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2020/11/30(月)
「自転車っていいな」(後編)
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(前回のあらすじ。危うく神戸の海にガラケーぶん投げるとこだった。)
仕方がないので、スーツ姿で颯爽とチャリを爆漕ぎ。
帰りは上り、25分、スーツが重くて暑い。 ゼェゼェ言いながらなんとか家まで辿り着く。
ゆっくりしてる場合じゃない。 でも、なんとか10時には間に合う。
講習には間に合うから、問題はない、ないはず、そうだよ重要なのは講習会に出席することなんだよ。 たとえボロボロになったしても、おれは講習会に行くぜ。みんなが待ってるんだ!
と、なんとか前向きな気持ちでアパートの階段に足をかけた、その時。
……あれ? 鍵、家の鍵無い……
ソイヤッ、ソイヤッ、ソイヤッ、ソイヤッ…!!!
…うーん、家の鍵、パーカーのポケットだな。 六甲アイランドだな。 財布、取れないな。
これは、10時無理だな。
電車乗れないし、財布家だし、家の鍵六甲アイランドだし、チャリで武庫女まで行くとか無謀だし。
今オレにできること? 自転車で六甲アイランドに25分かけて家の鍵取りに帰って、家の鍵持って自転車で家に25分かけて財布取りに帰ることだけじゃないか。
これは…さすがに荒堀に電話……は充電切れてるんだった。
充電器は、…家の中。
ベランダの窓ガラス割るか? ドアこじ開けるか? トイレの窓外すか?
いや、落ち着こう。…どうせもう詰んでるんだから。
とりあえず、もう一回六甲アイランド行くか。
仕方がないので、スーツ姿で颯爽とチャリを爆漕ぎ。
1時間前に通った道、25分、スーツが重くて暑い、涙が出そう。
ゼェゼェ言いながら、1時間前にも入った裏口からコソコソ入って、ロッカールームで一時間前に脱いだ着替えから家の鍵を取り出す。
よし、家の鍵ゲット。 …でも事態は一時間前から何も進展していない。
今…オレに…できること…? 自転車で…家に…25分かけて…財布…取りに帰ること…だけじゃないか…。
仕方がないので、スーツ姿で颯爽とチャリを爆漕ぎ。
1時間前に通った上り道、25分、スーツが重くて暑い、涙が出そう。 自分が今何をやってるのか分からなくなる。
ゼェゼェ言いながら、一時間前には開けられなかったドアを開け、当たり前のようにテーブルに鎮座してる財布を引っむ。
そこからはもうこれを読んでる皆さんのご想像通り。
半泣きで荒堀に電話をかけ、半泣きで駅まで自転車を漕ぎ、半泣きで座席に座り、半泣きで駅から歩き、半泣きで女子大生と一緒に門から入れてもらい、半泣きで迷子になり、半泣きで謝罪し、半泣きでこっそり教室にいれてもらい、半泣きで最前列に座るみんなの背中を見ながら、半泣きで講習を受けました。
そして講習会のあとにはパンケーキをヤケ食いし、まるで何事もなかったかのように幸せな気分になりましたとさ。
めでたしめでたし
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