美観地区から大道絵師のメッセージです。
箱の中でいくら立派な芸術活動しょうと、学ぼうと何等、この病的社会には不毛である。
ホームページ最新月全表示|携帯へURLを送る(i-modevodafoneEZweb

2006年7月
前の月 次の月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
最新の絵日記ダイジェスト
2010/05/12 大阪で昆布屋
2010/04/15 000000000
2010/03/08 次回は油絵を・・・・・
2010/03/04 浅田真央ちゃん
2010/03/02 遅くな諒としてください

直接移動: 20105 4 3 2 1 月  200912 11 8 1 月  200810 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200712 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200612 11 10 9 8 7 6 5 4 3 月 

2006/07/07(金) 大阪市立美術研究所・雑感 39
高野卯港氏の作品を見て、なぜか芥川龍之介の「ヒョットコ」を想いだした。太鼓もちが常にヒョットコの面を被って、変な踊りで客を常に笑わすのだが、或るとき、この太鼓もちが脳溢血で倒れ死ぬ。ところがその面を取って素顔の顔を見ると、この世ではこれ以上に苦痛に満ちた顔はないという顔をしていたと言う作品である。
 高野氏は常に苦渋に満ちた素顔で作品を描いておられるようだ。故に作品は全て進行形のままで、完結を見出せないで苦しんで描きっているゆえ、その作品を見る者の感動を呼ぶのであろう。作品は全て、そこはかとなく漂う哀愁が感じられ、大都会の中にそこだけが忘れられた一画のようでもある。しかしそこには貧しくともまだ人間のぬくもりが感じられる甘い郷愁が描こうとしているようだ。それは木村荘八の挿絵や、斎藤眞一の吉原やゴゼの世界にも通じる人間の哀愁であり、愛の沈思であり、滅びゆくものへの限りないいたわりと郷愁のレクイエム(鎮魂歌)なのだろうか。そこには言葉にならない言葉が完結せず物語られているようでもある。彼自身、一歳の時に父親を亡くし、母と変転に満ちた若き日々を送った記憶の中で自己発見の旅を続ける。作家とは不思議なもので、どう脱出を試みても、作品、風貌、言動すべてが原点に集約されてくる。存在そのものが作品化されてくると言ってもいい。それは時に残酷ですらある。どうあがいても彼の仮面は素通しで、その生い立ちから脱出できないところ、それは考えようによっては彼自身の得難い身上ではなかろうか。そこに目をつけたのが東京銀座の、稀代の目利きと言われた美術評論家の故・洲之内徹氏であったことは何の不自然もない。
 映画「泥の河」の世界を深く愛するという今後の彼の成果に期待したい。

《高野卯港経歴》
鹿児島県に生れまもなく神戸に移住。工場街の煙突の、煙突、進駐軍のジープ、闇市を見て育つ。
小学校5年で大阪に移り、大阪府立旭高校で、当時教員だった画家和気史郎さん(故人)に絵のてほどきを受け、画家を志す。
大阪市立美術研究所で油絵を本格的に学ぶ。1996年、東京銀座の、稀代の目利きと言われた美術評論家の故・洲之内徹氏に認められて「現代画廊」で個展を開催、一躍注目を浴びる。
「現代画廊」での2回目の個展の直前に洲之内氏が急逝、山本芳樹氏の紹介で海文堂ギャラリーでの個展が実現。
以後、毎年の開催となる。

また氏は文筆も優れておられ、一文載せておく。

今年は春がいつになく遠かった。それだけに草花を美しく思う。
3月上旬、ホームで一週おいて轢死2件。
人工島から帰宅途中のサラリーマン。同じくカバンを抱いて、東への特急の頭にーーー。
同じ位置からだ。肉片、靴等、駅員ビニールに。
三月中旬
わが屋根裏のアトリエに小鳥が戻った。
東の曇りガラスに羽影がパタパタ、ソフトな春の風。庇の白壁が崩れ、覗いた木枠の間に入り、コトコトと音。雀、大きいのは鵯だ。場所の奪いあいで舞ったり戻ったりーーー。
三月下旬 イラク戦争
鳥たちは生存のため、実や虫を食べる。
ギリギリの戦い。自ら太るためではない。
四月上旬 
コウモリ氏 絵の視察にアトリエに。第2ラウンドへーーーーー。
四月下旬。
雨あがり。小銭を持ってスーパーへ。疲れて川添いのベンチに。ふと右向こうを見る。橋の上部が光った雲に浮かんでいる。何だ??近づく……。川が光っている…刃先の形で。どっちが本物か。
その下も川なのだ……??西陽はその下流。上の幻川の波紋は簾のようにキラキラ。黒く動いているのはボラか。橋桁のコンクリートスクリーン。どこの川がやって来たのか?
春先蜃気楼――――。自然の不思議が貴い。しかし、幻になってはいけないのは……この世だ。


 Copyright ©2003 FC2 Inc. All Rights Reserved.