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2007/10/06(土)
倉敷にがおえエレジー 題59回
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それは今から十二・三年前、蝉が俺のタンカにおとらず威勢よく鳴いていた暑い日の事である。ご婦人六人、お子さん十数人を描かせ、気前よくお金を払う御仁がおり、始めはは町内会の会長、あるいは中小企業の社長。イヤ、濃い眉毛に筋肉質の引き締まった身体よりヤーさん関係ではと疑心暗鬼していると、何と全てが自分の家族だ、とおっしゃるのだから驚いた眼が点になーる。 その点でよくよく御仁を観察して見ると、彼は一夫多妻のチェンマイ族か、ソロモン王、はたまたある動物のハーレムを想起するのだ。
「千夜一夜物語」によるとバクダッドの宮廷には十二のハーレムがあり、そこに三百六十人の側室が住んで、王は一夜づつ回ったらしい。 それに較べれば雲泥の差かも知れないが、この御仁も一週間のうち六夜を回るわけで体力的、経済的にも大変だろうと察するのだ。 まして彼は皇帝でも王様でもなく、いっかいの土建業者であって、いわんや日本では刑法で重婚罪に問われるはずである。 その点、御仁は本妻を配偶者にし、ほかの五人は同居人の形をとって、子供だけは高瀬姓の私生児として認知していると言う。 つまり雑居家族の形態を取っておられるのだ。
氏はおっしゃるのだ。 「一夫多妻生活の秘訣は世間体など気にせず、博愛主義を貫き、そして当番の女には物心両面、勿論セックスも大いに満足さしてやる事だそうである。 それには常に健康に留意し、朝はアロエジュース、昼はレア・ステーキを何枚も喰い、なんとっても快眠八時間厳守とか・・・・それで ゆうべ三つして 今朝また二つ 合わせて五つ 紙は無くなる 眼はかすむ シノノメノ ストライキ
・・・という具合にウンと突き出すサービス精神が必要らしい。涙ぐましい努力じゃないか。 ただし、女が高瀬流のタブーを侵した場合、全体責任を取らせるというのだから、男女同権など叫んでいる女代議士に聞かせたい話であり、春秋の説法でいけば、彼女らこそ女の味方と称して実は女の敵ではないのか。 何故ならば所詮、女は献身的、盲目的、没我こそ女の持つ徳であり、その点を高瀬氏は良く知悉し、具現されているのには、ただただ、俺の息子もこうべを下げるのみである。
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