|
2006/08/23(水)
大阪市立美術研究所・雑感 72
|
|
|
美術研究所の本体、大阪美術館館長を紹介したい。 上野直昭 うえの なおてる 美学・美術史学者。兵庫県生。東大卒。ヨーロッパに留学後、再び渡欧してベルリン大学で日本美術を講義する一方、ひろく東洋美術に理解を深める。学習院・京城帝大教授をへて大阪市立美術館長。戦後、日本学士院会員。東京芸大学長・東京国立博物館長。昭和48年(1973)歿、91才。 さすが館長ともなればすごい経歴だ。その上、世界美術辞典,全巻を監修しておられるが、本書では収録項目を書道、工芸を含めた建築・庭園・彫刻・絵画等の各分野まで広め、総数130名の専門家が項目ごとに解説しておられるのには驚嘆する。ところが卒業生の祝辞は実にやさしいので、また驚いたね・・・
おめでとう。とても嬉しく思います。 今日は諸君らのために何をしたらいいのか悩みました。晴れの門出には何かが必要であると思いました。そして、今書いたこの文字は「愛」という字です。ただ、一カ所、書き足りないところがあるので、祝辞の最後に書きます。 この「愛」という文字は、人と人が背中を向けた間に「心」という文字が書いてあります。古代中国の青銅器に彫られていた文字です。 お互いに励ましあい、研鑽しあい、そして、今日の日に、互いのことを思いながら慈しみの心を持ち、お互いが心を背にしながらお互いのことを考え離れていく。相手に心を残しながら慈しむ。それが本来の「愛」です。 そして、時代を経て現在の私どもがよく使う「愛」、この意味を含ませていければよいのだと思います。古代の文字が、まさしく今日のような旅立ちの言葉と一致しています。 2年、4年、6年、8年、9年、何年か前に諸君らは、この学舎で学ぶことになりました。辛い思いもあったでしょう。なかなか作品がまとまらない、思いを込めてもそれが表現できない、大きな山がいっぱいあったと思います。しかし、今、諸君らは大きな山を登りきりました。やり終えました。素晴らしいことだと思います。その感動を、そのときめきを、今すごく感じます。こんな素晴らしいことはないと思います。 一つ提案させてください。「誰が好き?」って聞かれたら、「自分です。」と答えて下さい。自分を好きになることによって、好きな自分が素晴らしい作品を作り、そして、現在の自分がいるようになります。 自分を褒めてあげて下さい。だからこそ、他人を好きになることができるのです。そして自分を大事にしてください。比べるものは他の者ではなく、自分です。一昨日の自分、昨日の自分、今日の自分、そして、未来にその自分を託してもらえたらと思います。 「国家の品格」という本を読み、私はとても嬉しかったことを覚えてます。まさしく、東京芸術大学の品格を、音楽学部・美術学部の品格を、そして、諸君ら卒業生の品格を、今日感じます。これから社会へ出て、荒野に旅立つわけですが、どうか品格を忘れずに日々の演奏活動、制作活動に励んでもらいたいと思います。 諸君らは今とてもいい目をしています。諸君ら全員の輝いた目を見たい。そんな気持ちです。 今後、周りからちやほやされることがあると思いますが、感謝の気持ちを忘れないでください。特に今日は大勢の保護者の方々がこられていると聞いています。第6ホールでは立ち見になっているということを聞きました。 ご両親は、褒めてやってください。諸君らは、諸君らを選び、育て、生かした先生方に感謝してください。そして、裏方として支えてくれる事務職員の方々にも感謝を忘れないようにしてください。 どうぞ、勇気を持って荒野に旅立ってください。 愛の字の最後の一本をこれから書きます
|
|
|
|