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2008/01/28(月)
暖かい人間性あふれる巨匠たち
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かの巨匠、ジェームス・ゴールウェイ氏とフィリップ・モル氏の演奏会が、近場のヘルムシュタットで行われ、昨夜行って来ました。 良い時間の電車がなくて、嵐の中、2時間近く前に会場についてしまい、会場はまだ閉まってるし外は嵐だしどうしよう、と思ってたら、 ”古賀さんですか?モル氏から話を聞いています。チケットも用意してます。”と鍵を開けて中に入れてもらえました。演奏旅行中なのに親切に手回ししていただいて、私はモル氏の人間性に再三打たれました。まだお会いするのは3回目なのに。
演奏前に邪魔したくなかったのですが、モル氏は喜んで私をゴールウェイ氏に紹介してくださいました。 私は、演奏前に人を紹介されても迷惑なのでは?と思い、挨拶だけして自分の席で小さくなってましたが、 ”アツコ、そこが君の席か?そこは良くない。フルートが見えないではないか。”とゴールウェイ氏。 言われるまで、その席からフルートが見えない事に気づきませんでした。御自分が忙しい最中に、私の席のことまで支配人に交渉してくださいました。なんて親切な方なんでしょう。 かえって本当の巨匠、大物の方がとても親切で、びっくりさせられる、という事はたびたび経験します。
”君が演奏会あと、すぐ列車に乗らなくちゃいけない、とは聞いてるから、休憩時間に自分のとこに来なさい。”とまたゴールウェイ氏が。演奏後に残れないのは私の都合なのに、貴重な休憩時間お邪魔するのも気が引けましたが、、、。
ゴールウェイ氏は私が生まれた頃にはもう有名人で活躍しておられ、私が子供の頃から全盛期でした。フルートの全盛期ってそんなに長くないのでは、、と思ってましたが、あの明るいビロードのような音は健在でした!凄く息を使ってるかのように聴こえますが、実際は力も入ってなく、ビブラートのコントロールで最小の力で最大の効果を出してるのが伺えました。”最小の力で最大の効果を”というのは、巨匠の二コレ氏にもいつも教えられていた事です。本当に良いテクニックだったら、いくつになっても大丈夫なものなんですね。 モル氏は自由にルバートするフルートを、自身の音楽的ラインを自然に保ちながら邪魔せず、でも出すところは効果的に迫力出して支えます。このコンビネーションの素晴らしさは、私は子供の時から聴いてました。音楽家同士がずっと良い関係を保つのだって、結構大変な事です。
休憩時間、モル氏が舞台にまだいらしたので”ブラボー!”と挨拶すると、”見てくれ、椅子が傾いてるんだ。背中痛くなっちゃった。僕はこれを何とかしなくちゃだから、君はジミー(ゴールウェイ氏)が待ってるからそこの部屋に行ってくれ。”
私は本来人見知りのとこもあり、いきなりゴールウェイ氏と2人になっても困ってしまったのですが、氏は私に氏のフルートも試奏させてくれ、また奏法に有意義な色んな事を話してくださいました。私のせいで、休憩で休めないではないか、、と気が気じゃなかったんですが、、。なんと、私と同じ、ナガハラ・フルートでした!
何度も”お邪魔したくないので”と去ろうとする私に、モル氏は”そんなに気を使わないでくれ。来てくれて嬉しいんだから。”と、本当に大らかな方です。結局、話してる間に休憩時間終了になってしまいました。私、集中してる自分の演奏会中にこんなに人に親切に出来ませんよ、、。人間のスケールが違うなあ、、と実感させられた昨夜でした。
お二人とも音楽世界の大スターですが、それはもちろん実力で人がかなわないものもお持ちなんですが、細かい処でも人に心から暖かい、人間の大きさもあるなあ、と昨夜は音楽にとどまらない事を学べた演奏会でした!
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