネジメントの重要性が指摘されている。その提言の多くが,NHS・コミュニティケア法(1990年)へとつながった。(第16・6回試験・参考)

*1990年、国民保健サービス(NHS)・National Health Services and Community Care Act
 国民保健サービス(NHS)と,コミュニティケア・在宅福祉サービスの総合的な調整を図ることを目的に成立した。ノーマライゼーションと福祉多元主義の考え方を基礎に,医療の民営化(内部市場化),インフォーマル・民間部門の促進とネットワーク化,中央・地方政府における財政責任と運営責任の明確化,ケアマネジメントの徹底化を図り,日本の介護保険制度の手本にもなった。


<米国におけるソーシャルワークの発展史 1>
■ソーシャルワークの専門化のきざし
<ポイント>
 ケースワークの基礎の確立は1920年までに行なわれた。COS・慈善組織化運動による友愛訪問やセツルメントなどの民間機関の援助活動が母体となって、リッチモンドによってケースワーク理論が体系化された。
M.リッチモンドは、ケースワークに諸科学の知見を導入して、専門技術としての体系化と発展を促進した。1917年『社会診断』を著し、ケースワークの体系と基本的枠組みを示した。 

<解説>
◆専門化のきざし:経験主義的な援助技術の限界からソーシャルワークの専門化の必要性が必然的に生じた。
・専門化のきざしとは、@社会福祉組織・団体への有給専任職員の配置、A社会福祉専門教育のはじまり、B関係団体・連盟の全国組織化、C全国会議の開催 である。
<その経過>
*1898年、ソーシャルワーク夏期講習の開始 (ニューヨーク慈善組織協会)
*1903年、シカゴ 1904年、ニューヨーク 博愛事業学校開設

*1905年,マサチューセッツ総合病院に「ソーシャル・アシスタント」採用。キャボット(Cabot, R. C.)医師が,患者を理解するためには身体状況だけではなく,精神状況や環境的な背景を把握することが必要として,「ソーシャル・アシスタント」(MSW)をおいた。
 1907年(異説有)、同病院神経科に精神医学ソーシャルワーカー採用。
(1895年,イギリスでは生活困窮患者を援助する役割として,アルモナー、almonerとよばれるソーシャルワーカーが王立施療病院におかれた。)

*1911年、全米慈善組織協会 結成
*1912年、全米セツルメント連盟 結成

*1915年、フレックスナー報告「ソーシャルワークは専門職か?」
・アメリカ・ボルチモアでの全米慈善・矯正会議(National Conference of Charities and Correction 1873年開始)において、エブラハム・フレックスナー(Flexner,A.)の「ソーシャルワークは専門職か?」が発表された。この講演では、専門職が成立するための「6つの属性」を明確に提示した。
 @ 基礎となる科学的研究(基礎科学)のあること
 A 知は体系的で学習されうるものであること
 B 実用的であること
 C 教育的手段をこうじることよって伝達可能な技術があること
 D 専門職団体・組織を作ること
 E 利他主義的であること
 フレックスナーは、このモデルに準拠して「現段階でソーシャルワークは専門職に該当しない」という結果を導いた。(17回試験出題)

*1921年、アメリカ・ソーシャルワーカー協会 結成

2008/11/03(月) 社会福祉の歴史(欧米編4)各科目共通ポイント
 社会福祉の歴史 欧米における社会福祉の史的展開 4
<イギリスの歴史・続き>
■ナショナル・ミニマム
 国家がすべての国民に最低限の生活を保障すべきという理念。この理念は,シドニー・ウェッブが最初に提唱したとされる。ウェッブによれば,ナショナル・ミニマムとは,最低賃金などの所得保障にとどまらず,最低限の教育,衛生,余暇を含むもので,雇用条件,衛生的環境と医療サービス,余暇とレクリエーション,教育の分野で,国や自治体が,ナショナル・ミニマムを維持する必要があると主張した。その後,「ベヴァリッジ報告」(1942年)に「最低生活費保障原理」として取り入れられ,イギリスの福祉国家の基本理念となった。もっとも,ナショナル・ミニマムは一つの理念であり,その基準は,歴史的,社会的にも規定される。

