美観地区から大道絵師のメッセージです。
箱の中でいくら立派な芸術活動しょうと、学ぼうと何等、この病的社会には不毛である。
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2007/03/28(水) 40年前の美観地区日記より。 八十六回
45 似顔絵の歴史10銀座・池袋

 過日、訃報が突然舞い込んで来た。栗山君が新宿・青梅街道で交通事故に遭い即死というのだ。
別に俺の場合、年も年だし、生命のギリギリの修羅場で生きている連中と付きあっているので又、一人ピエロが死におったか、と言う具合にすぐ忘れてしまうものだが、今回は一寸大げさだが21世紀をリードする旗手に死なれたかという気持ち多大であった。

何ゆえなら彼は東京芸大中退後、文化学院講師をしていたが「芸術は教えるものでもなく、教わるものでもない」と辞めっちまって、この道に入ってきたのである。
 俺も美術学校九年行き、教えて貰ったのはセックスだけだったから、その気持ち良く解かり銀座、新宿、上野公園、あげくは全国の祭りで一緒に似顔絵を描き破廉恥、痴愚、朦朧、卑猥等の生を踊り続けた仲であったからである。

 勿論こんな馬鹿げた事ばかりしていた訳ではない。彼は常にラジカルで例えば奇抜なブリキ彫刻で知られる前衛芸術家・秋山佑徳太子等と友達であり、その彼は若い頃、二宮金次郎の格好で街頭に立ったり、グリコのランニングシャツ姿で広場を駆けてみたり、突飛なハブニング活動で勇名を馳せ、70年代には政治のポップアート化目指して都知事選に山高帽で立候補するのだ。
その時の選挙ポスターを手掛けたのがこの栗山で、そのポスターは実に驚くなかれアンディ・ウオーホル張りだった訳だが、彼は別に単にウォホールのディタレントではなく、ウォーホルに会いにアメリカへ行って、その体験談を本に纏めているのである。

また彼は[ポートレイト]と言う異色人物ばかり集めたニガオエ集を出版したり、「聖教新聞」には時の有名人の似顔絵とコラムを連載していた。と同時に「肉体と概念の冒険」の名のもとに日本はもとより世界を波状移動し、彼のハガキと写真で世界のストリート・アーチストを知るようになるのである。また昨今は彼の仲間と共に「東京零産倶楽部」を発足させ、それは季刊誌であったがネオ・タダ的新聞で、前衛芸術家や異色芸術家に送り続けるのである。

 それは作品や作家いう安穏とした連中への挑戦であり、体制べったりの芸術という終焉に立ちあっているのだいう紀州犬の遠吼えであったかもしれない。しかし俺にすればその終焉の向こうに、まだ明確に名付けられない作品や作家に代わる何かが現れてくる待望の矢先だったからだ。

 ところで栗山を似顔絵の世界に紹介したのは、銀座での先達・宇佐美と国さんであった。宇佐美は非常に誇りを持っていて、池田万寿夫を追うぱらったのも彼であり、手塚治虫を「人間を写実的に描けなければ似顔絵は駄目だし、絵物話の作家にはなれない」と又、追ぱらってしまうのである。

 その国さんはラムネの底のようなメガネをかけたオカマみたいな男だったが、児童雑誌に表紙画を描いていたせいか、絵には一言居士で、やはり手塚を相手にしないのである。しかし、人間何が幸いするか解ったものではなく、手塚は東京を諦め帰阪、「新宝島」と云うストリー漫画を自費出版・・・・
それが隠れたベストスラーとなるのである。後年、宇佐美や国さんは「俺は手塚の先輩だ!」という様な世迷う事を吹帳する始末になると情けなくなる。

 ところでこの銀座には栃木・益子出の小林氏。福岡・旅館の息子の斉藤。広島・呉の金融業の畝氏等が居たと思う。とくにこの中で小林と宇佐美・栗山の確執は有名で、宇佐美とは今戦争末期、海軍の少年特別攻撃隊の一員だったというが小林曰く「奴のは出鱈目だ。何故なら所属部隊名と部隊番号でさえ言えないのから・・・・」と云った言葉が宇佐美の耳に入ったからである。栗山とは映画女優・内藤洋子の妹・やす子「歌手」の取り合いが端を発しているらしい。
 女は女に、男は男に競争心があると知っていたが、乞食エカキの競争心に妙に感動したことを覚えている。

 その点、釣りと酒を愛した武さん(大阪)や信ちゃん(長崎)は素直なものだった。二人ともニガオエ以外作品らしい作品は何も残さず、怨念も残さず、酒で幽冥境に遊び逝ってしまっうのだから・・・。
 自称・慶応ボーイと言っていた安部氏も、この倉敷出の竹槍氏も生死不明で、結局、最後まで頑張っていた栗山も消滅し、銀座から大道似顔絵師は壊滅したのである。


イラストは岡本太郎氏個展にて・・・


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