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2007/01/19(金)
手紙
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★★★★4/5 監督:生野慈朗 出演:山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵
東野圭吾氏の同名小説の映画化作品。 私は東野作品はけっこうツボで、ドラマなんか好きだと感じたのは大体、東野作品だったりするのだ。 でも、小説は未見で、今回は初めて映画見る前に読んでみた。
ストーリーは、両親を早くに亡くし、弟と二人暮らしの兄は、まだ高校生の弟を引っ越し仕事などで養っていたが、過労がたたり、腰を悪くしてしまう。働くのも苦労し、弟の大学入学資金もあてのない事から、ある一人暮らしの老女の済む資産家宅に進入し、盗みに失敗し、老女を殺してしまう。 兄は刑務所に入り、弟は受刑者の兄を持つ運命に。 加害者の家族という差別が終始つきまとう日々で夢、恋愛までも閉ざされ、いつしか現実逃避の道を選ぶ自分が。 兄からの手紙はそんな日々に並行し、毎月送られてきていたが、やがて、すべての差別の発端を作った兄を怨み、憎しむ弟へ。
ストーリー終盤では兄の手紙の答え、そして弟の最終的に選んだ兄への、自分への答えが明かされていくのだが、加害者と残された家族の社会的立場や個人的な立場という重いテーマを描いた作品だけに、単純に罪を背負う加害者をめぐる家族愛、兄弟愛などとは、くくれない。 被害者視点の映画は数多くあるが、この作品のようなテーマは意外にも少ない。洋画でも『デッドマンウォーキング』など有名だが、それ以降、自分の中では、単館作品などのぞけば、あまりない。
なかなか考えさせられますから、製作側も難しいんだと思う。 罪を犯したものへ、同情を求めるようなものではいけないし、罪は罪と正確に伝えなければ、お涙頂戴で終わるし。
その点は、この作品は、多少、オーバーなドラマ仕立てな感もあるが、それくらい罪の重さは家族にも関わることの演出効果は出ている。 また、重いテーマの中に、弟がお笑いスターを夢見たり、恋をしたりという、生きていく中の光りの挿入もバランスが良かった。 但し、この光りが重いテーマの中の光りだけに、悲壮感も表裏一体であるのがまた、観ているものに印象を残している。 そして、テーマである『加害者と家族』というキーワードは、最後まで大切にし、前述したお涙頂戴な軽いノリのラストには繋げなかったことは最もこの作品の素晴らしいところ。 たしかにラストでの兄との再会は、色々な流れの中での感動の再会ともとれるが、正確なテーマの伝達により、加害者と家族の本当のあり方の真意が胸に迫ってくる。
小説先行で観たので、比べれば、少しソフトでダイジェスト的な部分も見え隠れしますが、それは2時間というボリュームの中での製作なのでご愛嬌といいたいが、描いて欲しかった点も多いので、満点には届かない。映画しかしらなかったら、満点の感想だったが。
触れにくいテーマ故に、製作数は少ないが、逆に、知らないから、知りたい部分でもある。 こういったところも、映画には伝えていく義務があると思えた 犯罪を犯罪と思えないような輩も多い時代、罪を償うことの意味を知ることは大切なことじゃないだろうか。
公式サイト⇒http://www.tegami-movie.jp/
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