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2010/03/04(木)
SSデートがしたい2
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「……」 「……」
沈黙がおりる六課の食堂の隅っこ。 背中には遠巻きに見つめる視線達。 前方には真剣な表情でこちらを見ているシグナムさん。 なんだかちょっと、いやかなり、居心地の悪さを感じているなのはです。
「あの……」 「……」
どうしてこういう状況なのか、説明したくても私自身どうしてなのか分からない。 なんとか状況を変えようとしても、鉄壁のオーラの前に内心右往左往している形だ。 手元のAランチ定食はとっくにお腹の中。 昼休みに入った段階では好みのメニューにうきうきしていたはずなのに、 シグナムさんに相談がある、と言われた後は黙々と二人で食事をとった。 どんな味がしたのか全く覚えていないのが残念でならない。
「えと……」 「なのは」 「は、はい!」
シグナムさんに呼ばれ反射的に姿勢を正す。 あれ、これって前にもなんかあったような……デジャブ?
「な、なんでしょうか?」 「……実はな」
ただ悲しいかな。 階級自体は私の方が上だし、分隊は違っても私は隊長……などという一般的な威厳は裸足で逃げ出してしまった。 だって、シグナムさんは大人だし、年上だし、お世話になってるし……うぅぅ。
「……」 「……シグナムさん」 「……いや、すまん、やっぱり忘れてくれ」 「はっ!?」
しかもここまで引っ張っておいて忘れてくれとか言い出すシグナムさん。 無駄のない動きで椅子から立ち上がり、シグナムさんは一刻も早くこの場から逃げ出すべく踵を返す。 私は慌ててその腕を掴んで引き止める。
「ちょ、ちょっと待ってくださいシグナムさん!?」 「くっ……離してくれなのは、やはりこれは私一人で……」 「話だけでもした方がいいですって! ちゃんと聞きますから!」
離すまいと腕に力を入れて進ませない。 本音を言えばここまで引っ張られて詳細は分からずじまい、では気になりすぎてとても眠れそうにない。 いっそ愚痴でもなんでも聞かせてもらった方が余程健康的な気さえする。 愚痴を言い続けるシグナムさんとか、それはそれで想像すると結構怖いものはあるけれど……
「一体何があったんですか?」 「う……」 「シグナムさん?」 「たいした、こと、ではないんだが……あ……」 「はい」
「あ……主はやてをデートに誘いたいと思っているのだ!!」
「あ、はやてちゃんとデート……って、え?」
何度か口ごもりつつ、最終的には叫ぶように吐き出された言葉。 ある意味シグナムさんの悩みは、実にシグナムさんらしいものだった。 ……でもシグナムさん、ここが昼休み中の食堂だってこと、忘れてません? 二度目の沈黙は食堂全体に舞い降りた。
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