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2006/11/08(水)
34歳の死 ”恐るべき威力の王”
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モーツァルトの”レクイエム”が今週の中心練習になってる曲です。胸が痛む、どうにも切ないこの曲はモーツァルトの中では異質です。 モーツァルトはこのレクイエムを作曲中に亡くなってしまったので、まるで、自分の死の準備にレクイエム(鎮魂曲)をつくったようになってしまいました。
水道からあふれる水のように尽きない才能の持ち主のモーツァルトの曲は、すべて輝きと余裕にも満ちています。ところが、唯一余裕がない、焦燥している様子が伝わるのがこの曲です。 どうも、モーツァルトの耳にはひしひしと迫ってくる”死”の足音がこのように聞こえていたんでは、と思えます。 希望をなくしてすすり泣くような木管のつぶやきから始まり、何かが追いかけてくる様子が続きます。
曲の中でのやりとりも、まるで、頑として”死”の刻印を押す神 (モーツアルトは”恐るべき威力の王”と章名に書いています。)に向かって、 子供のように無力のモーツァルトが泣く泣く許しをこうているように聴こえます。
”死”を悟って、その死そのものを書き付けた、魂の証明がこの”レクイエム”なのでしょう。 しかも、その死を悟ったのが、突然なのでは、と思えます。
”涙の日(ラクリモーザ)”という楽章の始まりで、和声が下から頂点に達したところで、モーツァルトは息絶えました。(ラクリモーザからの続きは弟子達がモーツァルト死後に仕上げた物です) そこまで、だんだん魂が地上から離れているのでは、という感覚の音になっていきますが、救い、とか、諦め、の色は最後までないのが気になります。
一体モーツアルトはどんな死に方をしたのでしょう? ”医者のミス”とか”毒殺”とか、貧乏だったから衰弱死、とか、色々言われていますが、、、。 34歳で、まだまだこれからと言う時、本人にとっても予想外の死だったのでは?とおもわせられるのが、 この遺作”レクイエム”です。
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