美観地区から大道絵師のメッセージです。
箱の中でいくら立派な芸術活動しょうと、学ぼうと何等、この病的社会には不毛である。
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2007年1月
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2007/01/07(日) 40年前の美観地区日記より。 十一回
明るい朗らかな青空だ。
 祭りは赤穂義士を偲んで、四十七士の行列が大石神社から駅前を廻り、花岳寺まで行進するのだがそれを見ようと沿道に多くの人々が溢れかえっておる。それ以上、お祭りムードを盛り上げているが言わずと知れた露店の数々だ。赤、青,黄、色とりどりのテントの中ではお好み焼き、カルメ焼き、焼きソバ等など何処か昔懐かしい匂いが立ち込めておる。大人の顔は童心に返ったごとく生き生き輝き、況や子供の眼は次なる獲物を求めて、のし歩くケモノのようでもある。ここには絶えず追いまくられ、せせこましい生き方を強制された現代人が忘れ去ろうとするモノ、すっかり失ったモノ。あえて言えば変態的飽食文化が奪いさろうとするモノがある。つまり大人も子供も管理社会の時間割りから抜け出し、誰憚ることなく「懐かしき無礼講」の中にとっぷり浸かる事ができるのだ。ある露店商が言う「俺達は夢をを売っているのだ。懐かしさと郷愁の匂いを売っているのだ」と。たしかにここではワルプルギスの夜が一杯あって、道化の猿が跳びはねまわっている。
 山田洋次監督描く「男はつらいよ」の渥美清演じる寅さんなら「ケッコー毛だらけ猫灰だらけ、お尻の廻りはクソだらけってぬぇ。おばさん・・・まかった数字はこれだけ、一声千両といいたいね。オイ、ダメか?八百・・・六百、よし・・・浅野内匠頭じゃないが腹切ったつもりで五百両だ。持っていけっ、泥棒!」とこう言うだろう。彼もまた各地でお祭り「タカマチ」や縁日で、このような口上で品物を売る事を商いとするテキヤである。これは的屋とも書き「うまく当たれば儲かる者」といった意味にも通じる商売で、その元締めの親分と子分は「神農道」をうたい、「何々一家」といった名をなのる。つまりヤクザの世界にも通じるような一面も持っているのは確かなようだ。無論、人の良い金魚すくいの叔父さんや、甘栗屋の叔母さん等もいるが、テキヤはヤクザ、ヤクザは反社会的暴力集団。ふつう社会市民がイメージするテキヤの最大公約数はこんな図式ではないか。
俺だって例外ではない。とくにチャクトウと言って場所を貰いに行く時が一番緊張する。受付場所ではパンチパーマの男達が入り混じりテントの中は空気が極めて薄く、俺達はそれだけで酸欠状態の金魚になつた。そして一列のウンコになってただ「似顔絵描きですが・・・よろしくお願いします」と頭を下げるしかないのだ。ここには烈しい掟がある。だが寅さん映画で見る限り「テキヤ」の世界、渡世の義理というものは何時でもいとも簡単に寅の都合のよいように、その世界に入ったり出たりしてしまうのである。所詮、寅の香具師はドラマトウルギーの上に成立しており、自然リアリズム論で検討するほど馬鹿げた事はない。「映画はひたすらそれを見る人の幸せを願って作らねばならない」「人を楽しませるのが芸術」だと柳田国男の言葉を座右の銘にしている氏のことだから、一笑に附されてしまうであろう。故に寅が義理「建前」と人情「本音」を御都合主義において、取っ換え、引っ換えしても誰も怒らない。反対に「しょうがねぇなぁ、寅さんは!」と自分の中にある寅さんを許容し、カタルシスの作用でシンドさを解消しつつ、映画館の暗闇で思わず涙ぐむのである。ここに二十数年近くも汎国民的な映画となりえた秘密が隠されているのだと思う。しかし、しかし、この映画は後何年続くのだろう。例えば四十年代の神であった「網走番外地」の高倉健が年を感じさせたとき、シリーズの命は終わったように、寅さん演じる渥美清も老いぼれ、足腰萎え異郷でと・・・想像するだけでそこには笑いがない。そこには憐れみがあるだけだ。ひるがえって俺も祭りから祭りの生活を続けて十数年、もうソロソロ有封にはいってもいい時分だろう・・・・


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