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2007/01/28(日)
40年前の美観地区日記より。 三十二回
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J 国際ヒッピー倉敷支部、アーチ君
「サーサ、イラサイ、イケノコイ!」 ヤン君が倉敷川を背に俺の描いた絵を売り始めた。オランダは運河の町ゆえか、まさに水を得たコイのようでこれ又、俺が教えてやった売り言葉を叫んでおる。 ちなみに白鳥は一声に全生涯を賭けると言う。ヤンの声もすべて絵を売るため全生涯を賭けているように見える。明るい乞食が貰いの多いのは世界共通だ。瞬時に黒山で、なかには飲みかけのコーヒを持って駆け出してきた観光客も混じっておる。 俺も負けじと「ニガオエは爆発だ!」と叫んでいると、大黒さんのような袋を担いだ青年が近づき立ち止まった。
腰まで伸びた髪、首から垂らした鈴、しかし、どこか眼が寂しげなところは、もし彼に思想があるならば、それが世間に認められていない寂しさだ。第一にその鼻下のヒゲ極めて光沢がない。これはその人物に一分一厘の活気のない証拠であろう。そしてそのヒゲが柳のごとく両端はるかに顎の方に垂下しているのは恐らく向上という事を忘却した精神の象徴だ。 あえて言えば亡国のヒゲだ。
するとそのヒゲが・・・
「ヒッピーの新宿タローさんでは?」と来たもんだ。
たしかに俺は新宿風月堂、国分寺・ほら貝 、京都・ほんやら洞、宮崎・ヤドカニ等ヒッピーの出入りするところは繁雑に立ち寄った・・・・
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