*1942年、ベヴァリッジ報告
 1942年,第二次世界大戦後のイギリス社会再建のための社会保障計画を提示し,乱立し非効率な既存制度の再編をねらった,ベヴァリッジ(Beveridge, W. H.)を委員長とする委員会の報告書。正式には,「社会保険および関連サービス」(Social Insurance and Allied Services)。再建目標を五つの巨人(疾病,無知,不潔,無為,窮乏)への攻撃にたとえ,それぞれに対する社会政策が相互に機能すべきとした。窮乏に対する所得保障には社会保険を重視し,その基本原則にナショナル・ミニマム保障や均一給付・均一拠出等を掲げた。
 報告書は、@リハビリテーションを含む包括的国営医療サービス、A多子家族の所得保障として第2子以降への児童手当、B失業率を一定限度以下とする完全雇用政策を前提とし、年収75ポンド以下には加人の選択権を認めつつ、強制的拠出原理に基づく総合的社会保険の加入を義務づけている。
・イギリスの戦後の社会保障は,ベバリッジ報告をもとにして制定された,家族手当法,国民保険(業務災害)法,国民保険法,国民保健サービス法,国民扶助法の諸法によって運営されることとなった。
 この体系では,社会保険制度を中心におき,公的扶助制度は,社会保険制度の網の目からこぼれるケースを扱う補完的な制度として位置づけられた。

*1948年、国民保健サービス National Health Service ; NHS
 ベヴァリッジ報告を踏まえ成立した医療保障制度。予防からリハビリテーションまで含む包括的な保健・医療を,税方式に基づき原則無料で提供している。患者はまず地域の家庭医(GP)の診察等を経て病院の医師にかかるのが原則。保守党政権は国営医療の効率化を図るため1990年の制度改正で病院間競争を促す仕組を導入したが,政権交代後も大枠を維持しつつ計画的な医療供給がめざされている。
*1948年、国民扶助法の成立
 国民扶助制度の成立により、救貧法が廃止された。
■「ゆりかごから墓場まで」
 イギリスにおいて,1942年にベヴァリッジ報告がだされた後に確立した包括的社会保障体制を言い表したことば。人が生まれてから死ぬまでの必要最低限の生活保障を,保健,医療,所得保障などの社会保障制度を国家責任のもとで実施することによって保証するという考え方。

*1966年、補足給付 supplementary benefit
 イギリスの国民扶助制度では漏救が問題になったため,給付手続の簡素化や資力調査の緩和,また,裁量的な加算給付の範囲を狭めて給付の標準化を図ることなどを目的として,この公的扶助制度が発足した。しかし,しだいに制度が複雑化するとともに,個別の必要に応じるための割増金が増えて恒常化したことや年金受給世帯に比べて有子世帯が不利に取り扱われていたことなどから,1988年、所得補助・社会基金制度に改められた。

<イギリスにおける諸報告>
*1968年、シーボーム報告 
・1968年にイギリス政府に提出された公式報告書(Report of the Committee on Local Authority and Allied Personal Social Services)。フレデリック・シーボーム(Seebohm, F.)を委員長とする委員会であり,地方自治体の対人福祉サービスの組織と責任についての再検討,および家族サービス活動の効果的な実施を保障する改革案の考察を目的とした。地方自治体において別々に運営されていた対人福祉サービス部門を単一の部局に統合し,地域のニーズに総合的に対応するソーシャルワーカーを配置することなどを提言している。(第12・2回試験)

<次回に続く>


<再掲:MGU 社会福祉士・精神保健福祉士 国家試験 受験支援セミナー>
*11月10日(月) 3・4限 (13:10開始予定)
*ところ:MGU白金 1255教室
*主催 MGU 社会学・社会福祉学会
*内容:「社会福祉の歴史」(社会福祉原論を中心に、各科目共通)を予定。
*部分参加も可能です。どの学年の方も参加出来ます、各学年の皆さん、お気軽にご参加ください。
 上記は、 関屋光泰 が担当します。模擬試験もあって4年生の方々は大変でしょうが、ここが踏ん張りどころです!!
 11月は当セミナーは、10日の他にも開催予定です。開催予定は、ソーシャルワーク科目(後編)、社会保障論等です。皆さんの受験を全力で応援します!!

*日時などお間違えないよう、念のために再掲しました。
 参加される皆さんは、会場まで気を付けてお越しください。

2008/11/02(日) 社会福祉の歴史(欧米編3)各科目共通ポイント
■社会福祉の歴史 欧米における社会福祉の史的展開 3
3 都市社会事業の発展
*1884年、セツルメントハウス「トインビー・ホール」をロンドン東部に創設(バーネット夫妻)。
 夫のサミュエル・バーネットは,1872年に司祭となり,貧困者救済委員会ホワイトチャペル地区委員として,貧困地域の救済活動に従事した。1884年,妻ヘンリエッタとともに,オックスフォード大学の学生および教授に協力をよびかけ,世界最初のセツルメント・ハウス,トインビー・ホールを創設。サミュエルは,その初代館長となった。若き経済史学者トインビーを記念して名づけた。
■セツルメント
 セツルメントとは「殖民、住み込む」を意味し,貧困に苦しむ労働者居住地区に、教養と人格を兼備する知識人(当時の大学生など)などが「住み込む」活動である。「レジデント」が住み込み、住民・労働者と知的及び人格的接触を通じて、福祉の向上を図る地域活動である。具体的には、住民・労働者たちと共同で、貧困調査、労働者会議、成人教育、共同保育所、法律・市民相談、学習・レクリエーションのグループ活動といった生活環境の改善など、地域活動と社会改良運動を展開した。
 その理念はエドワード・デニソンによって慈善事業のなかで形成された。知識人が殖民し、スラム住民の教育を通じた人格の回復と、知識人には貧困解決のためにの社会改良の必要性の認識を図るものである。
及ぶ。 

