美観地区から大道絵師のメッセージです。
箱の中でいくら立派な芸術活動しょうと、学ぼうと何等、この病的社会には不毛である。
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2007/01/26(金) 40年前の美観地区日記より。 三十回
 深夜の宇高フェリーより、早朝の53号線をペンキを塗りたくったボロ車は走る。ピンク・フロイトをガンガン鳴らし、ウイスキーのラッパ飲みだから白バイの先導付きだ。
 ヤン君の恐れるのは出入国管理官であり、警官はそれほど恐れない。彼にすれば日本語を覚えない方が警官やテキヤに接するとき、便利である事を知悉しているのだ・・・・

 ところが俺の隠居所に入るなり「生きている!」と叫んだのには驚いた。あとで知ったことだが彼は全て「生きている」「死んでいる」この二つで用を済ますのだが、キャンバスと本ばかりの汚い部屋がどうして「生きている」のかと思っていると淑恵通詞がこう言うのである。
 オランダには「水道は水を悪くする、車は道を、女は男を悪くする」という格言があって、ここにはそのどれもが無いから「生きている」のだと。変な褒め方もあるもんだ、と思った。

 「日本は実に無駄なく全てが効率的に機能している国だと感心させられる。けれど何かそこにいて幸福になれない。日本全体が一つに閉ざされた密室で、そこには不思議と人間の生きている匂いが希薄である。まるで巨大な実験所に入れられたようで、ついに外の空気か吸いたくなる。それが東南アジア等に行くとホッとするのだが、この部屋にはそれが感じられる」と又、いうのだ。

 なかなかオランダ人だけあって社交辞令の行き届いた男ではないか。
 そこで画家・ゲインズボロの絵が「生きている」との指摘ゆえ、その絵を二十枚ほど模写してやり、テキヤの親分・藤岡氏「俳優・琢也氏の弟」から貰っていた神農祭り帳もやると、絵を大量に印刷し、全国の祭りで売り捌くのである。最盛期にはオランダより四・五名も呼び、捌かせ非常によく売れたものである。

 現在、ニュヨークでポルノ墨絵作家として活躍している赤陣平・カッペイなどは「ピカソよりトラは大量に絵を売った!」と感嘆詞を奮発する勢いだったのである。

 さて淑恵ちゃんの話だが彼女は鹿児島・天文館通りの花屋の娘であったが英語を学ぶため東京へ。
 詳程は省くが南方特有のモンゴル型ではなく、白肌で瓜ざね顔の大陸ツングース系のの器量良しだ。彼女自身の述懐も先祖は薩摩焼で有名な沈寿官氏と同じく、秀吉の渡韓作戦時代に連れてこられたらしい。
 ただ世は美人を捨ておかないものである。何の機か失念したが銀座の高級クラブ「葡萄園」のママの眼にとまり、そこで働いていると常連の作家・井上靖氏に可愛がられるのだ。氏は美人よりも彼女の天衣無倣、性格を愛していたと思う。

 そこである日、銀座を歩いていると路上にチョークで絵を描き投げ銭を貰っている外人がおる。それがヤンだった理由だが開口一番「日本人は熱したフライパンの上でアヒルが踊り狂っているように見える。オランダでは労働は罰として、その人に与えられるものだが、日本人全体、何か罰を受けているのか」であった・・・・・・
 


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