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2006/06/27(火)
大阪市立美術研究所・雑感 31
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人体部のピカピカの一年生である。美しい女体像をかけると思って胸ワクワクさせていると、何とモデルさんは四十代のでっぷり太ったあまり綺麗でない人でガッカリした。しかし、石膏より生きた人間の方が四十であろうが、五十であろうが描く対象が血の通っているほうがいいもので、それから、毎日、真面目に研究所に通ったよ。人体の中には小林、長瀬、藤田などという人物とすぐ仲良くなり、青臭い芸術論を口角泡飛ばして語り合ったのも懐かしい思い出だ。長瀬が青白い顔に垂れ下がった髪を掻き分けながら言う。「ちもと、デッサンは大阪と東京と違うんやで、大阪のはマッスを重視して、バックまで黒く塗るやろ。東京のはムービマンと言って、腺の流れを重視するんや」そういう彼のデッサンは小磯良平を想起する華麗な流れの腺を創出していく。手はピアノでも弾かせたらいい音色を出すだろうと異様に長い指を見ていた。彼は夜間の阿倍野区役所近くにある工芸学校にも通っているらしい。この工芸学校は六年制でやはり変わった人物を輩出している。漫画家の淀川三歩、或る虫象。イラストレーターの白津美千代、鯛焼きソングの足の出た鯛のデザインで一億円近くを手にする田嶋司などだ。勿論その頃の彼等彼女らには金がなく、俺の似顔絵の手伝いをして貰っていた。研究所の費用は月八百円だったが、それでも払えぬ奴がいて、滞納しても研究所側もとやかくいわなかった、と記憶する。 現代はどうなっているのか、今通っている知り合いに聞いてみると以下のようであるらしい。
1 石膏素描(前期) 石膏頭身像を中心に研究を重ね、基礎的なデッサン力を身につけます。 2 石膏素描(後期) 石膏半身像を中心により確かな素描をめざします。 3 人体素描 石膏(前期・後期)で研究した内容をふまえて、人体(裸婦)をモデルに人体のバランス、骨格など把握します。 デッサンの総合的な力を養い、自己の作品とのかかわりを深めていきます。 人体素描を進級したら、絵画科か彫塑部を選択できます。 4 絵画科 素描研究で習得したデッサン力をもとに、完成度の高い表現、それを支える描写、技法を研究します。 人体のマッス(量、かたまり)と色彩を通して培ったデッサン力を独自性のある個性豊かな絵画世界へと展開していきます。 5 彫塑部 塑像制作を中心に人体(裸婦)を研究し、立体への再構築を試みます。立体の基礎知識から形成(石膏取り)まで、様々な探求を続け自覚的な制作を展開していきます。 《 講 師 》 中井 英夫・辻 司・久保 晃・松本 秋美・祢宜 吉子 山田 正二・定森 満・大坂 一成
《 研究時間 》 1 月曜日から土曜日の午前9時30分から午後4時まで、各自随意とする。 2 日曜・祝日及び年末年始は休日
《 入所手続き 》 1 入所検定 4月・10月の年2回 2 所定の「入所検定申込書」に検定料3,600円を添えて検定当日に提出。 《 入所料・研究料 》 1 入所料 5,400円 2 研究料(月額) 石膏 前期・後期 4,800円 人体、絵画、彫塑 7,200円 《 その他 》 美術館において、年1回自由課題作品の研究所展を開催します。 研究生対象の特典として、美術館主催の無料観覧や各種美術団体の特別割引料金での観覧等があります。
それにしても安い、ご希望の方は入所をお勧めしますよ。ただし、ここは押し付けしないので己の心がけ次第です。
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