*1886年,ニューヨークの「ネイバーフッド・ギルド」の創設がアメリカでのセツルメントの嗜矢となった。
* 1889年、「ハル・ハウス(Hull House)」、J. アダムスがにシカゴに開設したセツルメント・ハウスである。
 開設当初は,博愛主義に基づく穏健な地域活動で,保育園,少年クラブ等の教育的なプログラムが中心であったが,社会改良思想家等が参画して以降,革新的な社会運動的側面を有するようになり,児童労働保護運動,少年裁判所設置,児童相談所の設置等の児童福祉に関連する諸問題に活動の力点をおいた。
◎J.アダムス Addams, Jane (1860-1935)
 ロックフォード女学院卒業後,一度医師をめざすが病のため断念し,1889年にシカゴ市のスラム街でセツルメント,ハル・ハウスを創設する。その後アメリカでセツルメントを普及させ,社会改良の近代化に貢献した。1920年代以降は,平和と女性の運動に力を注ぎ,日本を含む世界各国を視察し,女性運動家等に大きな影響を及ぼした。1931年ノーベル平和賞を受ける。[主著] “The Objective Value of a Social Settlement”, 1893 ; Twenty Years at Hull-House, 1910.

<貧困調査・研究の開始>
■ブースとラウントリーの調査等により、貧困の原因が社会的なものであることが検証された。
*1886年〜 C.ブースのロンドン調査
 C.ブースのロンドン調査が1886年から1902年に行なわれた。
■ ブースBooth, Charles (1840-1916)
 社会改良を目的とする社会調査の先駆者である。私財を投じて「ロンドン調査」として知られる貧困調査を行い,その結果を『ロンドン市民の生活と労働』』(Life and Labour of the People in London, 17 vols., 1902-03)として報告した。貧困問題がたんに慈善の対象ではなく,国家の施策として取り組むべきものであることを明らかにし,無拠出年金制を提案。救貧法に関する王立委員会に参加し,救貧法の抑圧的方法を批判するなど,20世紀初頭のイギリス救貧行政に貢献した。

*1899年〜 B.S.ラウントリーのヨーク調査
 ラウントリーは、第1回のヨーク市調査(1899年)において、貧困線の水準を設定した。
■ ラウントリー (1871-1954)
 イギリスの社会調査家。ローントリーとも表記される。ヨーク市で貧困線と最低生活費の測定を行うとともに,労働者のライフサイクルと生活水準の間に周期的な変動があることを明らかにした。また,生活保護基準算定のマーケット・バスケット方式の考案者として,わが国にも影響を与えた。
■第一次貧困/第二次貧困
 ラウントリーが,『貧乏――地方都市生活の研究』(1901)で,貧困層の量だけでなく質を把握するために用いた,貧困の区分。第一次貧困とは,世帯の総収入が,家族員のたんなる肉体的能率を維持するための最小限度にも足りないほどの貧困であり,第二次貧困とはその収入の一部が他の費途に転用されないかぎり,たんなる肉体的能率を保持できる程度の貧困をさす。

<ナショナルミニマムの登場>
*1905年、救貧法に関する王立委員会の設置
*1909年、救貧法に関する王立委員会報告
「新救貧法(1834年)」の見直しのために、1905年に保守党内閣(イギリス)が設置した委員会が1909年に提出した報告書。
委員会は新救貧法法による救済委員会,教区連合,一般混合の労役場(ワークハウス),劣等処遇等の弊害を変更する必要性では一致した。しかし改正方法では,救貧法の枠内の微温的改良を主張する多数派と救貧法の解体をめざす少数派が鋭く対立した。報告は両論併記したため,当時の政治状況ともあいまって具体的改正に結実しなかったが,ニーズに即した普遍的サービス保障,窮乏の予防の組織化によるナショナル・ミニマム保障などの少数派(ウェッブ等)の主張は,その後のイギリス社会保障の確立に多大な影響を与えた。
■ウェッブ夫妻
 イギリスの社会主義者。フェビアン協会のメンバーとして活動し,労働組合運動や消費組合運動の発展と議会制民主主義に基づく社会正義をめざした。最低賃金,労働条件の改善や,住宅,医療,教育,年金などを包括するナショナル・ミニマムの保障を説いた。また,救貧法改革王立委員会のメンバーとして少数派報告をまとめ,福祉国家の誕生とその理論的な発展にも大きな影響を与えた。


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