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2008/01/20(日)
犬に見られてる。
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気が付くと彼は、此方をじっと盗み見ているのだ。
薄曇り、行われた法事。 食事の最中に抜け出して、寺の中を歩き回っていた。 梅か何かの花は蕾を膨らませていたり、濁った水には落ち葉が揺れていたり。 風は無く、時たま真っ暗な烏がカァと鳴くぐらいの、静かな場所だった。 ボコボコに亀裂混じりのアスファルト、木の根が見えてその生命力に驚き。 だが、地元の公園にある桜の木の方が物凄い事になっていたり事を思い出したり。 葉も花も無い、空に張り巡らされた枝と小鳥だけが居座る空を見上げ。 墓の周りを、ぶらりぶらりと歩いて行く。 不意に、視線を感じ、振り返る。 其処には寺に飼われて居る犬が一匹、此方をじっと見ていた。 柴犬だと叔母は言うが、生憎詳しくない私には彼が何の種なのかわからなかった。 此処に来るのは初めてで、私と彼は初対面なのだが、自身もどうも気になってにらめっこをしたりしているのだ。 不審者と思われているのかと思うのだが、彼は吠えもしなければ威嚇らしい威嚇もしない。 ただ、じっと私を見ているだけだった。 私も、そうしていた。 最初に飽きて他を向くのは私で、彼も飽きたのか暫くしたら小屋の隅に丸まるだけになった。 写真は彼ではなく(撮ろうとする時に限って彼は撮り難い場所に立つから)、寺内にあった大きな木を。 烏の寝城の様だが、この時期の烏は大人しいので側に行ってもなんら襲われたりはしなかった。 葉の量よりも、根の太さに感嘆とした。 飛び立ちそうな身体を、地に無理矢理しがみつかせているような姿は、かの天空の城を彷彿とさせた。
落ち葉の塊が、何かの死骸に見えて。 酷く、物悲しい気持ちになった。 冷たいが穏やかな風が、何処か切なくもあった。
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