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2010/01/05(火)
それも愛、これも愛?(SS・なのフェイ)前半
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左手に巻かれた時計。 春に壊れた前の時計の代わりに、なのはがプレゼントしてくれた物だ。 その時計のディスプレイに刻まれた現在時刻は、既に午後の7時。 夏ならともかく、冬を迎えたこの季節、4時を過ぎれば日が落ち始める。 5時を過ぎればもう辺りは暗くなる。 だというのに、うちの娘は…… 「なんっっっっっで、帰ってこないのかな!?」 半ば叫ぶように出た言葉と共に、吐き出した息が白く染まる。 そう、こんなに寒いというのに愛娘は一体全体、いつ帰ってくるのだろうか。 ましてや今日は大晦日。 せっかくなのはと準備をした夕飯と、その後の年越し蕎麦が待っているというのに、こんな日まで訓練を怠らない娘が誇らしいやら、寂しいやら。 身体と一緒に、心配で心も凍えてしまいそうだ。 フェイトママ泣いちゃうよっ!? 「……だから、さっき訓練が長引いて少し遅くなる、ってメールがあったじゃないフェイトちゃん」 「あったよ、あったけど……それからもう30分も経ってるんだよ、遅いと思わない!?」 「だからって、家の前でずっと立って待ってることないと思うよ」 「そう、だけど……でも、ヴィヴィオは可愛いから、どこかで悪い人に……」 「クリスもいるし、ヴィヴィオならそんなに簡単に負けないと思うけど……それに、そんな危ない人だらけじゃ困るよフェイトちゃん」 「うぅ……だって……」 「もぉ……心配してるのは分かったけど、ほどほどにね、フェイトちゃん」 「うん……」 玄関から私を見ていたなのはが見かねて、やんわりと私を押し止める。 そうじゃないと、私がいつ娘のところに飛んでいってしまうか分からないからだ。 右手にバルディッシュを握っていることもバレている。 皆に過保護と言われようと、門限は夜6時。 冬に至っては5時。 これは絶対に譲れない。 日没から二時間以上も暗くなった外をウロウロするなんて、誰かが一緒ならともかく、10歳の娘が一人だなんて冗談じゃない。 もちろん、その、玄関先で私が待ってたってヴィヴィオの帰りが早くなるわけじゃないけれど。 そんな私の心情も理解した上で、外でやきもきするのを苦笑の一つで許してくれるなのは。 しっかりと手綱を握られているようで、それが怖いようなくすぐったいような……幸せなのだから、間違ってはいないはず。
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