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2010/05/26(水)
スパゲッティ・ブルース
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今日は月2回の保健所デイケアの日。
昼休憩ん時に必ず行く喫茶店があってね。
前任者のH師長に教えてもらった、初老で粋なママさんが一人で切り盛りしてる喫茶店。
3年間ほぼ欠かさず通った。
俺が頼むのはスパゲッティ・ミートソース。
味は「ザ・喫茶店」の味。
それ最高。
んで食べ終わった後はスポーツ新聞読みながらうたた寝。
BGMはママさんのカラオケ練習(鼻唄)。
帰り際にテーブルの灰皿やコップをカウンターに持っていったついでにテーブルを拭く俺にママさんが言う「いつもありがとね!」って言葉が午後の仕事に向かうスイッチを押す。
ママさんは俺の名前を知らない。
知らないってか聞かない。
特別話した思い出もない。
だけどママさんは月2回水曜の昼にミートソースを食べに来る俺のことは覚えている。
今日も昼休憩時に当然の様に足を運んだ。
明かりがついているが、少々慌ただしい。
ドアに「5月25日をもちまして閉店致しました」の文字。
しばらく立ち尽くす。
中にいたママさんが俺に気付いて、わざわざ外に来て「ごめんねぇ。昨日で終わっちゃったのよ」と話し掛ける。
気の利いた言葉が上手く出てこない俺にママが言った。
「でも…ミートソースくらいは出来るから食べてって!」
もうね、粋すぎるだろママさんよ。
涙をこらえて食べたスパゲッティ・ミートソース。
いつもと違うのはタバスコがないことくらい。
旨かったっすママさん。
帰り際、ママさんに聞かれて初めて「自分が月2回保健センターに勤めに来ている」ことを明かす。
それでもママさんは必要以上深くは聞かない。
その距離感と粋さに感銘を受けたまま店を出る。
保健センター前に来て「あら!俺、金払ってない!」と気付きダッシュで喫茶店に戻り謝罪。
「あら、はじめからサービスしようと思ってたからいいのよ!」と笑顔のママさん。
だから粋すぎるだろママさんよ!
お言葉に甘えて平謝りしてんだか感謝してるんだかよくわからん言葉を残し退散。
夕刻、仕事が終わった俺は花屋を探した。
ママさんに花を贈るって決めてたから。
赤い薔薇。
3年の感謝と開店から30年お疲れ様でしたの気持ちを込めた。
店の前に着くと、いつものカウンターの中にママさん。
ドアを開け、赤い薔薇で彩られたブーケを渡す。
ママさん、めっちゃ喜んでた。
ママさんも笑顔。
俺も笑顔。
「ママさん、お元気で!」
という言葉を残し店を出る。
多分、もうママさんに会うことはない。
ママさんは最後まで俺の名前を聞かなかった。
俺もママさんの名前は知らないまま。
だけど、その距離感が何よりも優しくて心地良かった。
ママさん、ありがとね。
てか月2回だけど昼飯ん時苦労するぞコノヤロー!
てのは半分冗談で…
俺のこと忘れないでね。
そんな一日でした。
スパゲッティ・ブルース。
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