美観地区から大道絵師のメッセージです。
箱の中でいくら立派な芸術活動しょうと、学ぼうと何等、この病的社会には不毛である。
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2006/07/22(土) 大阪市立美術研究所・雑感 50

それからは美術研究所を素通りして、伶人町にあった夕陽が丘図書館通いが始まった。ここは早く行かないとすぐ満員になるので開館を石段の座って待っている始末である。
しかし、そこにはホッブスの「市民哲学要綱」 アダム・スミスの「国富論」 ルソーの「人間不平等起源論」カントの「永久平和論」 ヒューゴー・グロティウスの「戦争と平和の法」等等垂涎の出るような本が65万冊以上揃っていたのだ。今は全て忘れたが、変にトルストイの「こう物質文明が精神を圧倒すると、隣同士、親子、親戚などで「お前が俺を殺すか、俺がお前を殺すか」という時代になるであろう、という言葉だけ脳髄に染み渡っている。
 その図書館でよく見かけたのが支路遺耕治と志摩 欣哉氏であった。ここは志摩 欣哉の文を無断でお借りすること諒としてください。
 支路遺耕治(本名・川井清澄)と初めて出会ったのは、天王寺にある大阪市立美術館の地下に在った美術研究所の廊下に置かれていた長椅子だった。当時彼は十七才で私が十九才だった。俯き加減の暗い表情で知人と喋っていた。その知人が誰だったか思い出せないのだが、私とも顔見知りで彼から支路遺を紹介された。「東京に行ってたんやけど、金のうなってしもうてな、どこにも行かれへんでホテルに籠ったきりで、しょうがないから、帰ってきてしもうたとこや…」、と俯いてボソボソと喋った。だが奇妙に威圧感のある喋りかただった。「絵描いとんのか?」と私が聞くと、「ああ…。自分は?」
 と顔を上げて聞き返した。「うん、俺も絵描いとるし、詩も書いとる」と答えると、「詩書いてんのか!俺も詩もっと書きたいんや」と急に表情が輝いた。このとき私は十代の後半に書いた詩を纏めて、薄っぺらな個人誌『迷える羊』を、十代の終わりの記念として出していた。たぶん、この私の個人誌がきっかけで、研究所の仲間たちで同人誌『じゃがいも』が発足する頃にあたっていた。この同人誌は、ながれひろしが中心になって六号ぐらいまで出たと思う。残念なことに、私の個人誌も『じゃがいも』も紛失してしまって手元に無いが、同人に支路遺も入っていたし、今井祝雄らがいた。今井は現
 在のアートシーンでも活躍している作家だが、当時からフォンタナの影響を受けた作品を作っていた、もっとも先鋭的な存在だった。後に支路遺耕治を支路遺耕治たらしめる詩集『疾走の終り』及び『増補・疾走の終り』の表紙デザインを手がけるのが、この今井祝雄だった。またながれひろしは、具体グループの村上三郎氏を師と仰いでその影響下にあったし、私はアメリカ・ポップアートとシュールレアリズムのはざまで揺れ動いていた。やはり後に私は彼の詩集『巨影なる断章』の表紙デザインを担当している。友は最後まで表現することに拘りながら肺癌で逝ってしまったが、彼と出会った当時、私は肺結核に犯されて自宅療養しながら研究所に通っていた時期だった。丁度、六十年安保から七十年安保へと時代が捩れていくときであ
った。「詩を書きたい!」と言った彼としばらく話を続けていたが、突然、彼は「いまから、展覧会見に行けへんか!」と私を誘った。「誰の展覧会や」「村上日出夫や!」と言った。この画家は当時ゴッホの再来と言われていた。美術雑誌などで紹介されていたので私もよく知っていた。貧しくて浮浪者の
 ような生活していた村上は、乏しい金銭をはたいて絵の具を買い、それに泥を混ぜて絵を描きつづけていた。その作品を銀座通りにならべて売っていたところを、兜屋画廊のオーナーに認められて一躍時代の寵児になった男だった。言ってみればシンデレラ・ボーイである。さっそく彼と二人で、まだ日本橋二丁目にあった松坂屋にでかけたのだった。この日から私と彼の交友が始まった。


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