美観地区から大道絵師のメッセージです。
箱の中でいくら立派な芸術活動しょうと、学ぼうと何等、この病的社会には不毛である。
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2007年3月
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2007/03/03(土) 40年前の美観地区日記より。 六十二回
彼はある時、俺にこんな事を話していたからだ。

 一人の人間が組織に埋没する事なく、自己の実力だけで敢然と生きていけるのはニガオエの世界に住む事の一つの利点だ。
 しかし、社会に対して何の責任も持っていないと言うことは、社会から解放されるのと同時に自分からも解放されたと錯覚する。
 こいつが曲者で我々を少しずつ腐敗させていく。

見てみろ!あの上野公園の階段でやっている似顔絵描きの連中を・・・・削った鉛筆を二十数本胸に差し、安物のスケッチ・ブックをもって飛び回っておる。そしてそれがすめば酒だ。中にはマンションを買ったとか、車を買ったとか、何等、芸術活動しておらないじゃないか。

 目先の欲得に捉われて、己の時間を持とうとしない。

 今は神武景気とかバブルとか言われているが、どのような時代、どのような社会でも二種類の人間しかおらないのだ。
 それは奴隷か自由人かという事である。一日のうち三分の一以上、己の為に時を刻む瞑想的行為を持たぬと、奴隷以外何者でもない。
 ワシは彼等より一歩退いて眺める時、一種臭気さえ感じるよ。

 「あいつ等が絵描きなら、蝶もトンボも鳥のうちよ」最後に吐き捨てるようにいった言葉が俺の 頭にこびりつき、丁度鹿児島オハラ祭りの終わった後だったので彼を訪ねてみようと思った。そこで日南駅より妙にすいたバスに飛び乗ったのである。


 一時間も走ると小高い丘に農家を改造したアトリエ風の建物が見えて来た。
 バスを降り、丸太で土止めした段々を上がると、動くのか、動かないのか解からぬポンコツ車に古木が積んであり、あちこちに作りかけの椅子や机が散乱しておる。
 突然、犬の鳴き声で振り返ると見覚えのあるヒゲ面男が・・・
 「ヨウ、ガタロウ!こっちの犬がノムで、あっちの犬はネルと言って、ワシの分身じゃ・・ワハハハハハッツ」

 大笑いで出迎えてくれるのだ・・・・・・


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